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2019年07月09日

家族の木 THE THIRD STORY 純一と絵梨 <4 襲撃>

襲撃

rose-1503881_1280[1].jpg

ある日僕は駅で当時付き合っていた女の車を待っていた。雨だから迎えに来てくれるという話だった。ところが待ち合わせ場所に来たのは男3人だった。男たちに路地に追いこまれて殴られた。一人が羽交い絞めにして二人で殴ったりけったりした。待ち合わせをしていた女の男友達だった。

殴られている最中に、女の悲鳴が聞こえた「きゃー、おまわりさん。おまわりさ〜ん。」と何度も何度も大声で叫んでいた。姉の声だった。人が集まってきて男たちは雲の子を散らすように逃げて行った。警官が来て僕を助け起こしてくれた。ふと見ると姉が路地の入口で顔をひきつらせたまま固まっていた。

「姉ちゃん、逃げなきゃだめじゃないか。なんかあったらどうすんだよ!」僕は助けてもらったのを棚に上げて姉に怒っていた。警官につれられて交番へ着いて、やっと姉は落ち着いたようだった。警官から被害届を出すように言われたが出さなかった。そのことで両親からやいのやいのといわれるのがうっとおしかった。

家には、こっそり帰った。姉の部屋で顔を拭いて傷の手当てをしてもらった。着替えてからこっそり風呂に入った。その時の姉のハンカチを捨てられなかった。

「純、純、姉ちゃんは純が大切なの。純が誰よりも大切なんだよ。だから純、将来に傷をつけるようなことをしちゃいけない。わかるよね。姉ちゃんの言うことわかるよね。純、わかるよね。」と姉が何度も念を押すので、僕はとりあえずうなずいていた。

でも本当は分からなかった。何をわかれというんだろうか?「何もわかってないのは、あんたなんだよ。」と心の中でうめいた。

「純、留学しなさい。しばらく日本を離れなさい。純が留学している間に姉ちゃん結婚するよ。どっか遠くへお嫁に行っちゃうよ。わかるよね。」といわれた。何か、ひっかかる話だったが僕は納得した。襲われた恐怖感と姉の熱っぽい雰囲気の両方で思考力が飛んでいた。

留学は妙案だと思った。環境を変えれば他に好きな女ができるかもしれない。そしたら、もっと楽になるかもしれないと思った。


続く



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