経済学には「人間は自分の利益を最大化するよう合理的に行動する」という大前提があります。しかし、実際の行動を観察すると、なぜか非合理的な判断をしている場面が多々あります。損したくないと思うあまり、大きな損を生んでいることがたくさんあるのです。
なぜそのような非合理的な行動をしてしまうのか。それを心理学の面から解き明かそうとしているのが、行動経済学です。要するに、行動経済学とは経済学に心理学の要素を取り入れたものといえます。学問の分野としてはまだ新しいですが、取り上げられている事例が話のネタとしても非常に面白く、魅力があるため注目されています。
行動経済学の理論はいろいろ応用されています。マーケティングの領域で明らかに応用しているものがありますし、なかには 「悪用」というべきものもあります。視点を変えれば、行動経済学の知見を学ぶことで非合理的な判断による損を回避しやすくなるわけです。以下の問題は行動経済学の理論に基づいて作成し、陥りやすい数字のワナについて解説しました。実際に解いてみると、どんなふうにして数字に騙されるかが、わかってくるはずです。
Q. デパートのバーゲンに訪れたAさんは、好みのデザインのスーツが定価5万9800円から2万9900円に値下げされているのを発見。「ほぼ半額だ!」とAさんは喜んでレジに向かった。この行動は得か損か。
A. 「アンカリング効果」にやられましたね。
定価の値札に赤線を引いて半額に値下げされていたら「これは安い!」と思い、あまり品質を確かめないまま買ってしまう人がたくさんいると思います。
しかし、そのスーツの定価は本当に5万9800円でしょうか。バーゲンの前に同じ商品がその値段で販売されていればよいのですが、ひょっとしたらバーゲン専用品で5万9800円の価値はないかもしれません。
なぜ値下げ表示に人は弱いのか。それは行動経済学でいう「アンカリング効果」によるものです。アンカー、すなわち船が錨をおろすように、人間は最初に示された数字に強い影響を受けます。
このケースでは5万9800円という定価がアンカーになり、「2万9900円なら約3万円も安い!」と思い込んで買ってしまうわけです。赤線が引かれている定価が本当の定価より高い場合、販売価格が実際以上に安くなっているとの誤解を消費者に与えるために景品表示法に引っかかりますが、この手の値引き表示は後を絶ちません。
アンカリング効果を使ったワナを見抜くには、2つの方法があります。
1つは、価格が品質に見合ったものであるかどうかを見極める目を持つこと。もう1つは、買いたいものがあればバーゲン前にあらかじめ価格の相場を調べておくこと。1つ目の方法は実際には難しいので、2つ目の方法が現実的な手段になるでしょう。
▼もう1問応用問題にTRY!
Q. ドバイのスーク(市場)でかわいい木目細工の額を見付け、店主に値段を聞くと「100ドル!」。絶対に3倍は吹っかけていると考え「高い! 20ドルなら買おう」と言ったところ、店主はしばらく考えてから「わかった。20ドルで売ってやろう」。この買い物は損か得か。
A. 損。これは筆者の実体験で、ドバイの空港で同じものを5ドルで売っていた。
(大江英樹=監修 宮内 健=構成 getty images=写真)
プレジデントオンライン引用
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2016年05月16日
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