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2019年08月14日
家族の木 THE THIRD STORY 純一と絵梨 <40 不吉な決心>
不吉な決心
浜野真と梨央の見合いは両方の両親と本人の6人で行われた。場所は都内の有名な料亭だ。どうも先方の母親は形式を重んじるタイプのようだった。あまり堅苦しいようなら断るつもりをしていた。
しかし、会ってみると意外にざっくばらんな家族だった。父親は無口だが優しそうな男だったし、母親は座持ちが良くて面白い人だった。梨央も好感を持ったようだ。浜野真本人は、余り口数は多くないが如才ない態度で年齢よりも大人びて見えた。
写真で見るよりも祖父に似ていた。僕と絵梨はその男に惹かれた。見合いの前に例の事件のことを先方に報告していた。
本人は今神戸に赴任中だが、結婚をするなら早い時期に東京へ戻すという話だった。神戸が遠すぎるなら東京の家で同居してはどうかという話だ。すでに、二世帯住宅になっていているので気を使う心配もない。
浜野真本人ができるだけ毎週帰るし実家との行き来を頻繁にされてはどうかと言ってくれた。梨央が都内で暮らせるというのは親にとってもうれしい話だ。
本人からそういう話が出るということは気に入ってくれたということだ。梨央は緊張してあまり話さなかった。しかし、実家と頻繁に行き来できるという条件には魅力を感じたようだ。僕も最初の半年程度は、そんな暮らしの方が梨央のためになるような気がした。
とにかく先方の母親が気に入ってくれた。絵梨はかつて不幸な結婚をした。その時姑に冷たい扱いを受けたようだ。ところが浜野の母親は梨央ちゃん、梨央ちゃんと梨央に気を使ってくれる。これには母親として相当魅力を感じたようだ。浜野真の上の妹が梨央と同い年で友達感覚なのも魅力的だった。
夜一人で過ごすのが苦手な梨央にとっては同居家族がいるのはむしろ大きな魅力だったようだ。梨央の縁談は意外に早く進んだ。今思えば、これが運命というものなのだろうと納得した。
梨央の結婚式は都内の有名ホテルで行われた。盛大な式で同業者も多く出席した。僕たちはプライベートなセレモニーに同業者を呼ぶ習慣がなかったが、浜野の家ではそれが普通のようだった。浜野にとっても我が家にとっても大きな宣伝になった。出席した同業者はいずれ業務上の結びつきができるだろうと憶測したようだ。
浜野真は若いのにこういう場面でも物おじせず如才なかった。しかし、なんとなくこの如才なさが気になった。この男は外面がいいんじゃないか?家の中で気難しい男でなければいいがと不安になった。
我が家は女系家族で男は一様に優しい。梨央は気難しい男には慣れていなかった。最悪は帰って来ればいいさ。時々様子を見て梨央が辛そうにしたら離婚は覚悟した方がよさそうだ。
僕は結婚式の最中に「梨央が辛いなら即離婚」という不吉な決心をしていた。絵梨は常に離婚の覚悟は決めていた。梨央には辛い思いをさせないというのが僕たち夫婦の共通の認識だった。
続く
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しかし、会ってみると意外にざっくばらんな家族だった。父親は無口だが優しそうな男だったし、母親は座持ちが良くて面白い人だった。梨央も好感を持ったようだ。浜野真本人は、余り口数は多くないが如才ない態度で年齢よりも大人びて見えた。
写真で見るよりも祖父に似ていた。僕と絵梨はその男に惹かれた。見合いの前に例の事件のことを先方に報告していた。
本人は今神戸に赴任中だが、結婚をするなら早い時期に東京へ戻すという話だった。神戸が遠すぎるなら東京の家で同居してはどうかという話だ。すでに、二世帯住宅になっていているので気を使う心配もない。
浜野真本人ができるだけ毎週帰るし実家との行き来を頻繁にされてはどうかと言ってくれた。梨央が都内で暮らせるというのは親にとってもうれしい話だ。
本人からそういう話が出るということは気に入ってくれたということだ。梨央は緊張してあまり話さなかった。しかし、実家と頻繁に行き来できるという条件には魅力を感じたようだ。僕も最初の半年程度は、そんな暮らしの方が梨央のためになるような気がした。
とにかく先方の母親が気に入ってくれた。絵梨はかつて不幸な結婚をした。その時姑に冷たい扱いを受けたようだ。ところが浜野の母親は梨央ちゃん、梨央ちゃんと梨央に気を使ってくれる。これには母親として相当魅力を感じたようだ。浜野真の上の妹が梨央と同い年で友達感覚なのも魅力的だった。
夜一人で過ごすのが苦手な梨央にとっては同居家族がいるのはむしろ大きな魅力だったようだ。梨央の縁談は意外に早く進んだ。今思えば、これが運命というものなのだろうと納得した。
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浜野真は若いのにこういう場面でも物おじせず如才なかった。しかし、なんとなくこの如才なさが気になった。この男は外面がいいんじゃないか?家の中で気難しい男でなければいいがと不安になった。
我が家は女系家族で男は一様に優しい。梨央は気難しい男には慣れていなかった。最悪は帰って来ればいいさ。時々様子を見て梨央が辛そうにしたら離婚は覚悟した方がよさそうだ。
僕は結婚式の最中に「梨央が辛いなら即離婚」という不吉な決心をしていた。絵梨は常に離婚の覚悟は決めていた。梨央には辛い思いをさせないというのが僕たち夫婦の共通の認識だった。
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