ヒトの脳は「脂質+糖質」を好むようにできている
「現代人が食べるほとんどの食品は脂質と糖質の両方を多く含んでいるが、
こうした食品は母乳を除けば自然界には存在しない」
提供元:HealthDay News 公開日:2018/07/10
ヒトの脳は、本能的に脂質と糖質の組み合わせを好むようにできている可能性のあることが、米イェール大学精神科のDana Small氏らによる研究で示唆された。
この研究では、脂質と糖質のいずれかを多く含む食品よりも、ファストフードや加工食品などの両方を含んだ食品の方が、脳内の報酬系のシグナル伝達を増強することが明らかになったという。
詳細は「Cell Metabolism」6月14日オンライン版に掲載された。
これまでの研究で、食欲を司る脳領域に空腹感や満腹感を伝えるシグナルは、主に腸管から伝達されることが分かっていた。
一方、最近の研究では、脂質を摂取したときと糖質を摂取したときでは、異なるシグナル伝達経路が使われることも示されている。
こうした結果を踏まえ、Small氏らは、脂質と糖質の両方を含む食品を摂取すると、
カロリーは同じだが一方だけを含む食品を摂取するよりも、
相乗作用によってシグナル伝達系への影響が強まる可能性があると考え、今回の研究を実施した。
研究では、健康なボランティアを対象に
(1)キャンディーなどの糖質を多く含む食品、
(2)ミートボールやチーズなどの脂質を多く含む食品、
(3)クッキーやケーキなどの糖質と脂質の両方を多く含む食品のいずれかの写真を見てもらい、
MRIによる脳画像検査を実施した。
なお、対象者には、オークションで競り落とせば自分が好きなものを食べることができると説明した。
その結果、脂質+糖質を多く含む食品に対して最も高額な値が付けられた。
また、脳画像検査の結果、脂質+糖質を多く含む食品の写真を見せられた際に、
自分の好きな食べ物や、
より甘い食品やより高カロリーな食品、
量が多い食品の写真を見せられたときよりも、
報酬系を司る脳領域の神経回路が活性化していた。
この結果について、Small氏は「脳内の報酬系は単純にカロリー量の増加に応じて活性化するわけではないことが分かり、驚いた」と話す。
また、今回の研究では、脂質が多い食品のカロリーを推測できる人は多いが、
糖質が多い食品のカロリーを推測できる人は少ないことも明らかになった。
このことから、同氏は「多くの人は、脂質と糖質の両方を含む食品から正確にカロリーを推測することは難しいと思われる」と述べている。
Small氏は、脂質と糖質を多く含む食品は、ヒトの食欲を司るシグナルを“ハイジャックする”と表現する。
「現代人が食べるほとんどの食品は脂質と糖質の両方を多く含んでいるが、
こうした食品は母乳を除けば自然界には存在しない」と説明し、
「現代的なこれらの食品が脳内の報酬系のシグナル伝達をより増強するのであれば、肥満や糖尿病が蔓延していることの説明がつく可能性がある」との見方を示している。
専門家の一人で米レノックス・ヒル病院肥満外科部長のMitchell Roslin氏は、この研究結果について「食べ過ぎに気づかずに、スナック菓子を一袋食べてしまう理由となるものだ」とした上で、
「消費者には、自分の空腹感や満腹感に従うのではなく、適切な食品を選ぶように啓発する必要がある」と話している。
米ロサンゼルスの管理栄養士であるMascha Davis氏は、ドライフルーツやナッツなどを含む健康に良いおやつを常備しておけば、脂質と糖質を同時に摂取でき、満腹感も得られるとアドバイスしている。
[2018年6月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights reserved.
原著論文はこちら
DiFeliceantonio AG, et al. Cell Metab. 2018 Jun 6. [Epub ahead of print]
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2018年08月18日
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