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タナカマツヘイ
総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医

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posted by fanblog

2019年03月20日

社会的判断?A

最終的には、心の働きの脳内メカニス?ムについて述べていきます。

判断力・直観力

社会的判断?A

前頭連合野は行動や感情をコントロールしている

前日のページに戻って、14個の絵と種類、配置を10秒間よく見て覚えてきてください。

下段の緑の質問を読んで答えてください。

ハサミを探しに隣の部屋に行った時、何を探しに来たのか忘れてしまった経験はないだろうか?

これには、 『ワーキングメモリ(作業記憶)』 と呼ばれている前頭連合野の機能が関係している。
ワーキングメモリは、短期記憶の一種である。
だが、他の短期記憶にはない、重要な特徴がある。
それは、 「行動のために使われる記憶である」 ということである。
先ほどの例で言えば、「ハサミを探す」という行動を行うために、『ハサミ』についての記憶をワーキングメモリに入れておいて、隣の部屋でその記憶を使って探す。
この時、声に出して「ハサミ、ハサミ、・・・」と連呼し続ければ忘れることはない。
ワーキングメモリとは、声を出す代わりに、脳の中で暗唱し続けるような機能である。

前頭連合野 は、目や耳などから得られる身の回りの状況や体の内部環境( 現在についての情報 )、将来の予定( 未来についての情報 )、記憶や知識( 過去についての情報 )などにアクセスすることが可能である。
そうした 膨大な情報の中から、自分にとって意味のある情報だけを選んで(これを 「選択的注意」 という)、それを一時的に保持しておく(ワーキングメモリ)
そして、その 情報をもとに、行動や感情を適切に調節する

前頭連合野とは、ワーキングメモリを中心にして脳全体を制御するコントロールセンター
なのである。

前日 短期記憶テストの質問

時計は何時何分を指していましたか?
動物は何匹いましたか?
バスケットボールシューズはどのあたりの位置にありましたか?


あなたはどれだけ答えることができましたか?
質問に答えるために、あなたの脳は絵の内容を記憶した。
このように、何らかの行動に使うために作る短時間の記憶を『ワーキングメモリ』と呼ぶ。
その容量はあまり大きくはなく、数字であれば普通7桁ほどしか覚えられない。
ワーキングメモリは保持しておける期間が短いので、この日のページを見る頃にはあなたの前頭連合野から消えてしまう。
あらかじめ「何について聞かれるか」を知っていれば、こうした質問に答えることは簡単になる。
必要な情報に焦点を絞り、情報の洪水を防ぐことができるからだ。
こうした機能を『選択的注意』と呼ぶ。
これも前頭連合野が持つ機能の一つである。

ロンドン塔テストの解答:?@赤をBへ ?A緑をCへ ?B赤をAへ ?C青をAへ ?D緑をAへ

ワーキングメモリの働き

「外界から入力する情報」「予定記憶」「過去の記憶」などから、『選択的注意』によって選ばれた情報だけを一時的に保持しつつ、それらを組み合わせて適切な行動を導く。

選択的注意

日常の一場面で目や耳などから入ってくる膨大な情報の中から、今の自分にとって意味のある情報だけに注目する機能。

ワーキングメモリ(ワーキングメモリの中枢:前頭連合野46野)

前頭連合野が思考するときの“作業台”。
スペースに限りがあるため、多くの情報をのせることはできない。

行動を決定する

前頭連合野は、ワーキングメモリにのった情報をもとに行動を決定して、高次運動野に指令を出す。

情動コントロール

前頭連合野は、ワーキングメモリにのった情報をもとにして、 情動を司る大脳 扁桃核 や記憶を司る 海馬 などの働きを適切にコントロールする。

ワーキングメモリとドーパミン

前頭連合野には、ドーパミンを神経伝達物質として放出する中脳のニューロンが投射している。
サルの前頭連合野46野にあるドーパミン受容体(D1と呼ばれるタイプのもの)の働きをブロックすると、ワーキングメモリの機能が低下することが報告されている。
ワーキングメモリの異常は、統合失調症・ADHD(注意欠陥多動性障害)に関連していると考えられる。

選択的注意とノルアドレナリン

前頭連合野を含む大脳皮質などには、ノルアドレナリンを神経伝達物質として放出するニューロンが脳幹から投射している。
サル前頭連合野46野でノルアドレナリンの働きを妨げると、選択的注意の機能が低下することが報告されている。
選択的注意の異常は、ADHD・うつ病・パニック障害(不安神経症)に関連していると考えられる。

情動コントロールとセロトニン

前頭連合野を含む大脳皮質などには、セロトニンを神経伝達物質として放出するニューロンが脳幹から投射している。
セロトニンは、大脳辺縁系に働きかけて情動をコントロールする前頭連合野の働きに必要である。
情動コントロールの不調は、うつ病だけでなく、パニック障害(不安神経症)にも関連していると考えられる。

統合失調症

軽度の症状としては、喜怒哀楽表現が乏しくなる、生活意欲が低下するなどがある。
重度の場合は幻聴や幻覚、被害妄想、興奮などの症状が現れる。

ADHD(注意欠陥多動性障害)

主に小児期に現れる精神疾患だが、成人でも発症する。
一つのことに注意・集中することができず、落ち着きがなくなる。
考えずに、衝動的に行動する。

うつ病(躁うつ病)

気分が高揚する躁状態と意気消沈するうつ状態とを周期的に繰り返す精神疾患だが、多くはうつ状態だけを示す。
抗うつ薬などによる治療によって多くの場合完治する。 

パニック障害

強烈な不安に発作的あるいは慢性的に襲われることによって、落ち着きをなくしてパニックに陥る。
不安神経症とも呼ばれる。

前頭連合野の機能とモノアミン系神経伝達物質

前頭連合野が持つ、ワーキングメモリ、選択的注意、情動コントロールなどの機能は、中脳や脳幹から前頭葉へと軸索を伸ばすニューロンが放出する『モノアミン系』と総称される神経伝達物質(ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニン)によって制御されている。
いくつかの精神疾患は、前頭連合野の機能低下と関連していることが考えられる。

参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
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