ニュートン別冊 ゼロからわかる心理学 知れば知るほど面白い!心と行動の科学 から
監修 横田正夫 2019年3月5日発行 ニュートンプレス
心理学と治療
心の不調の原因を探る方法
どんなことでも話してもらえる信頼関係をつくる
クライアントの心が健康になるように支援するためには、
まず、なぜクライアントが心に悩みを抱えるにいたたのか、
その要因を知ることが大切です。
病院や学校などで臨床心理士としての勤務経験がある
日本大学文理学部の松浦隆信(まつうら たかのぶ)准教授は、
「一番大事なことは、クライアントの話を丁寧に聞き、
信頼関係を築くことです」と話します。
「話を最後まで丁寧に聞かず、途中で遮ったり、
面接初期の段階で何かアドバイスをしても
何の効果もありません。
そういうことをすれば、クライアントは
カウンセラーに心を開いてくれないばかりか、
アドバイスの内容に含まれる
カウンセラーの価値観や意見を察して、
本当に思っていることを
話してくれなくなります。
カウンセラーはクライアントが抱いている率直な気持ちや事実などを、
良し悪しの条件をつけずに話してもらえるように
努めながら、クライアントの置かれた状況を
整理・理解していくのです」(松浦准教授)。
クライアントとの面接を行ったあとは、
心理検査を行います。
心理検査には、クライアントの知的機能や性格、
対人関係のあり方をはかるための検査など、
様々なものがあります。
例えば、「とても当てはまる」、「当てはまらない」、「どちらでもない」
などの多肢選択式や自由回答で質問に答える「質問紙法」、
ある作業(連続した足し算や、簡単な図形の模写など)をしてもらって、
その過程や結果などを見る「作業検査法」、
そして、意味合いが曖昧な言葉や絵を見せて、
自由な反応を引き出す「投影法」があります。
投影法は、インクをたらした二つ折りの髪のシミを見せて何に見えるかを問う
「ロールシャッハ・テスト」が有名です。
他にも、「私が◯◯するならば、…」など未完成の分を与えて、
そこから連想して文を完成させる「文章完成法(SCT)」などがあります。
臨床心理士は、このような複数の心理検査を組み合わせて、
クライアントが悩みを抱えるにいたった背景に関する
仮説を組み立てていきます。