● 「ホットケーキミックス」が転売ヤーの標的に!? ならば…
■ 発端
皆さん良くご存知の事と思いますが、 「緊急事態」で Stay Home な状況を受け、SNS上でパンケーキ作りがちょっとしたブームになった所を、 転売ヤーが目を着けたか、ホットケーキミックスが品薄になるという状態はいまだ続いている様で、 筆者の住む辺りでも、ちょっとスーパーを廻ってみたのですが、 矢張り殆どのお店で品切れとなっている様子です。
筆者は当初「なんだ、ミックス粉が無いんなら自分で混ぜればいいじゃないか」等と思ったのですが、 なんと薄力粉やベーキングパウダーも品薄になっているとの事。 ただ、幸いにも小麦粉は主食に準ずる物でもあるからか、 一旦売り切れとなったお店でも次に行ってみたら在庫していたりと、 結構な頻度で補充がされている様で、更に製菓コーナーの棚を見てみると、重曹は沢山置いてあります。 それならば、と今回ミックス粉やベーキングパウダーを使わずにパンケーキを作ってみようじゃないか、と、 ブログのネタにと俎上に上げてみた次第です。
■ パンケーキ(1人前)のレシピ
以下は www 上の情報を基にまとめたパンケーキのレシピです。 直径15cm 程のケーキが2枚焼けます。 …1人前といっても、食の細い方には少々多いかも知れませんね…
- 小麦粉(薄力粉): 1カップ(200cc)
- ベーキングパウダー: 小さじ1(2.5cc)
- 砂糖: 1/4カップ(50cc)
- 塩: 小さじ1/4(0.6cc強)
- 牛乳: 1/4カップ強(50cc+α)
- 卵: 1ヶ
他に、バニラエッセンスがあれば数滴加えると好い感じに香り付け出来ます。
■ そもそも「ベーキングパウダー」って…?
※ ここから暫くは興味の無い方には全く面白く無い話が続きますので、 ツマラナイと思われた方は「…さあ、作ろう! 」迄飛ばして下さい。
さて、ここで問題は現在「ベーキングパウダー」が入手し難くなって居る事です。 そこで真っ先に思い付くのは、先述の様に、スーパーの棚に一杯置いてあった「重曹」(炭酸水素ナトリウム)を代わりに使う事です。 そもそも、ベーキングパウダーは日本語で膨らし粉等と呼ぶ様に、 主に二酸化炭素等のガスを発生させケーキ等の生地を膨らます物で、 ガス発生剤と助剤(酸性剤)の混合物です。 そして多くの製品ではガス発生剤として重曹が利用されている様です。
では重曹だけではなぜ駄目なのか?という理由です。 先ず、重曹で生地を膨張させる仕組みですが、 これは重曹を加熱する事で炭酸ナトリウムと水、そして二酸化炭素を生成する化学反応を利用しています。 $\require{mhchem}$
参考ドキュメントに拠ると、どうもこの炭酸ナトリウム($\ce{Na2CO3}$)が曲者の様で、 独特の臭気と苦味が有るとの事。 また、生地の着色を促進し黄色く色付ける、という事ですが、 これはまあ、卵黄を含むパンケーキの生地は元々黄色味がある物ですから、あまり問題にならなそうにも思えますが… 兎に角、重曹をベーキングパウダーの代用として利用する為には、重曹と中和させる何らかの酸性物質が必要だと言う事ですね。
■ 助剤として添加する物質をどうするか…?
では実際のベーキングパウダーではどの様な助剤が利用されているのでしょうか? 取敢えず筆者の手元にあるベーキングパウダーの成分を書き出してみます。
- 重曹(炭酸水素ナトリウム・30%)
- コーンスターチ(30%)
- 酸性ピロリン酸ナトリウム(18%)
- グルコノデルタラクトン(14%)
- フマル酸(4%)
- 第一リン酸カルシウム(リン酸二水素カルシウム・4%)
このうち、コーンスターチは保存中にガス発生剤と助剤が反応しない様にする為の遮断(分断)剤とする為の物ですが …それにしても、その他はどうもあまり耳馴染みの無い名前が並んでいて、 これを忠実に再現するのは難しそうです。 まあ、兎に角、何かアルカリ性である重曹と中和させる酸性の物質を加えれば良いのですから、 もっと身近な代替品はありそうです。
実際、ウェブ上でもベーキングパウダーの代用として、重曹とレモン汁、クリームターター(酒石酸水素カリウム・これもベーキングパウダーに添加される事がある様です) 等を利用する方法が紹介されて居ます。 で、今回筆者はクエン酸を利用する事にしました。 その理由は、先ず筆者の手元にあったと言う事以外にも、 入手のし易さ、利用する際の手軽さに加え、無色・無臭である点です。
クエン酸はレモンに大量に含まれるその酸っぱさの元ですし、 web上には重曹とクエン酸で炭酸水を作る方法を紹介するページが多数ありますので、 これなら上手く行きそうですね。
■ 重曹とクエン酸の反応
では前掲パンケーキ1人前のレシピのベーキングパウダーに換えて、重曹・クエン酸を使用する場合、 ぞれぞれ量はどのくらい必要になるでしょうか?
重曹とクエン酸($\ce{C6H8O7}$)の中和反応は以下の様になります。
この様に、クエン酸1に対し、重曹3が反応し、クエン酸三ナトリウム($\ce{Na3C6H5O7}$)1 : 水3 : 二酸化炭素3 が生成されます。 即ち、重曹にその1/3の量のクエン酸を加えれば良い、という事になりますが、 今回作る1人前で用いる量は極々僅か…小さじ1の30%…ですから、 大雑把に等量より気持ち少ない程度混ぜれば良し、としましょう。
クエン酸三ナトリウムはその名から想像される通り、 この反応を利用して炭酸水を作ると僅かに塩っ気が感じられるそうですが、 全体からすればその量はごく僅かですし、 そもそもパンケーキの材料に塩が含まれますから、全く問題なさそうですね! この代替ベーキングパウダーを作り置きする場合は、先述の混合物に2倍強の量のコーンスターチ、 又は小麦粉を合わせて分離剤とします。
尚、本稿の調理法を試される場合、重曹・クエン酸は必ず食用や薬品として売られている物を使用してください。 間違っても、丁度家にあったから、とか、安いから、といって掃除用として売られている物を使わないでください! …まあ、さすがにそんな人は居ないと思いますが…念の為。
■ …さあ、作ろう!
前置きが大分長くなりましたが…それではいよいよ上掲のパンケーキレシピのベーキングパウダーを小さじ3割の重曹・クエン酸に換え、 パンケーキを作ってみることにしましょう! …と、言ってもやる事は材料を混ぜて焼くだけなんですけどね…!
ダマが無い様良くかき混ぜた材料をフライパンに落とし、 弱火で両面をそれぞれ3分程度焼きます。
■ 出来上がり!
焼きあがったパンケーキはこんな感じです。
如何です?少なくとも見た目はちゃんとパンケーキですね!? パンケーキには欠かせないメープルシロップをかけて写真を撮ったんですが、 何かパッとしないというか、イマイチ見栄えがしませんね …まあ、だからこそパッケージ写真やCMの撮影では、 実際のシロップやクリームでは無く松脂や接着剤を使ったりするんでしょうが… 勿論、本ブログではそんな勿体無い事はしませんよ!
因みに撮影で使用した皿とカップ(図案が面白かったので…)は100円ショップのダイソーで買ったものです。 この皿、何しろしっかり「PANCAKE」と書いてあるくらいですからパンケーキ用に間違いありません。 確かに、こういう風にフチまで平たい皿の方がパンケーキには向いてますね。 ミルクピッチャー、ソースポットは、これもまた100円ショップのセリアで見つけたモノです。 100円ショップもそれぞれに特色があって面白いですね。
右はパンケーキの断面を示す画像ですが… ちょっと溶けたバターが汚ならしい…と迄は言いませんが、あんまり綺麗じゃないですね… それは兎も角、どうでしょう?…少々目が粗いというか、 市販のベーキングパウダーを使用した場合より気泡が大きめ?な感じもしなくも無い気もしますが… もしかしたら、その辺りは市販品の多数の添加物に秘訣があるのかも知れませんね。
膨張率は市販のベーキングパウダーを小さじ1加えた場合よりもこちらの方が大きい様に感じられました。 何しろ量の計り方がかなり雑だったので、そもそも重曹の量が多すぎる可能性も…? でも、食べた感じは確かにパンケーキでしたよ!それは間違いありません!
■ 最後に
以上、市販のベーキングパウダーに換え、重曹+クエン酸を使用し、パンケーキを作ってみた訳ですが、 今回は重曹のみ使用した場合や、市販のホットケーキミックスとの比較等は行って居りません。 …まあ、そこまで差が付くとも思えないのですが…興味のある方は試してみては如何でしょう? でも、市販品との比較は、市場にマトモに出回る様になるまで叶いませんね… 兎に角、マケプレやメルカリ等で不当な価格で売られるモノに手を出してはいけません! この様な事態の打開の為にも、一刻も早くこのコロナ禍が過ぎ去る事を祈るばかりです…
■ 参考にしたサイト
- 東京ガス: 食の生活110番Q&A:「重曹」と「ベーキングパウダー」の違い(オリジナルリンク切れ)
- 大宮糧食工業株式会社: ベーキングパウダー(膨張剤)
他に Wikipedia のそれぞれの項目。