弥生「しかし、驚いたわね。」
弥生と中村は回転ずしのカウンターで会話をしていた。
中村「な、なにがです?」
弥生「準決勝の2試合とも大差になるとは。正直想定外よ。」
中村「(あっ、またイクラ)」
弥生は寿司をほおばりながら、会話を続けた。
弥生「秋田の圧勝にも驚いたけど、神奈川があんなに強いとは思わなかったわ。
牧君を温存しておきながら。
藤真健司・・・・。恐ろしいわ。」
中村「確かに・・・変幻自在に、赤木君、仙道君、流川君、神君を操っていましたもんね。
(あっ、中トロ!!)」
弥生「(パクっ!)そうなのよ。モグモグ。
しかし、三井君はなぜでなかったのかしら?怪我って感じでは
なさそうだったし。」
(試合前)
三井「高頭監督。今日は、俺ちょっとひざの具合が悪いんで、明日に備えて
パスさせてもらっていいですかね?」
高頭「ひざ!?治ったんじゃなかったのか?」
三井「念のためですよ。念のため。」
赤木「大丈夫か?」
宮城「三井さん!?」
しかし、三井の膝は何ともなかった。
仙道とのウォーミングアップでの会話が三井を変えたのだ。
決勝は、万全の態勢で迎えたいと考えた。スタミナには不安はなかったが、
全国の舞台での決勝までの連戦は初めての経験だ。
ブランク明けの三井には、少し応えていたのだ。
高頭「まぁいいだろう。明日は大丈夫なんだろうな?」
三井「明日は、這ってでも試合に出ます。明日勝つためだ。」
高頭「そうか。それでは今日は神のスタメンだ。」
高頭は自分のチームの神をスタメンにできるので、それ以上の追及はしなかったのだ。
牧はこっそりと三井を呼び出した。
牧「どういうことだ?」
三井「何でもねぇよ。お前と一緒さ。決勝で爆発したいと思ってな。
準決勝ならアイツらならうまくやるだろう。」
牧「フッ。決勝のスタメンを神に取られても知らないぞ。」
三井「そっちこそ、藤真に取られても知らねぇぞ。」
三井は、そう答えたが、体調以外にも理由があったのだ。
一緒にプレーをしていて、神のポジション取りに興味が出てきたのだ。
今までは、自分のプレーにしか興味がなかったが、一緒に練習をしていると
神がよくフリーになっている。しかし、一緒にコートにいるとそれがどういう
動きでフリーになっているのかわからないなと思っていたのだ。
客観的にコートの外から神のプレーを見たいと思ったのだ。
弥生「それにしても福岡をあそこまでボロボロに引き裂くパスセンスと
仙道君、流川君のフォワードコンビ。全国ベスト4の福岡も全く
歯が立たなかったわ。」
中村「そうですね。21点差とは。衝撃的でしたね。牧君、三井君も出てたら
どうなったでしょうね。」
弥生「さあ、どうなったでしょうね。もっと開くとは思えないわ。
藤真君、神君も調子が良かったし。
(えっと、金目鯛はあったかしら。ピッピッピ)」
弥生はどんどん注文ボタンを押していた。回転ずしとはいえ、一皿300円以上
するのだ。
中村「あ、あの、そろそろお愛想しませんか?」
弥生「何言ってるの。まだ、16皿しか食べてないじゃない。
これからが本番よ。ええーい、ボタンを押すのが面倒だわ。
大将っ、中トロ3つにコハダ1を1つ、ブリを3つに、イクラとウニを
2つずつ。それから、タマゴを1つに、あった、忘れていた。
ヒラメとエンガワを2つずつ!
ハマグリのお吸い物もお願い!!」
中村の財布はどんどん軽くなっていった・・・
(続く)
【このカテゴリーの最新記事】
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image