神奈川 46
秋田 47
神奈川ベンチでは、牧と高頭が見つめあっていた。
幾度も困難な場面を乗り越えた二人だ。高頭は、牧のそろそろ出番ではないですか?という言葉ですべてを悟っていた。
牧の俺に任せてくださいという強い決意を。
高頭「よしっ。花形と牧交代だ。赤木、仙道っ。お前たち二人にインサイドを任せる。
赤木、河田だけでも大変だが、神奈川ナンバーワンセンターの実力を見せてくれ。
仙道、野辺は花形をバテさせるほどだが、お前のセンスに期待する。
そして、藤真よ・・・。」
藤真は交代を覚悟していた。花形が牧と交代とのことなので、アウトサイドを中心に、三井、神のスリーポインターを中心に攻めるのだろうということは、普段監督をしている藤真には容易に想像できたからだ。
高頭「お前は、この試合はゲームメイクはしなくていい。ここからは牧に任せろ。
高校に入学した直後のインターハイ予選で海南をてこずらせたポイントゲッターの姿を見せてくれ。外からでも中からでも好きなタイミングでシュートを打てばよい。
三井っ。バテてないか?」
三井「へっ。バテるはずがないぜ。ここからが本番だ。」
高頭「お前の爆発力にも期待している。不調なようなら神に変えるぞ。」
三井「悪いが、神、今日は出番がないぜ。」
神「今日のところは、三年に任せますよ。ただし、調子が悪かったらいつでも変わりますから。」
高頭「・・・牧。」
牧は高頭が言いたいことはすべて理解していた。
牧「いくぞ。まだ、たった1点差だ。このまま負けたら流川に笑われるぞ。」
一方、秋田のベンチは盛り上がっていた。
堂本「よしっ。流川には悪いが、こっちのペースだ。中山もこのまま自分を出していけ。」
深津「気を抜くなピョン。まだ1点しかリードしていないピョン。」
河田「そうだな。高さではこちらが有利だが、あっちも開き直ってくるかもしれん。」
堂本「外か・・・。松本、三井には気を付けろっ!」
松本「はいっ。アイツはへばってても、打ってくるので気を付けます。」
さすがに百戦錬磨の秋田なので、気を緩めることなく気を引き締めていた。
試合が再開された。
河田「おっ。花形は変えたのか?ずいぶん小さいチームだな。」
牧「走るぞ。」
牧から藤真へそしてすぐに牧へリターンパスがされた。
深津「今度は、止めるピョン。」
しかし、ここ一番の牧の集中力はすさまじかった。
深津が序盤よりディフェンスに力を入れていることを見抜き、すぐには抜けないことを見抜いていた。
抜くと見せかけていたが、すぐにストップし、流れるように仙道の方へ体を向けた。
仙道がマークを外していたのだ。
それは、中山が作った罠だった。牧が、仙道へパスをしようとした瞬間、中山が動いた。
中山「(ひっかかった)」
そう思った瞬間、牧は、逆方向にノールックでパスを出した。
そこには、藤真が待ち構えていた。
河田がブロックに行こうとしたが、赤木が体を張った。
赤木「打てっ!」
藤真は躊躇なくシュートを放った。
シュートはキレイな弧を描いてリングに吸い込まれた。
神奈川 48
秋田 47
中山「くそっ。うまくはまったと思ったのに。」
深津「狙いはよかったピョン。がっかりする必要はないピョン。
相手は海南の牧。そんなに簡単にはいかないピョン。」
再度神奈川選抜が逆転した。
(続く)
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