居宅介護サービスは、どのくらいの費用がかかるの?年金生活でやっていけるの?
離れて住む高齢の両親に介護が必要になった場合、どんな介護サービスを受ければ二人が在宅のままで生活していけるのか、二人が安心して介護サービスを受けられる様にするにはどうしたらいいのか、年金生活者である二人が十分な介護サービスを受けてやっていけるのか、等々いろいろ心配になりますよね。
2017年の厚労省の統計によると、75歳以上では3割以上の方が何らかの形で介護を必要としているとのことですので、親の年齢がそれに近い人は、そういう時が突然やってくるかも知れません。
そんな時が突然来た場合に適切に対応できるよう介護サービスについての理解を深めておくことは大切なことだと思います。
介護サービスには。自宅で様々な介護を受ける方法と施設に入所して介護を受ける方法がありますが、やはり、自宅願望が圧倒的に多いと言われます。
今回は自宅で受けられる介護サービスにはどんなものがあり、どれくらいの負担で受けられるか、安心してサービスを受けるにはどのような点に留意すべきか等についてご紹介したいと思います。
ご参考になれば幸いです。
目 次
- ・自宅ではどんな介護サービスが受けられるの? <「居宅サービス」の各種サービス>
- ・受けられる介護サービスは、介護度の状態によってある程度利用範囲や利用頻度が決められている? 介護度7ランクの大まかな区分は? 介護度により受けられる介護サービスの種類は?
- ・介護サービスは、原則「利用料の1割(高所得者は2〜3割も)負担」で受けられます! 但し、高所得者は2〜3割負担
- ・要介護度に応じて介護サービスの月間に利用できる限度額が定められている! 【要介護度別1か月の保険適用限度額と自己負担の計算方法】
- ・要介護度別に見た在宅介護サービスの利用モデルと費用の目安 要介護度別在宅介護サービスケアプランと自己負担のモデル例 要支援1の在宅介護モデル 要介護1の在宅介護モデル 要介護3の在宅介護モデル 要介護5の在宅介護モデル
- ・安心できる居宅介護サービスを受けていくためには 介護認定には子供が極力付き添いましょう! 居宅介護支援事業所やケアマネージャー選定にも必ず子供が付き添いチェックしましょう! 親の状況に応じて介護サービスのチェックと必要なら変更を考えましょう!
- ・自宅生活を可能にする居住空間(バリアフリー化や手すり取り付け、トイレ・風呂改修等)の整備
高齢の親が認知症や身体の不自由によって介護が必要となった時、極力本人の自立ある生活を支えつつ、かつ家族への過剰な負担を和らげ一家が平穏を維持していくためには介護サービスの活用は極めて重要になります。
自宅ではどんな介護サービスが受けられるの?介護保険で受けられる「居宅サービス」には、下表の通り、「訪問型サービス」、「通所型サービス」、「短期滞在型サービス(ショートステイ)」、「福祉用具」、「住宅改修」等の区分により各種介護サービスや介護用具、住宅補修の支援制度が準備されています。
<「居宅サービス」の各種サービス>
「ホームヘルパー(介護職員初任者研修終了)」が自宅を訪問し、
「身体介護」(排せつ、食事、入浴など)や「生活援助」(調理、洗濯、買い物、掃除など)などの「日常生活の支援」を行う。
通院の移送等も可能。
なお、「医療行為」と「日常生活の範躊を超える介助」はできない。
「看護師」が自宅を訪問し、
医師の指示に基づいた療養上の世話や診療の補助を行う
「介護スタッフと看護師」が浴槽等を持ち込み、
自宅で入浴介助を行う
「理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門家」が自宅を訪問し、
日常生活の自立や心身の機能回復や維持のリハビリを行う
「施設」に通い、
食事や入浴などの日常生活の支援を受けたり、機能の維持・向上のための訓練を受けたりする
「病院や診療所、老人保健施設などの施設」に通い、
機能を維持・向上をするための訓練や日常生活の支援などを受ける
「一時的に」特別養護老人ホームなどに入居し
日常生活の支援や機能訓練などを受ける。
家 族の負担軽減に有効。
病院や介護老人保健施設などに 「一時的に」入居し、
医療や看護ケア、機能訓練などを受ける。
家族の負担軽減に有効。
介護サービスを受ける為には、前もって「介護認定」を受ける必要があります。
介護予防が必要と認められれば「要支援1〜2」が、自立支援のための介護が必要と認められれば「要介護1〜5」の認定が与えられます。
実際に介護サービスを受ける際は、ケアマネージャーと相談の上、ケアマネージャーが作成するケアプランに沿って各種サービスを受けることになります。
介護度7ランクの大まかな区分は?要支援及び要介護は、自立の困難度により下表の通り7ランクに区分されます。
「要支援1及び2」は、「食事や排泄等は自分でできるが、立ち上がりや歩行などの移動及び掃除などの日常生活にやや苦労するのでサポートが必要な状態です。要支援2は1より若干サポートがより必要な状態。 「要介護1〜5」は、身体機能や認知機能で日常生活に介助が必要な状態で、「要介護1〜2」は、何らかの介助が必要、「要介護3〜5」は、一人でできないことが多く、日常生活(食事、排泄、入浴、移動、更衣等)全般に介助が必要な状態です。 介護度により受けられる介護サービスの種類は? 「要支援1〜2」が受けられる介護サービス1)自宅でのサービス利用
介護予防訪問介護、介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護予防訪問看護、
2)施設に通って受けるサービス
介護予防通所リハビリテーション
3)短期間宿泊サービス
介護予防短期入所生活介護、介護予防短期入所療養介護
4)生活環境を整えるサービス
介護予防福祉用具貸与、特定介護予防福祉用具購入、介護予防住宅改修、
5)地域密着型サービスの一部
地域発行情報参照
「要介護1〜5」が受けられる介護サービス基本的には、上表で掲げた「居宅サービス」の全てが受けられます。
介護サービスは、原則「利用料の1割(高所得者は2〜3割も)負担」で受けられます!介護保険適用の介護サービスを受ける場合は、原則、利用料の1割が自己負担となります。
介護サービスには様々なものがありますが、介護保険が適用される介護サービスは、原則として本人負担は、利用料の1割となります。(残りは介護保険が負担します)
但し、高所得者は2〜3割負担
高所得者(現役並みの所得がある場合)は、 「年金収入とその他の合計所得額」 が下表の水準である場合に2割又は3割負担がとなります。
但し、あくまでも「介護サービスを受け乍らそれだけの収入(所得)がある人」です。
負担割合は、介護サービスを受ける為に認定を受けた際、その時の前年の年収で決定され「負担割合証」が送られてきます。
この「負担割合証」は、8月から翌年7月までの1年間を適用するもので、毎年実施される再認定時に合わせ、前年の所得によって負担割合証が送られてきます。
(「介護負担割合通知書」は毎年、7月に市区町村から送られてくる)
「2割負担、3割負担の基準表」
「年金収入そのほかの合計所得」と「世帯人数」により2割~3割負担が決まります。
2割負担 | 3割負担 | |
---|---|---|
単身世帯者
|
280万円以上340万円未満 | 340万円以上 |
夫婦世帯者
|
346万円以上463万円未満 | 463万円以上 |
つまり、介護サービスを受けなければならなくなった時に、その時の前年年収がサラリーマン世帯収入と同様の収入があれば2割~3割負担になる可能性があるということです。
要介護度に応じて介護サービスの月間に利用できる限度額が定められている! 受けられる介護サービス(給付)には様々なものがあり介護の必要度に応じて利用できますが、介護利用料は、受けるサービスの内容や密度(時間等)によって決まります。しかし、要介護度に応じて介護保険が適用される1か月の限度額が定められており、限度額までは1割(高所得者は2~3割)負担で受けられますが、それを超える部分は全額自己負担となります。
5万円が限度額である場合、月間5万円の介護サービスを受けても自己負担は5千円で済みますが、7万円使うと2万5千円の自己負担となり結局、35%もの自己負担となってしまいます。
もちろん、要介護度が高くなるとその分(サービスが必要になるので)限度額も高く設定されているので、その限度額までなら1割負担で済みます。
限度額が10万円であれば、10万円のサービスを受けても1万円で済みますが、15万円のサービスを受けると6万円の自己負担となり、40%もの自己負担割合となってしまいます。
従って、極力、限度額までで利用できる介護サービスの利用設計を考えましょう!
もちろん、介護の必要度や世帯構成の状況にもよりますが、
【要介護度別1か月の保険適用限度額と自己負担の計算方法】
要介護度 | 介護度認定の目安 (ニチイの介護サイト抜粋) |
限度額 | 自己負担額の計算方法 (1割負担の場合の計算法) |
要支援1 | 日常生活はほぽ自分でできるが、要介護状態予防の為に少し支援が必要(排泄、食事は自分でできるが、立ち上がり動作や掃除などの日常生活の一部にサポートが必要な状態) | 50,030円 | 限度内であれば1割負担で済むが、限度以上の利用料であれば、5003円+50030円を上回った額全額 |
要支援2 | 日常生活に支援が必要だが、要介護に至らずに機能が改善する可能性が高い(排泄、食事は自分でできるが、要支援1よりは、立ち上がりや歩行動作や掃除などの日常生活にサポートが必要な状態) | 104,730円 | 限度内であれば1割負担で済むが、限度以上の利用料であれば、10473円+104730円を上回った額全額 |
要介護1 | 立ち上がりや歩行が不安定。日常の中で、排泄や入浴などに部分的な介助が必要 | 166,920円 | 限度内であれば1割負担で済むが、限度以上の利用料であれば、16692円+166920円を上回った額全額 |
要介護2 | 自力での立ち上がりや歩行が困難。排泄、入浴などに一部又は全介助が必要 | 196160円 | 限度内であれば1割負担で済むが、限度以上の利用料であれば、19616円+196160円を上回った額全額 |
要介護3 | 立ち上がりや歩行などが自力ではできない。日常においても排泄、入浴、衣服の着脱など全面的な介助が必要 | 269,310円 | 限度内であれば1割負担で済むが、限度以上の利用料であれば、26931円+269310円を上回った額全額 |
要介護4 | 排泄、入浴、衣服の着脱など日常生活の全般において全面的な介助が必要。日常生活能力の低下がみられる | 308,060円 | 限度内であれば1割負担で済むが、限度以上の利用料であれば、30806円+308060円を上回った額全額 |
要介護5 | 日常生活全般において、全面的な介助が必要であり、意志の伝達も困難 | 360,650円 | 限度内であれば1割負担で済むが、限度以上の利用料であれば、36065円+360650円を上回った額全額 |
介護が必要となった時に、真っ先に気になるのは、「どんな在宅サービスを受ければ、何とか在宅のままで生活していけるのか?」、その「費用はどの程度になるのか?本人の年金でやっていけるのか?」といったことではないでしょうか?
要介護度別在宅介護サービスケアプランと自己負担のモデル例
要介護度別に、受ける在宅介護サービスの種類とその場合の自己負担額がどの程度になるかのモデル例を作ってみました。
あくまでもイメージを掴んでいただけることが狙いなので一般的なケアプラン設定にしました。
また各サービスには地域係数により多少地域差が生じますが、東京1級地の地域係数を用いています。
遠く離れたご両親が介護が必要となり、自宅で何とか生活を続けたい場合には極力在宅介護サービスを上手に利用されることが大変重要になります。
その際、在宅介護サービスにはどのくらいの費用が必要になり、年金生活者であるご両親は介護生活を年金でやっていけるのかが気になります。
要介護度別に限度額が設定されていますが、果たして限度内でうまく在宅介護サービスを利用して生活していけるのか心配ですね。
是非、これらモデルを参考に適切な介護サービスが受けられるよう見守ってあげましょう!
< 要支援1の在宅介護モデル >
要支援1で75歳の本人と夫(78歳、腰痛)との二人暮らしを想定 ・ケアプラン:週2回の介護予防訪問介護(生活援助が中心)と週1回のデイサービスを利用 ⇒ 介護サービス月間利用料総額は39,990円で上限の50,030円以内のため、自己負担額は1割の3,999円で済みます。 |
< 要介護1の在宅介護モデル >
要介護1で75歳の本人と夫(78歳、腰痛)との二人暮らしを想定 ・ケアプラン:訪問介護として週2回の自立支援と週2回の入浴介助のほかに週2回のデイサービスを利用 ⇒ 介護サービス月間利用料総額は135,807円で上限の166,920円以内のため、自己負担額は1割の13,576円で済みます。 |
< 要介護3の在宅介護モデル >
要介護3で75歳の本人と夫(78歳、腰痛)との二人暮らしを想定 ・ケアプラン:週4回の訪問介護と週1回の訪問看護のほかに週3回のデイサービスを利用、他にベッド、車椅子、歩行器のレンタルを利用。 ⇒ 介護サービス月間利用料総額は250,285円で上限の269,310円以内のため、自己負担額は1割の25,030円で済みます。 |
< 要介護5の在宅介護モデル >
要介護5で75歳の本人と夫(78歳、腰痛)との二人暮らしを想定 ・ケアプラン:週15回の訪問介護と週2回のデイサービス、さらに週1回の1泊2日のショートステイを利用、他にベッド、車椅子、エアマットのレンタル利用。 ⇒ 介護サービス月間利用料総額はショートステイ料金除きで401,507円と既に限度額360,650円を超過しているため、限度額の1割に相当する36,065円に限度額超過額40,857円を加算した76,922円が自己負担になります。 さらに、ショートステイ料金が全額が自己負担となるため、月間の自己負担分は10万円近くになりそうです。 |
この要介護5のモデルは、非常に重い介護の必要性がある状態を想定していますが、それでも「特別養護老人ホーム(特養)」による施設介護サービスよりは自己負担は安く済みます。
本人にとって自宅願望が強ければ何とか居宅サービスで生活していければ何よりですが、家族の協力がなければできません。
要介護5で自宅に居ながら各種サービスを受けるにも家族にかなりの負担が強いられるからです。
安心できる居宅介護サービスを受けていくためには介護が必要となり介護サービスに期待を寄せる者にとって、介護サービスの提供者の質や相性は、非常に重要な精神のよりどころとなります。
従って、的安心して居宅介護サービスを居宅介護で老後を安心して過ごしていくためには、地域に密着した生活基盤づくりが重要です。
特に年老いた親に介護の必要性が感じられ始めたら早めに考えをめぐらすことが重要だと考えます。
介護認定には子供が極力付き添いましょう!
介護認定は、市区町村の担当者の聞き取り調査がありますが、この際は極力、実際の日頃の親の実態を熟知している子供が立ち会うことをおすすめします。
年寄りは、聞き取り調査の主旨を解せず無理して介護の必要性を薄める対応をしがちになる処があります。
性格にもよりますが、自分はまだしっかりしているところを見せたがるようです。
これは、毎年の介護認定更新聞き取り時も同様です。
また、主治医にも意見書添付を求められますが、やはり、子どもが付き添い主治医により正確に記述してもらうべきです。
居宅介護支援事業所やケアマネージャー選定にも必ず子供が付き添いチェックしましょう!
介護認定を受けると、次は介護サービスを受ける為の「居宅介護支援事業所」及び「ケアマネージャー」の選定が非常に重要となります。
「居宅介護支援事業所」は市区町村の担当窓口や地域包括センターなどで紹介してくれますので、あせらずにじっくり信頼のできる事業所を選ぶべきです。
途中でも変えられますが、やはり最初が肝心です。
直接、事業所に出向くなり来てもらうなりして担当者から事業所の信頼性を確認しましょう。
また、その事業所がはけんするケアマネージャーの資質についても直接話を聞いて日頃の対応ぶりを確認しましょう。
これらは、必ず、子どもが直接立ち会って確認しましょう。それが後々効果が表れてきます。
実際に、介護が始まると、再々に亘って、状況確認やヘルパーの交代要請などが生じてくる可能性があります。
実際には、ケアマネージャーとのやり取りは子の役割になると考えてください。
親の状況に応じて介護サービスのチェックと必要なら変更を考えましょう!
数年経てば体の状況も変わっていきますので、状況にあった介護サービスへの変更も必要になります。
ケアマネージャーも時々チェックして連絡をくれますが、早めの対応に心がけましょう!
自宅生活を可能にする居住空間(バリアフリー化や手すり取り付け、トイレ・風呂改修等)の整備自宅介護を可能にするためには、要支援・要介護者の日常生活が容易になるよう居住空間の整備が不可欠になります。
要支援・要介護者の状況に合わせて床のバリアフリー化、玄関や風呂・トイレの段差があるところでの手すりの取り付け、トイレの洋式化等々の改善が必要であり、介護保険から出る住宅改修費(上限20万円)などを活用して整備しましょう。
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