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2019年09月09日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <19 脅迫>
脅迫
俺は義姉の梨沙ちゃんが気になっていた。梨央が地味な顔立ちなのに比べたら、梨沙ちゃんは花が咲いたような華やかな美人だった。俺よりも二つ下だが、しっかりしていてサバサバした感じの男前だった。もし、職場にこんな女がいたら惚れるだろうなと思った。気になるのは時々寂しそうな顔をすることだった。
夜、梨央と二人きりになった時に梨央から梨沙ちゃんの話をしだした。「梨沙ちゃん寂しそうでしょ?」「梨沙ちゃんね、私のことがあってから、自分のことがお留守になっちゃったの。自分の恋人の友達が犯人だったから、凄く責任感じちゃったの。ママが私にかかりきりだったから、家のことも全部自分が引き受けちゃったの。パパの会社のサポートもしたのよ。梨沙ちゃん学校の先生になりたかったの。でも、私のことがあって全部諦めちゃったの。彼氏ともお別れしちゃったの。何もかも諦めちゃって。私ね、いつまでも梨沙ちゃんの重荷になってちゃいけないと思って結婚したのよ。」
「え、俺に惚れてくれたんじゃなかったのか!」
「だから、なんだかひいお爺ちゃんにそっくりな人がいたから、この人とだったらうまく行けるんじゃないかって。そしたらホントにハワイの最初の夜にあなたに恋をしたの。あなたは私を抱きしめて魔法の言葉を言ったのよ。そしたら、いっぺんに恋をしてしまったわ。」といいながらふふふと思い出し笑いをした。
「魔法のことばって、俺何言ったの?」「教えてあげない。」
「梨沙ちゃん、好きな人がいるんじゃないかと思うのよ。どんな縁談にも耳を貸さないの。写真も見ないの。私ね、心当たりがあるの。」
「なんだ、それをパパやママに言えばいいじゃないか。」
「梨沙ちゃん隠すのよ。知らんぷりするの。」
「誰だ、それ」
「新田詩音ていう画家の人」「そんな画家知らないな。」「えっ、けっこう有名よ。ほら、ちょっと淡い色合いで優しい絵を描く人よ。公的な施設でも時々見るじゃない。」「知らない。」「名前も聞いたことない?」「ない。」
サッパリかみ合わなかったが、その画家がカフェを経営していて梨沙ちゃんはそのカフェの常連だったそうだ。その男が義父に「少しかまってやらないとかわいそうだ。」と説教をしたという。それはずいぶん不思議な話だと思った。
俺なら女に惚れたら女の父親は避ける。父親が一番の難敵じゃないか。
「その人パパと話してからすぐに海外へ行ったみたいなの。梨沙ちゃんもそのカフェにいかなくなったの。なんか変だと思わない?」
「たしかに変だね。そいつおかしな奴なんじゃないの?相手にしないほうがいいぜ。」といったが梨央は、「梨沙ちゃん、あの人が好きなんじゃないかと思うのよ。ねえ、あなた、そのカフェに様子を見に行ってくれない?」
「えっ、なんで俺が行くの?梨央が行けばいいじゃないか。」
「なんで意地悪なのよ。じゃあ、もうしない。一生しない。」
「何言ってるんだ。なんでそういう話になるんだ?」
意味不明の脅迫を受けて訳が分からないまま、とにかくカフェに行ってみた。そう、こんな場面でいつも感じる。俺はこの女にいいように使われている。それなのに、その仕事が自分の仕事のように感じてしまう。
カフェがあるビルはえり兆ビルという名前だった。一階のカフェには上品な老婦人と、いかついオッサンがいた。なるほど画家が経営するカフェらしく、結構大きなギャラリースペースがあった。
続く
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俺は義姉の梨沙ちゃんが気になっていた。梨央が地味な顔立ちなのに比べたら、梨沙ちゃんは花が咲いたような華やかな美人だった。俺よりも二つ下だが、しっかりしていてサバサバした感じの男前だった。もし、職場にこんな女がいたら惚れるだろうなと思った。気になるのは時々寂しそうな顔をすることだった。
夜、梨央と二人きりになった時に梨央から梨沙ちゃんの話をしだした。「梨沙ちゃん寂しそうでしょ?」「梨沙ちゃんね、私のことがあってから、自分のことがお留守になっちゃったの。自分の恋人の友達が犯人だったから、凄く責任感じちゃったの。ママが私にかかりきりだったから、家のことも全部自分が引き受けちゃったの。パパの会社のサポートもしたのよ。梨沙ちゃん学校の先生になりたかったの。でも、私のことがあって全部諦めちゃったの。彼氏ともお別れしちゃったの。何もかも諦めちゃって。私ね、いつまでも梨沙ちゃんの重荷になってちゃいけないと思って結婚したのよ。」
「え、俺に惚れてくれたんじゃなかったのか!」
「だから、なんだかひいお爺ちゃんにそっくりな人がいたから、この人とだったらうまく行けるんじゃないかって。そしたらホントにハワイの最初の夜にあなたに恋をしたの。あなたは私を抱きしめて魔法の言葉を言ったのよ。そしたら、いっぺんに恋をしてしまったわ。」といいながらふふふと思い出し笑いをした。
「魔法のことばって、俺何言ったの?」「教えてあげない。」
「梨沙ちゃん、好きな人がいるんじゃないかと思うのよ。どんな縁談にも耳を貸さないの。写真も見ないの。私ね、心当たりがあるの。」
「なんだ、それをパパやママに言えばいいじゃないか。」
「梨沙ちゃん隠すのよ。知らんぷりするの。」
「誰だ、それ」
「新田詩音ていう画家の人」「そんな画家知らないな。」「えっ、けっこう有名よ。ほら、ちょっと淡い色合いで優しい絵を描く人よ。公的な施設でも時々見るじゃない。」「知らない。」「名前も聞いたことない?」「ない。」
サッパリかみ合わなかったが、その画家がカフェを経営していて梨沙ちゃんはそのカフェの常連だったそうだ。その男が義父に「少しかまってやらないとかわいそうだ。」と説教をしたという。それはずいぶん不思議な話だと思った。
俺なら女に惚れたら女の父親は避ける。父親が一番の難敵じゃないか。
「その人パパと話してからすぐに海外へ行ったみたいなの。梨沙ちゃんもそのカフェにいかなくなったの。なんか変だと思わない?」
「たしかに変だね。そいつおかしな奴なんじゃないの?相手にしないほうがいいぜ。」といったが梨央は、「梨沙ちゃん、あの人が好きなんじゃないかと思うのよ。ねえ、あなた、そのカフェに様子を見に行ってくれない?」
「えっ、なんで俺が行くの?梨央が行けばいいじゃないか。」
「なんで意地悪なのよ。じゃあ、もうしない。一生しない。」
「何言ってるんだ。なんでそういう話になるんだ?」
意味不明の脅迫を受けて訳が分からないまま、とにかくカフェに行ってみた。そう、こんな場面でいつも感じる。俺はこの女にいいように使われている。それなのに、その仕事が自分の仕事のように感じてしまう。
カフェがあるビルはえり兆ビルという名前だった。一階のカフェには上品な老婦人と、いかついオッサンがいた。なるほど画家が経営するカフェらしく、結構大きなギャラリースペースがあった。
続く
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