記念写真
ブランド越後守さんの画像
ブランド越後守
<< 2019年10月 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
人気ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

2016年06月07日

571話 仕事頑張るね

龍太郎を見送った龍之介は、一旦自宅に帰るや否や、嫁ちゃんと共に

自宅を出て帰路に立った。


「嫁ちゃん、あまり無理すんなよ。」


そんな言葉など、風の音に消されてしまう。


なんとも、遠距離恋愛をしているかのような、寂しさがこみ上げる。



「いいんですよ〜いいんですよ 好きになってもいい〜んですよ


龍之介は抑えきれない寂しい気持ちを、歌にしてごまかした。



「今日の夜から、また新しい仕事を覚えないといけないけど、

龍太郎のためにくじけるわけにはいかない。おれ、頑張るよ。」



などと、独り言を言いつつ、高速で愛車ロメヲを走らせた




ところが・・・



道のりの半ばから、最終地点まで、なんと、なんと、


なんと


事故のため通行止め



「うっうそだろ




単身赴任ということで、遠距離恋愛のようなセンチメンタルな、

寂しいけど、なんとも心地よく切ない思いも、この理不尽な

高速道路の不運を一身に背負ったかのような龍之介は

一言発せずにはいられなかった。




なんだかなぁ〜







2016年06月06日

570話 やっぱり大好き龍太郎

「迎え来れる?」


龍太郎の短いメールが龍之介の携帯に入電された。


野球部の仲間の家で二日間合宿してきた龍太郎が、恐らく

母親に依頼したら、断られ、仕方なく、父親にメールすることに

なったのだろう。

よりによって、母親は季節外れの風邪をひいて、仕事直後に

フトンをかぶって寝ているらしい。


「迎え行けるから、大丈夫だよ。」


龍之介はむしろ迎えを頼まれたことを喜んだ。


しかし、夕飯時、食事の準備ができていないことまで

想像してはいなかった。



「どうしよう



何とも気まずい二人だが、龍太郎は自分の部屋へ上がった。



今日は、大きな骨付きチキンをクリスマスのように照り焼きに

してもらうはずだった。材料はあるが、そんなもの龍之介が

造れるはずもなく。



「塩コショウで焼くしかないか



やがて、龍太郎も降りてきて、牛肉を焼く。



「ねえ。肉しかないの?肉だけじゃきついんだけど?」



などと言われても、この家は龍之介にはもはや アウェイ



「ご飯もないし、野菜無理やし・・・

 あっそうそう豆腐ならあるよ



龍太郎は素直に豆腐を食べ始めた。


「意外とお腹いっぱいになるね。苦しい、もういらん。



そんな龍太郎とも、これ以上二人きりは気まずい龍之介。

ここはテレビ頼みだ。


志村けんのバカ殿さま


「ハハハハハハハッ

笑うのはむしろ龍之介のみ。

笑わない龍太郎はそれでもそばにいてくれる。

     >流石、志村けん


「龍太郎、ジャース買ってっ来てるぞ。飲まないか?」



「俺、炭酸止めてるんだ。」


野球部での約束事を守っている龍太郎。



「進学のことで悩んでないか?悩んでたら相談しなよ。」



「うん、大丈夫。」



「K高なら大丈夫だと思うけど、S高やSM高なんかも考えても

 いいと思うよ。」


地元に近い公立高校のK高。龍之介の単身赴任場所に近い私立の

S高やSM高。


「今は、T高やN高もいいらしいよ。」


龍太郎から良質な野球部のある高校の名前が出た。

まだ、野球やるきはあるんだ。良かったと龍之介は思った。


「そうだね。T高も通学できるね。だけどN高は通学は無理かな。」



志村けんのバカ殿さまも終わり、龍太郎は静かに自分の部屋へと

戻った。


翌朝・・・



「あ〜だいぶよくなったぁ〜

嫁ちゃんは一晩で体調を取り戻した。



「すごい免疫力だね。よかった、よかった



「龍太郎ね、いつもならすぐに捨てるようなものなのに、

 これ大切に持ってるんだけど・・・」



それは、名門S高校の学校見学のパンフレット。



龍太郎は心の片隅に、密かに野球を続ける闘志が

眠っているに違いない。



そんな龍太郎を自転車を置いている学校付近の友達の家まで、

すすんで車に乗り、送ってやった。


そして、今までの不仲の時のように、返事もされない悲しい気持ちを

表すかのように龍之介は小さな声で


「いってらっしゃい。」


と見送った。


龍太郎は車からおり、荷物を取り出すと目を合わさないまま

行ってしまう仕草に見えたが・・・



「行ってきます。」



その声は、非常に力強く、大きく、ハッキリと龍之介の耳に

飛び込んできた。














2016年06月05日

569話 少年自然の家

それほど遠くない場所にその施設はあるのだが、

あずきにとっては初めていく、知らない場所。


少年自然の家では、町の3つの小学校が合同で集団生活を

行い交流を深める。その3つの小学生のほとんどは近い将来

1つの中学校へと進学する。友達を増やす絶好のチャンスでも

あるのだ。


出発の準備を進めるあずきは、少々緊張した面持ちで、念入りに

忘れ物がないかチェックをしている。


「あ〜なんかドキドキしてきた

楽しみと不安が混じり合ったなんともいえないその緊張感。


少年自然の家では、ウォーク・ラリー(昔でいうオリエンテーリング)、

カヌー、ロッククライミング、キャンプファイヤー、出し物大会、

バイキング形式の食事など、それはそれは楽しそうなことがいっぱいある

反面、まだ見知らぬ人との交流や親から離れ生活することなどの不安が

交差するのであろう。


「あずき、お腹痛くなってきた




いよいよ出発の時間となり

「お母さん、お仕事で見送りできないから、

友達のお母さんが迎えに来てくれるの。

もうすぐ、来るからそろそろ行くね。

じゃぁ、お父さんも仕事頑張ってね。


それでもやはり女の子。

鏡を何度も見返し、身なりをチェックしている。


「よし!じゃぁ、いってきま〜す



折角自宅に帰った龍之介だが、誰もいない家に一人淋しく

取り残され、あとはお酒を飲んで寝るしかなかった。




わん




2016年06月04日

568話 なんとか元気でやっています。

「今日そちらに帰るから、顔出しにいくね。」



龍之介は珍しく母親に電話をかけた。



「お〜龍之介、元気にしとるか。あ〜待っとるよ。

何時ごろに来れる?」

年老いた母親はうれしそうに声をはった。


「今から出るところだから、お昼ごろにまでには。」



高速をとばし、龍之介は自宅に帰った。

   >交通ルールは守りましょう


「あっ お父さんお帰りなさい


自宅にいるのはあずき一人。あずきは明日の日曜から

行く 少年自然の家の準備で大忙し。


持っていくズボンを手洗いしたり、上着を洗濯したり。

龍之介ならどちらも洗濯機にかけてしまうだろう。


「もうちょっと待ってて

       (ノ・_・)ノ凹 ┣凹━凹━凹┫


洗濯をする彼女を眺めながら、流石に女の子だと龍之介は感心した。


11時ごろ母親からの催促の電話が入る。

時間に神経質で、待ち合わせの予定時間より先に、

まだか、まだかの催促がほぼ毎回入ることはお馴染みだ。


「今自宅から出ようとしたところ。あずきと一緒に行くから。」


母親は安心した声で、「気を付けてきなさいよ。」と念をおす。


「あずき 急ごう おばあちゃんが待ってる。」



母親の家についた龍之介たちは、父の仏壇に線香を

あげる。


「できたら、お墓にも行きたいんだけど・・・

 睡眠不足で時差ボケなんだ。だから、またの機会にするね。」


三人は近くにある、行きつけのお好み焼き屋で昼食をとった。

あずきと、龍之介はいつもの具材入りで、母はミックスを注文

した。この店のお好み焼きのソースの味は絶品だ。


間もなく、中学生の二人連れがやってきた。大柄な丸坊主の一人が

龍之介に挨拶をする。


「やあ、この前は惜しかったね。」


県大会出場を掛けた中学総合体育大会地区予選準決勝。

その相手チームのキャッチャーで4番のスラッガーだ。

だが、まだ2年生。


「はい。悔しいかったです。」


結果は1対0。相手チームは2年生主体のチームで来年こそは

このチームの出番であろう。


後で龍太郎に聞いた話では、このスラッガーは試合終了と同時に

男涙を流していたらしい。

本当に惜しい試合であって、なによりも県大会出場を逃したことが

とても悔しかったのだ。


「あの人誰?」


「優勝したM中の龍太郎くんのお父さん。

 ジュニアで一緒だったから・・・」


ジュニアの後輩たちは龍太郎達においつき、追い越そうと

一生懸命に頑張っている。野球選手はこのように、礼儀正

しく人に好かれる選手でありたい。



「お待たせしました。」


「美味しそう。さあ、食べようか。



店のおばちゃんはどうやらあずきのことがお気に入りで、

どこの誰か記憶していてくれる。会計の時にはおかしなど

何か手に持たせてくれる。



「おばちゃん また来るね。



龍之介が単身赴任をして早3週間が経過し、毎週

自宅に帰宅している。もうじきそのような機会もだんだん

少なくなっていくのだろうが、帰った時ぐらい、母親と仏壇、

そしてこのお好み焼き屋のおばちゃんには顔を出したい。





















2016年06月03日

567話 遭難の小学2年生発見される

龍之介も言うことをきかない龍太郎を何度か置き去りに

しとことがある。

たいていはすぐに迎えに行ったり、誰かに連れて帰って

もらったり、逆切れされたり色いろのパターンがあった。


しかし、遭難ということを想定などしていない。

もしも・・・



それを思うと、この度の北海道の話も他人事ではない。



毎日毎日ニュースを気にして、「早く見つけてくれ。」

と祈る龍之介。



そして、ようやくニュースは入る。


「無事、発見される!」


「龍太郎君かい」


「うん」

自衛隊員が演習場内の小屋の鍵を開けると、正面に龍太郎君が立っていた。
行方不明時と同じ黒色Tシャツ、ジャージーのズボン姿だった。
 隊員が昼食用に持っていたおにぎり2個を手渡すと、むさぼるようにほお
ばった。隊員が「お父さん、お母さんも心配しているよ。もう怒ってないよ。
家に帰ろうね」と話しかけると、「うん」と答えた。

 「どうやってすごしていたの」。隊員がさらに聞くと、龍太郎君は「(寒さをし
のぐために)マットレスとマットレスの間にはさまっていた」と話した。

 龍太郎君が発見されたのは、演習中の寝泊まりに使う小屋。演習場の入
り口はゲートがあり、柵や有刺鉄線で囲まれているが、「子供なら、くぐって入
り込める」(自衛隊関係者)という。

 龍太郎君は行方不明となった夜から小屋にいたとみられ、小屋の外には水
道もあった。自衛隊関係者は、「龍太郎君の服はあまり汚れておらず、おそらく
ずっと動かずにいたのだろう。保温と動かない、というのが遭難時の鉄則。
7歳で実践するとは大したものだ」と話す。

 「見つかったぞ」 「無事だったか」 「良かった」

集まった人々から大きな拍手と歓声が上がった。



「ごめんね龍太郎。 もう決して君から目を放したりしないよ。」 
Build a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: