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2019年10月24日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <64 体調不良>
体調不良
家に帰って梨央に事情を説明すると表情がパッと明るくなった。夕食はごちそうだった。梨央は次の金曜日は朝から体調不良になると予言した。
貴方は仕事だし、ママはパパの世話で忙しいし誰か来てくれなきゃ無理なのよ。あなた、郁美さんに連絡してくれる?お母様は外した方がいいと思うの。きっと、こちらへ来ることには反対よ。自分の嘘がばれたら困るじゃない?」といった。
やっと浜野家の常識が分かってきたかと思った。それにしても父の存在感の薄いことを実感した。木曜の夜には梨央が翌朝起きにくいような、とても疲れることをした。普段よりももっと疲れるようにした。案の定、金曜の朝、梨央はとてもけだるそうだった。もちろん俺の方はもっとけだるかった。いつの間にか42になっていた。
朝、郁美に電話をして、恵美にこちらへ来てくれるように頼んだ。郁美はOLとして働いていたので平日は基本的には来られなかった。郁美は「お姉ちゃん、行くかなあ。このごろ、何をするのもめんどくさそうなの。」「でも現実に困ってるんだよ。何とか頼んでみてくれないかなあ。俺もできるだけ早く帰るようにするから。」と言って強引に頼み込んだ。
11時ごろに梨央から、恵美が来てくれたので今はゆっくりしていると連絡が入った。恵美は、元気にふるまってはいるが少しやせていたということだった。午後5時ごろには俺も家に帰った。風羽田が来た様子はなかった。
恵美に礼を言って、できることなら泊って行ってほしいといった。恵美は泊まっていくといってくれた。「ここのお手伝いさんになろうかな。」といった。「真ちゃんや由梨ちゃんがいると心が癒される。」ともいった。梨央が「恵美さんがいいなら来てほしい」といった。
俺は返事をしなかった。妹が毎日家に居ちゃ気まずいだろ、夫婦げんかしたときどうするんだ?いやいや、もっと妹に見せられない場面はいっぱいあるだろうと焦った。
そんな話をしているとインターフォンが鳴った。俺は心底ドキッとした。宅急便だった。そのころから俺も梨央も落ち着きを無くした。恵美が夕食の買い物に出ようか?と誘ってきたが断った。今日は出前でいいだろうと寿司を注文した。30分ぐらいしてインターフォンが鳴ったので俺が出た。皆寿司が届いたと思った。
玄関には風羽田がうつむき加減で立っていた。俺につれられて入ってきた風羽田を見て梨央は満面の笑顔だった。恵美がキッチンから、「お兄ちゃんビール?」と声をかけてきた。「おお、コップは4つだ」と返事をすると「オッケー、え、何で?」といいながらダイニングに入ってきた。
そして風羽田を見たとたんに、持っているものをすべて落として逃げようとした。俺が恵美を捕まえている間に梨央と風羽田が床を拭いた。恵美を無理やり席に着かせた。「風羽田君も座って。寿司多目に注文してよかった。」「ホント、いい夕食になりそうだわ。」と梨央も笑った。
「お姉さん、だましたの?」「ええ、私元気なの。」と梨央はけろっと答えた。「恵美、元気そうだね。」と風羽田が言うと「あんな電話もらって元気なわけないじゃない!」と泣き出してしまった。「ほんとよ、恵美さん今日騙してきてもらったの。私が調子悪くて、どうしても来てくれなきゃ困るってお願いしたのよ。恵美さん普段は寝たり起きたりの状態だったの。苦しくて。」と梨央が言った。
「嘘だ。」と風羽田が言った。「とにかく飯にしよう。風羽田君、ちょっとは飲めるんだろ?」とビールをついだ。梨央は飲まなかった。子供の世話が忙しかった。なにしろ、恵美が突然、ぼんやりして役に立たなくなったからだ。
風羽田は酒は弱いようだ。目のふちが赤くなって少し饒舌になった。「この前勤続3年の祝い金貰いました。来年度から係長に昇進します。だから社員寮出なくちゃならないんです。今ペアブロッサムの近所で賃貸物件を探しているところです。」と俺に向かって言った。
「結婚とか考えるんですけど共働きしか無理なんです。」とまた俺に向かって言った。「じゃあ、一緒に働いてくれる嫁さん探さなきゃならんなあ。」と俺が答えた。「今日は両方とも泊まってくれ。恵美、悪いがこの部屋だ。」と言ってリビングの横の納戸を示した。簡易ベッドを用意した。
夜、俺たち夫婦は寝室で耳を澄ましていた。夜2時を過ぎたころ、客間からリビングへ降りていく足音が聞こえた。俺が「簡易ベッドじゃ不安定だろう。」というと、「あなたホントにやらしいわねえ。」と言って笑った。梨央だって同じことを想像してるんじゃないか、足音が客間に戻ってくる前に俺たちは寝てしまった。
俺が安心したのは、忍んでいったのが風羽田だったことだ。おとなしい風羽田が自分から行ったことが嬉しかった。俺がはじめて田原の家に泊まった時客間に寝かされた。梨央が夜中にこっそり部屋に来た。「大丈夫?何か必要なものない?}と聞きに来てくれた。
おとなしい梨央が部屋に忍んできたとき俺は完全に舞い上がってしまった。女も同じだろうと思った。おとなしい風羽田に忍んでこられて恵美はきっと幸せをかみしめているだろう。
恵美と風羽田の結婚には母は大反対をした。恵美は母が嘘をついてまで二人の仲を壊そうとしたことを恨んでいた。恵美は今度こそ本当に駆け落ちをした。
続く
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家に帰って梨央に事情を説明すると表情がパッと明るくなった。夕食はごちそうだった。梨央は次の金曜日は朝から体調不良になると予言した。
貴方は仕事だし、ママはパパの世話で忙しいし誰か来てくれなきゃ無理なのよ。あなた、郁美さんに連絡してくれる?お母様は外した方がいいと思うの。きっと、こちらへ来ることには反対よ。自分の嘘がばれたら困るじゃない?」といった。
やっと浜野家の常識が分かってきたかと思った。それにしても父の存在感の薄いことを実感した。木曜の夜には梨央が翌朝起きにくいような、とても疲れることをした。普段よりももっと疲れるようにした。案の定、金曜の朝、梨央はとてもけだるそうだった。もちろん俺の方はもっとけだるかった。いつの間にか42になっていた。
朝、郁美に電話をして、恵美にこちらへ来てくれるように頼んだ。郁美はOLとして働いていたので平日は基本的には来られなかった。郁美は「お姉ちゃん、行くかなあ。このごろ、何をするのもめんどくさそうなの。」「でも現実に困ってるんだよ。何とか頼んでみてくれないかなあ。俺もできるだけ早く帰るようにするから。」と言って強引に頼み込んだ。
11時ごろに梨央から、恵美が来てくれたので今はゆっくりしていると連絡が入った。恵美は、元気にふるまってはいるが少しやせていたということだった。午後5時ごろには俺も家に帰った。風羽田が来た様子はなかった。
恵美に礼を言って、できることなら泊って行ってほしいといった。恵美は泊まっていくといってくれた。「ここのお手伝いさんになろうかな。」といった。「真ちゃんや由梨ちゃんがいると心が癒される。」ともいった。梨央が「恵美さんがいいなら来てほしい」といった。
俺は返事をしなかった。妹が毎日家に居ちゃ気まずいだろ、夫婦げんかしたときどうするんだ?いやいや、もっと妹に見せられない場面はいっぱいあるだろうと焦った。
そんな話をしているとインターフォンが鳴った。俺は心底ドキッとした。宅急便だった。そのころから俺も梨央も落ち着きを無くした。恵美が夕食の買い物に出ようか?と誘ってきたが断った。今日は出前でいいだろうと寿司を注文した。30分ぐらいしてインターフォンが鳴ったので俺が出た。皆寿司が届いたと思った。
玄関には風羽田がうつむき加減で立っていた。俺につれられて入ってきた風羽田を見て梨央は満面の笑顔だった。恵美がキッチンから、「お兄ちゃんビール?」と声をかけてきた。「おお、コップは4つだ」と返事をすると「オッケー、え、何で?」といいながらダイニングに入ってきた。
そして風羽田を見たとたんに、持っているものをすべて落として逃げようとした。俺が恵美を捕まえている間に梨央と風羽田が床を拭いた。恵美を無理やり席に着かせた。「風羽田君も座って。寿司多目に注文してよかった。」「ホント、いい夕食になりそうだわ。」と梨央も笑った。
「お姉さん、だましたの?」「ええ、私元気なの。」と梨央はけろっと答えた。「恵美、元気そうだね。」と風羽田が言うと「あんな電話もらって元気なわけないじゃない!」と泣き出してしまった。「ほんとよ、恵美さん今日騙してきてもらったの。私が調子悪くて、どうしても来てくれなきゃ困るってお願いしたのよ。恵美さん普段は寝たり起きたりの状態だったの。苦しくて。」と梨央が言った。
「嘘だ。」と風羽田が言った。「とにかく飯にしよう。風羽田君、ちょっとは飲めるんだろ?」とビールをついだ。梨央は飲まなかった。子供の世話が忙しかった。なにしろ、恵美が突然、ぼんやりして役に立たなくなったからだ。
風羽田は酒は弱いようだ。目のふちが赤くなって少し饒舌になった。「この前勤続3年の祝い金貰いました。来年度から係長に昇進します。だから社員寮出なくちゃならないんです。今ペアブロッサムの近所で賃貸物件を探しているところです。」と俺に向かって言った。
「結婚とか考えるんですけど共働きしか無理なんです。」とまた俺に向かって言った。「じゃあ、一緒に働いてくれる嫁さん探さなきゃならんなあ。」と俺が答えた。「今日は両方とも泊まってくれ。恵美、悪いがこの部屋だ。」と言ってリビングの横の納戸を示した。簡易ベッドを用意した。
夜、俺たち夫婦は寝室で耳を澄ましていた。夜2時を過ぎたころ、客間からリビングへ降りていく足音が聞こえた。俺が「簡易ベッドじゃ不安定だろう。」というと、「あなたホントにやらしいわねえ。」と言って笑った。梨央だって同じことを想像してるんじゃないか、足音が客間に戻ってくる前に俺たちは寝てしまった。
俺が安心したのは、忍んでいったのが風羽田だったことだ。おとなしい風羽田が自分から行ったことが嬉しかった。俺がはじめて田原の家に泊まった時客間に寝かされた。梨央が夜中にこっそり部屋に来た。「大丈夫?何か必要なものない?}と聞きに来てくれた。
おとなしい梨央が部屋に忍んできたとき俺は完全に舞い上がってしまった。女も同じだろうと思った。おとなしい風羽田に忍んでこられて恵美はきっと幸せをかみしめているだろう。
恵美と風羽田の結婚には母は大反対をした。恵美は母が嘘をついてまで二人の仲を壊そうとしたことを恨んでいた。恵美は今度こそ本当に駆け落ちをした。
続く
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