ニュートン 別冊ゼロからわかる心理学 知れば知るほど面白い!心と行動の科学 から
監修 横田正夫 2019年3月5日発行 ニュートンプレス
心理学の巨星たち
心理学は100年ほど前に生まれた?@
心理学の始まりは、19世紀の終わり頃に遡ります。
ここでは、心理学の歴史を大まかに見ます。
生理学やコンピューターの発展が
1870年代に、ドイツの心理学者 ヴィルヘルム・ヴントが
「心理学実験室」を創設したことで、
「実験心理学」が誕生したと言われています。
19世紀は、人の感覚や神経の仕組みを解明する「生理学」が発展した時代でした。
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ヴントは、生理学で行われていた実験方法を応用して、
意識を測定することを試みました。
実験は、ある刺激を与えれられた実験参加者が、
自分の意識の中で起こっている過程を報告する
「内観法」
という方法を使って行われました。
ヴントの実験は、目に見えない心を、
観測できる形で現そうとした
初めての試みとして評価されました。
しかし、自分の心を自分で捉えることには限界がある、
内観の訓練をした一部の人しか実験に参加できない
などといった問題点がありました。
20世紀に入ると、アメリカでは、
誰に対しても測定が可能な事柄だけを扱って
研究を行おうとする動きが強まり、
「行動主義」が生まれました。
行動主義は、人が受ける「刺激」を原因、
刺激に対して表に出てきた「反応」を結果として、
刺激と反応の関係性を調べていくものでした。
これによって、学習の基本原理などが明らかになりました。
しかし、
人の全ての行動は刺激と反応組み合わせで説明がつき、
反応が起こるまでの間に人の内部で意識されている内容については
考慮しないと考える
極端な姿勢への批判がありました。
その頃、ドイツでは、「ゲシュタルト心理学」が発展していました。
ゲシュタルト心理学は、
刺激と反応は1:1の関係にあるのではなく、
人の反応は、周囲の環境全体によって決まるという考え方でした。
ここから、人は一人の時と集団の中にいる時とでは
振る舞いが異なることなどが明らかになり、
「社会心理学」が発展するきっかけとなりました。
続いて、1940年代にコンピューターが登場したことをきっかけに、
人の心はコンピューターに似ていると考えられるようになりました。
コンピューターの入力、情報処理、出力という過程を当てはめて、
人が刺激を受けると、心で情報処理が行われ、
反応となって現れると
捉えられるようになったのです。
ここから、刺激を受けた時に人の内部で起こっている過程に焦点を当てる
「認知心理学」が発達しました。
認知心理学は、実験心理学の中の一分野です。
様々な実験を通じて、知覚や記憶、思考といった
心の機能の解明が進みました。
さらに、20世紀後半には、脳の研究が発展したことにより、
脳と心の関係性も明らかになり始めました。
現在は、この流れを汲み、当時よりも発達した測定技術などを用いて、
心のさらなる解明を目指しています。