これまで、デビューアルバムの"Boy(1980)"、セカンド・アルバムの"October(1981)"、3枚目の"War(1983)"、ライブ・アルバム"Under a Blood Red Sky(1983)"、4枚目の"The Unforgettable Fire(1984)"と、順調にアルバムをリリースし続け、母国アイルランドはもちろんのこと、イギリスにおけるステータスも早くから確立していました。事実イギリスのUKアルバムチャートでは"War"以降のスタジオアルバムは連続で首位に輝く不動の人気ぶりで、その勢いはアメリカにも伝播し、"War"、"The Unforgettable Fire"の2作はBillboard 200では上位に食い込み、シングルカットされたナンバーもチャートに顔を出すようになりました。
U2は社会問題や宗教、政治問題などを鋭くえぐったメッセージ色の濃い楽曲が多いことで知られています。そして5作目の"The Joshua Tree"においては、こうしたメッセージ・ソングをアメリカ風に意識して作られ、カントリーやゴスペル、アメリカン・フォークなどを取り入れたロックに仕上がっています。つまりU2にとって、本作はアメリカでの地位を確立する重要なアルバムだったのです。
ただし、U2におけるメッセージ・ソングは何も親米を意識したわけではなく、例えば収録されている4曲目の"Bullet the Blue Sky"では、当時中米でおこった革命政権と反革命派の内戦にはアメリカの介入があり、恐怖に怯え、炎や弾丸を食らい、苦悩の日々を送る人たちの姿を歌にしています。U2は大きな権力に媚びることはせず、自分たちのイデオロギーは徹底してアピールし、真の姿で勝負することを全面に押し出すのでした。
実際シングルとしては"With or Without You"、"I Still Haven't Found What I'm Looking For"等がカットされ、両曲ともBillboard HOT100シングル・チャートで1位を獲得しました。そして、4月25日のこの陽、ついにアルバムチャートでも"The Joshua Tree"がナンバー・ワンに輝き、実に9週間、連続1位を記録したのです。これ以降リリースするアルバムは欧米のあらゆるアルバムチャートで1位に輝き続け、現在も精力的に活動を続けています。
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