※このコラムはネタバレがあります。
今回紹介する「殺人クイズ招待状!」は長坂秀佳脚本作品ですが、原案を書いたのは岸牧子という方です。実は、脚本家として本格デビューする前の 内館牧子さんのことなのです。
暗殺計画を企てた犯人の挑戦
ドラマは、 紅林刑事(横光克彦)にスーパースター暗殺計画を予告した犯人が、ヒントとなる「謎解き」を特命課に送り付け、それを紅林ら刑事たちが解きながら、計画を暴いていくというストーリーになっています。
メシア(救世主)の使いと名乗る男は、4回に分けて暗殺計画のヒントを特命課に出していきます。1通目は日時、2通目は凶器、3通目は場所、4通目に暗殺するスーパースターの名前という順だと予告します。
1通目の日時は簡単に割り出せましたが、2通目の凶器は「58°」という謎の数字から解き明かさねばなりません。見当違いの方向に捜査する紅林に対し、犯人は挑戦的な行為でさらに挑発してくるのです。
3通目は「3」という数字。特命課はリストアップしたスーパースターとの接点を割り出そうとし、ある程度絞り込みを進めます。名指しされてきた紅林は、犯人の意図を探ろうと独自の捜査を続けます。
そして、犯人がヒントとして出してきた「謎解き」が、実は犯人自身を示唆するものだということが判明。それらを解きほぐいていくと、犯人と同郷で、今は人気歌手になっている人物が浮かび上がってきました。
人気歌手がライブをする会場に犯人が現れ、恨み言を叫びながらダイナマイトを投げつけます。そこに間一髪到着した紅林刑事。導火線を手でつかみ、やけどを負いながら必死で火を消し止めたのでした。
長坂脚本らしさ前面に
最初に書いたように、このドラマは内館牧子氏が原案を書いています。長坂氏が脚本を手掛けているので、どこまで原案が生かされているのかは不明ですが、かなり 手の込んだストーリーになっています。
例えば、凶器のヒントは「58°」ですが、数字に何か意味があるとみた紅林は、緯度、経度、最低気温(氷点下)が一致する地名を見つけ、地名と同じ店名の喫茶店を探り出します・・・が、凶器には結び付きません。
一方、桜井刑事(藤岡弘、)らは、角度だとみて、ゴルフのサンドウエッジではないかと推理。サンドウエッジの別名が「ダイナマイト」であることから、凶器を特定します。それだけなら、単なる謎解きに過ぎません。
実は、紅林が探し当てた喫茶店は、犯人が上京してきた当時の行きつけの店で、ターゲットにしていた人気歌手や事件の動機に結びつく女性も、その店に通っていたのです。
同じように3通目、4通目のヒントにも、「謎解きと犯人との結びつき」の二つの意味を持たせており、このあたりは長坂氏の手がかなり入っているのではないかと思われます。
ちなみに内館氏は、桜井刑事主演の「シャムスンと呼ばれた女」(風吹ジュンさんゲスト出演)の原案も書いており、こちらは内館さんのオリジナリティがよく表れているドラマだと、個人的には感じています。
神代が貫き通した姿勢
もうひとつ、このドラマでは 神代課長(二谷英明)の捜査に対する揺るぎない姿勢が描かれています。それは「挑戦的で自己顕示欲の強い犯人に、どう対処すればよいのか」ということです。
神代の当初の考え方は「愉快犯はできるだけ無視する」でした。しかし、犯行がエスカレートし、マスコミ報道によって犯人が英雄視されてしまい、神代の目論見は外れていくのです。
犯人は、謎解きの答えを公表するよう要求します。それに対し、神代は「わざと間違えた答え」を発表し、犯人を油断させる手に出ます。その間に、紅林らが捜査を進め、本当の答えを導き出していきます。
犯行が失敗に終わったにもかかわらず、犯人は「俺は勝った。歴史に残ることをやったんだ」と高笑いします。そこに神代が「お前はジョンレノンを殺した犯人の名前が言えるのか」と口火を切ります。
リンカーンを殺した犯人、レーガンを撃った犯人、ローマ法王を襲った犯人と畳みかけ、挙句「お前の名前はすぐに忘れられる」と言い放ちました。陶酔していた犯人は現実に戻され、ガックリとうなだれたのです。
神代は、犯人との知恵比べに勝とうという気も、同じ土俵に立とうとも思っていません。犯行を未然に防ぎ、最悪でも犠牲者を出さないこと、これが 終始一貫した姿勢として描かれています。
ドラマでは、人気歌手役として当時アイドル歌手だった 豊川誕さんがゲスト出演しています。また、犯人役の 後藤哲夫さんは、声優として洋画やアニメの吹き替えで活躍しました。
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