龍太郎は4番レフトで出場した。
4番と言っても長距離打者ではなく、本来のスラッガ−として期待される
4番ではない。龍太郎の努力不足は親の目から明らかである。
しかしながら、初戦、一番の強敵を龍太郎がウエストされながらも
絶妙なスクイズで突き放し、展開良く快勝した。
2回戦は初戦よりも実力の劣るチーム。楽勝することが予想された。
しかし、相手投手は軟投派。変化球主体でかえってやっかいである。
初回、初戦同様龍太郎にチャンスがまわってきたが、ここもベンチは
スクイズを支持するだろう。
しかし、龍之介はとても嫌な感がはたらく。昨日、ビデオをとり研究した
相手ベンチが、このスクイズは読むと思われ、四球でも良いと考えない
か。ジュニア時代には名前の通った選手で、一応4番である。
案の定、初戦よりも大きくウエストされた。手を伸ばした頭の上。
しかし、喰らい付く龍太郎はバットの真でとらえる。
しかし、それが裏目にでて3塁手の小フライとなりチャンスが潰れてしまう。
1点差で追い上げる自チーム。
龍太郎2打席目。ランナーを置いて、今度は初球からヒッテイング。
レフトの左にライナーを打ち放ち、3塁打の同点タイムリー。
打席に向かう龍太郎に、バックネット裏で応援している
龍之介が声をかけていた。
「初球からいけ。」
龍太郎は俺の目の前で、とうとうやってくれた。
とうとうやってくれたのだ。
それはまるで、龍之介自身がバッターボックスに立ち、思い描いた
通り初球から振りぬいたかのように、龍太郎と一体となった瞬間で
あった。
つづく・・・
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