産後クライシス
真也が生まれて、もう9カ月、毎日元気な泣き声が響き渡り我が家は一ぺんに家庭の色が濃くなった。食事の時間は梨央と俺が横並びで、その横とも前ともいえない中途半端な位置に真也のベビーラックがある。
梨央は真也をあやしたり俺に話しかけたりしながら食事をする。いいママだった。梨央が俺に手をかけられないときには、一人で食べるがほったらかしの感じはない。梨央が食事をしている間は俺が真也をあやしていることもある。
俺はべたべたしたもの、湿ったものが嫌いだ。食事中も脂っこいものを食べたときにはよく口を拭く。ところが真也がよだれまみれの手で、俺の頬をぺちっとやっても気にならない、その手で鼻や顎をぐにゅっとつかまれても気にならない。子供ってそんなものだった。特に不満はないし家庭は安らぎの場所だった。
たった一つ気になるのが夜のことだった。梨央の妊娠が分かってからは慎んでいた。それでも、夜眠れないときには梨央が気を利かせてくれることもあった。そういうときの梨央は優しくて、それなりに十分満足していた。しかも最後には必ず、あなたとってもハンサムだったわ。あの時に私の名前を呼んでくれるのよ。知ってる?あの声を聴くとホントに幸せな気分になるの。」などと持ち上げてくれる。夫として妻に尽くされている喜びがあった。
それでも、産後間もない妻だ。しょっちゅう、「大丈夫かか?ありがとう。」と礼を言ったり謝ったりしていた。しかし、もう産後9カ月だ。もういい加減再開してもいいんじゃないかといらだっていた。
梨央は外出の時には必ず手をつなぐか腕を組むかした。出産前の梨央は俺が腰に手を回すとしなだれかかってきた。出先でも二人きりになると、べったりと甘えかかってきた。ところが出産後は、腕は組むが腰は触らせない。腰に手をまわしかけるとそれとなく荷物を持ちなおしたりして体を離してしまう。これが巷でいう産後クライシスというものかと悩んだ。
梨央はいつだって優しいし嫌われている気はしない。嫌いな男にあんなことできないだろうと思うけれど、誘いをかけるとそれとなく逃げられてしまう。そしていつもの通り、尽くす妻に徹するのだ。俺はいつも礼をいう。いい加減に嫌気がさしてきた。俺はただ尽くされていれば満足という性格ではなかった。梨央の喜ぶ顔を見て喜ぶ声を聞きたかった。
続く
【POLA】インナーリフティア コラーゲン&プラセンタ
【POLA】女性に嬉しい美容成分がこれ1つで。インナーリフティア コラーゲン&プラセンタ
コラーゲン、植物プラセンタ、鉄、ヒアルロン酸、エラスチンを同時配合した美容サプリメント。
広告
posted by fanblog
2019年09月21日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/9219478
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック