インテリジェント・デザイン論に立つ科学者たちは、「神」という言葉は使わないし、どの宗教を唱えるわけでもない。単に、サムシンググレートとか、知的デザイナーという言葉を使う。この「生命が始まるのに必要な情報を与えた者」「生命を与えた者」「生命体をデザインした者」を、「インテリジェント・デザイナー」=「知的デザイナー」「知的設計者」と呼ぶのである。
彼らは「知的デザイナー」の存在を証明したいがために、インテリジェント・デザイン論を唱えるようになったのではない。むしろ、無神論者も多くいる。世界と生命の成り立ちを詳しく研究していたら、その過程で知的デザインの存在、知的デザイナーの存在が確認され、その存在をどうにも否定できなくなってしまった、というのが実情である。
つまり、宇宙を、地球を、月を、また生物を、研究すればするほど「知的デザイン」しか考えられなくなるのである。
主導的な理論物理学者ポール・デイヴィス博士も、
「その裏に、黒幕的な何かが存在している強力な証拠が見えます」「宇宙を作り上げるために、まるでだれかが自然界の定数を微調整したかのようです」「すべてがデザインされている、という印象は強烈です」
と語っている。
ジョージ・グリーンシュタイン博士も次のように述べている。
「すべての証拠をながめながら、何かそこに超自然的な存在者がかかわっている、という思いが絶えず浮かんできます。そういうつもりはなかったのに、私たちは、知らないうちに絶対的実在者の証拠を、発見してしまったのでしょうか」
宇宙の物理的・科学的法則や地球の状態は、生命がそこに誕生できるように、驚くほど精密に「微調整(fine-tuning)」されている。
たとえば京都大学佐藤文隆教授によると、電子の質量が1パーセント違っただけでも、人間はできないという。
また、中性子(原子核の構成要素)の質量がわずかに0.1パーセント違っただけでも生命はできない、という研究結果が出ている。そのほか重力定数、電磁力定数、光速等がほんの少し違っただけでも生命はできない、ということが分かっている。
一方、ヘリウム、ベリリウム、炭素、酸素などの核の基底状態のエネルギー・レベルも、驚くほど微調整されていることが分かった。それがわずか4パーセント違っただけでも、生命体に必要な炭素と酸素が生じ得ないことになるのである。
天文学者ヒュー・ロス博士は、宇宙の微調整の例として、重力定数、電磁気力、宇宙の膨張率、強い核力、弱い核力、宇宙の密度、恒星間の平均距離など、30以上もの項目を挙げている。そしてある試算によれば、これらの微調整された項目が偶然にそろう確率は、10の1230乗分の1だという。事実上ゼロといってもいい。
理論物理学者スティーブン・ホーキング博士もこう述べている。
「初期の宇宙の膨張の速さも、考えられないほど精密に微調整されていなければならないことがわかっています」「私たちのような生命を意図して創りだした神の行為でもない限り、どうして宇宙がこのようにあり得ないような微調整をされた条件で始まったのかを説明することは、非常に困難です」
われわれの地球は太陽系に属するが、この太陽系は、いわゆる「天の川」銀河のなかに存在し、この「天の川」銀河の比較的狭い「銀河居住可能ゾーン」に位置しているという。
太陽は、まさに適した大きさを持ち、生命を支えるのに必要な安定性を保っている。そして地球は、ほかの太陽系惑星とは異なり、適度な温度と液体の水を表面に持つことが可能な「銀河居住可能ゾーン」に位置している。
地球が大気を持ち、乾いた陸地と海から成り、防御のための磁場を周囲に作りだしているのは、それを可能にするちょうどよい大きさのためである。さらに月は、地軸の傾きを安定させ、それによって気温の激しい変動を防ぐための適した大きさと、地球からもちょうどよい距離にある。
宇宙がさまざまな「自然定数」によって支配されていることは事実であり、それらの定数のなかに不思議な一致があることを、ノーベル物理学賞を受賞したポール・ディラックが発見している。
そこには、あまりにも多くの 「10の40乗」 という数字が繰り返し現れるという。
たとえば電磁気力の定数を重力定数で割ると、10の40乗になる。また宇宙を陽子の半径を光が通過する時間で割ると、やはり10の40乗になる。さらに宇宙の物質密度の比は10の40乗であり、また宇宙に存在する核子の数は10の40乗をさらに2乗した数である。
「宇宙は10の40乗という特別な数字によって、その基本構造が決定づけられている」
10の40乗という数字は1のあとに0が40個続く数字であるが、ちなみにこの 40 が『聖書』によく出て来る完全数と同じであるという。
たとえば古代イスラエルの民が荒野を放浪した期間は40年、ノアの時代に大洪水をもたらした雨の期間は40日、モーセが十戒を得るためにシナイ山にこもった期間も40日、イスラエルの斥候がカナンの地を探ってきた期間も40日、ダビデ王の治世は40年、ソロモン王の治世も40年…ほかにも多くある。
人間の母親の妊娠期間も280日であり、ちょうど40周である。
『天地創造の謎とサムシンググレート』学研の著者久保有政氏は、本文の中でこのように述べている。
はたして生命は、偶然の積み重ねによる「盲目的進化」によって生まれたのか、それとも、「知的デザイン」によって生まれたのか。
これは単に科学上の問題というだけでなく、 「人間はどこからきたのか」「われわれはどこから来たのか」「私はどこからきたのか」という、人間の アイデンティティ にもかかわる重要な問題なのである。
自分の先祖を、サルや、サルに似た動物、あるいはもっと前はアメーバのような生物だったと考えるのか、それとも知的デザインの結果として、目的を持って誕生したのか。これは人生観にも大きな違いをもたらすだろう。
デザインの証拠として、あるバクテリアに注目する。バクテリアにしっぽのような形でついている一本の毛が鞭毛である。
1973年に、この鞭毛を「回転させて泳ぐ」バクテリアがいることがわかった。鞭毛をひらひら左右に動かして、オールのように漕いで泳ぐのではなく、鞭毛を「プロペラのように回転させて」泳ぐものである。
バクテリアが一方向に進むとき、鞭毛はモーターボートのプロペラのように液体中を回転して、推進力を与える。これは1分間に数千回も回転することができる。また進行方向を逆転するときは、回転は止められ、バクテリアは急停止して、トンボ返りをする。さらに鞭毛の根もとには、鞭毛を回転させるため、細菌の膜を通る酸(水素イオン)の流れが生みだすエネルギーを使った、一種の「モーター」がついているという。
また細胞壁には、この鞭毛と、モーターをつなぎとめるための分子の枠組みがある。そのモーターに「指令」を与えるシステムも存在する。それらの「部品」「システム」がすべて、互いにうまく調和して初めて、鞭毛は、細菌に推進力の機能を与えるようになる。
これは見事な形に完成した一種の「生化学的機械」であり、鞭毛と、そのモーターの組み立て、作動には、数ダースにおよぶタンパク質が関わっている。もし、それら数ダースのタンパク質のひとつでも欠ければ、この装置は動かなくなってしまう。
ここには余分なものは一切ない。それは、推進力という機能を持たせるために高度な知性をもってデザインされた、としか考えられない見事な構造を持っているのである。
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