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防衛省が広島県呉市にある、日本製鉄呉工場跡地について用地取得の検討に入ったと報道があります。
かつて呉海軍工廠製鋼部があった場所であり、戦艦大和の鋼鉄を供給した場所です。
図1 戦艦大和
引用wiki
防衛複合施設として広大な土地は魅力的ですが、下手をすると毒まんじゅう(不良債権)になりかねません。
軍転法と土壌汚染で、施設完成にはかなりの時間がかかるかも?
(前回記事):『 靖国参拝って毎年やってるやつやんけ!【海上自衛隊】 』
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(1)軍転法と毒まんじゅう
海自呉基地のすぐそばに広がる、日本製鉄呉工場跡地は施設として魅力的です。
図2 呉工場跡地
引用URL:https://stat.ameba.jp/user_images/20230904/13/poruporu2/81/cf/p/o0838076815333859751.png?caw=800
ただ軍転法の対象地域なので、すんなり取得できるか不安が残ります。
1.1 軍転法とは?
イメージとして、呉工場跡地を防衛省がすぐに取得して複合防衛施設建築が始まると思うかもしれません。
現実には、軍転法(旧軍港市転換法)により厄介な手続きが必要になります。
図3 海軍工廠跡地の呉製鉄所
引用URL:https://www.hiroshimapeacemedia.jp/blog/wp-content/uploads/2021/09/22f19d4ba73a12aa36d9e483140da422.jpg
軍転法は1950年(昭和25年)に制定されたもので、
(目的)
第一条 この法律は、旧軍港市(横須賀市、呉市、佐世保市及び舞鶴市をいう。以下同じ。)を平和産業港湾都市に転換することにより、平和日本実現の理想達成に寄与することを目的とする。
となっています。
現在でも有効な法律であり、旧海軍関連施設買収に立ちはだかる大きな障壁です。
1.2 財務省・県知事・市長の許可が必要!
日鉄呉工場跡地は民間施設ではありますが、この土地を防衛省に売る場合は軍転法による審議会で許可が求められます。
図4 佐世保新バース
引用:https://lfb.mof.go.jp/kantou/content/list/20210412.pdf
水陸機動団の隣りに建設することが決まった、佐世保基地の新しい岸壁も軍転法審議会を受けて防衛省が使用できるようになりました。
いったん国有地(財務省理財局)管轄となり、知事や市町村長の許可を受けるというかなり厄介な手続きがあります。
呉工場の場合は政府と県が積極的なので早期に土地供与が出来るかもしれませんが、10年単位で時間が経過してしまう可能性もあります。
1.3 問題は毒まんじゅう込みになる可能性も!
呉工場跡地利用については、情勢緊迫化と公共インフラ強化のため早期に進むかもしれません。
問題は、 毒まんじゅう(土地に瑕疵があるという比喩) が存在しても取得に動くかどうかです。
図5 工場解体
引用URL:https://jmd.ismcdn.jp/mwimgs/4/4/-/img_44fee3c1ae22447c8cbaf51179958b47154206.jpg
2023年に呉工場が閉鎖となり、すでに日本製鉄は解体工事に着手しています。
日本製鉄の計画では、10年をかけて解体する予定となっています。
解体途中でも、土地の早期取得・国が代理で解体工事を早急に実施するのが適切なのか?
土地の土壌汚染が見つかっても、日鉄側に損害請求せずに工事を行う覚悟があるかな?
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(2)海軍工廠の重金属汚染が出たら?
問題は呉工場跡地を取得した後に、海軍工廠時代の土壌汚染が判明した場合の対応です。
図6 土壌汚染
引用wiki
海軍工廠跡地は、土壌汚染されている前提で対策をする必要があります。
2.1 1895年(明治28年)からの操業
呉海軍工廠は、1889年(明治22年)に造船部が出来て1895年には海軍工廠として操業を開始しています。
図7 工廠内部写真
引用wiki
環境対策なんて考えていない時代から鋼鉄の製造を行っているため、どんな土壌汚染が起きているか分かりません。
製鉄所では加工工程にて、いろんな有毒物質が発生したり精錬のために使用をしています。
排液処理はかつて、海に垂れ流すのが当たり前でした。
2.2 地中から重金属が出たら最悪だぞ〜!
クロムなどの重金属は、製鉄工程にて重要な役割を果たしますが地中に漏れると大変です。
図8 クロム鉱石
引用wiki
ましてや海軍工廠跡地なら、何が埋まっていても不思議ではありません。
2.3 土壌改良で5年遅延なんて珍しくない!
現代では環境アセスメントで評価されるため、重金属などの汚染が有ったら汚染除去が求められます。
図9 豊洲市場土壌改善工事
引用URL:https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/toyosu/images/inquiry/images/img01.jpg
東京豊洲市場での、土壌汚染と改良工事でかなりの時間と苦労があったことが知られています。
最悪の場合は、呉工場跡地全部の土壌を地中深くまで総入れ替えすることにもなるでしょう。
工期が5年〜10年延長されて、工事費だけかかるお荷物敷地になる可能性もあります。
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(3)どこまで急ぐか?取得をあきらめるか?
日鉄呉工場跡地は広大な土地であり、防衛省にとっては夢の土地です。
しかしかなりのリスクを承知の上で、取得すべきか検討すべきでしょう。
3.1 有事に間に合うか?
2030年代までに予測される有事に間に合わせるため、一刻も早く防衛移設建築をしたいところです。
しかし土壌汚染などで、間に合わない場合も考慮しなくていけません。
防衛予算は無限ではないため、どこかで見切りをつける必要があります。
3.2 護衛艦ひゅうが流転の悲劇を繰り返すな!
海上自衛隊横須賀基地には、2010年(平成22年)に逸見岸壁が新設されました。
図10 逸見岸壁
引用wiki
本来ならば2009年(平成21年)の、護衛艦「ひゅうが」就役と同時に運用開始する予定でした。
しかし海底地形改良や土壌汚染改善で工期が伸び、護衛艦「ひゅうが」は1年ほど米軍基地に間借りする羽目になってしまいました。
アノ時の悲劇を繰り返してはいけないでしょう。
日鉄呉工場跡地取得に、十分な考慮が求められます!
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旧海軍敷地はホントに何が埋まっているか分からないので、呉工場跡地を取得した後に土壌汚染が判明しても日鉄責任なのか海軍責任(国の責任)なのか切り分けが難しいと考えます。
実体験として、横須賀開発隊群新庁舎建設の時に土壌汚染で大揉めになり土壌改良工事で完成が3年遅れになったことがあります。
かつて海軍横須賀工廠電池実験部があった場所は、戦後栄光学園という学校法人に売却されその後1970年代に再度海自が土地取得をした経緯があります。
建物が古くなり、1998年から新庁舎建設を始めた途端にクロムや硫酸タンクなど海軍時代の土壌汚染が地中から発見され大混乱になりました。
5年で建築する予定が、結局完成までに10年かかる結果となっています。
なかなか、土地取得と土壌汚染の問題はかなり厄介ですね〜。
今回のように日本製鉄という巨大企業が健在な中での売却であれば対応可能ですが、昔の工場の跡地を現在所有しているだけの個人地主等に土壌汚染対策の負担を求められたら担い切れない気がします
お話頂きました旧軍港市転換法の話しは自分も気になっておりました。呉製鉄所跡地程の広大な敷地を国防用途の為に再取得するのであれば、また、旧軍港都市の衰退が加速している令和の今日においては立法趣旨からみて法律自体の妥当性を国会で審議するのが本筋ではあると思います。防衛省や海上自衛隊側からは言えない話ですので悩ましいですね
何れにしても恙無く用地取得と土壌汚染対策、防衛施設整備が早期に実現することを祈ります
確かに呉基地の岸壁不足は深刻ですので、原材料や製品出荷に使っていた岸壁の先行利用が一番現実的でしょうね。
岸壁が使用できるだけでも、艦船運用や輸送艦・DDHの沖留が少なくなり乗員負担も軽減されます。
そのとおりで、迫りくる有事には間に合わないけど「その次」の有事を目標に着々と準備することが重要ですね。
軍転法はホントにニッチな法律なので、少しでも興味を持っていただけると幸いです。
陸自や空自には影響が無いのに、海自にだけ課せられた制約の理不尽さがよくわかりますよ〜!