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2018年08月23日
効率と柔軟性は両立しない
どちらを追うべきか?
20世紀初頭の1909年から1927年まで、
アメリカのフォード社は T型フォードを
モデル・チェンジなしに1500万台も
T型専用の生産整備で効率的に生産して、
アメリカのモータリゼーションを推し進めたといわれます。
ところが、次のA型にモデル・チェンジする際には
工場は半年間閉鎖、操業の完全再生まで
一年以上もかかりました。
生産システムにおいては、
効率性と柔軟性は両立しません。
これが 生産性のジレンマです。
アバナシー 氏は『 生産性のジレンマ 』で
製品のイノベーションと工程イノベーションに分け、
T型フォードのようなその時代の
支配的製品デザイン、 ドミナント・デザインの
出現によりイノベーションが 流動状態から
特化状態に移行するというモデルで説明しました。
生産システムは、
流動状態では柔軟だが非効率的、
特化状態では硬直的だが効率的というわけです。
ただ本当に硬直していたのは生産システムよりも
経営者ヘンリー・フォードのほうだったようです。
実際にはT型フォードはモデルチェンジを
繰り返していたのに「大衆のための不変の自動車」
という理念の為に、そのことを口にしませんでした。
T型の生産を停止した時でも、
T型は本当に売れないのか様子を見ていて、
A型の設計は全然できていなかったといわれています。
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2018年08月22日
複数の開発工程を同時並行で進める
リード・タイムの短縮化につながる
一般的に、製品開発は、いろいろな活動が順を追って
逐次行われているものだと思われがちです。
これを シーケンシャル・エンジニアリングともいうのですが
『 製品開発力 』によれば日本の自動車メーカーの
製品投入までにかかる リードタイムが
欧米のメーカーに比べるとずっと短く、
それは製品開発活動がかなり同時並行して
行われているからだと分かりました。
これを コンカレント・エンジニアリングと言います。
更に、シーケンシャル・エンジニアリングだと、
例えば、設計図面が完成してから、
実際に工場で生産を始めると
作業がしにくかったり、
新しい設備が必要になったりと
製造が難しいことが判明し、
結局、設計をやり直すというようなことが起こりえます。
開発段階から製造しやすい設計にする
デザイン・フォー・マニュファクチャリングを
考えるのであれば、
もっと早くから生産準備を始めて
設計者が設計している最中からやり取り
していればよいわけです。
このように、起こりうる問題を、
できるだけ早い段階から洗い出して、
できるだけ早期に解決する事を
フロント・ローディングと呼びます。
トヨタではSE活動と呼ばれている活動になります。
情報を移動するのにはコストがかかる
問題解決は「情報を持つ場所」で行うのがよい
製造現場と比べれば、製品開発は 問題解決活動でしょう。
では製造現場と離れたば場所で
製品開発をできるのでしょうか。
例えば自動車産業のように、
組み立てメーカーと部品メーカーに
分かれている場合です。
日本では、もともと部品の開発は
自動車メーカー側で行われ、
図面を部品メーカーに渡していました。
つまり、 貸与図方式だったわけです。
ところが部品の開発には、
どうしても部品を製造する
メーカー側の情報が必要です。
図面のようなものは簡単に移転できますが、
複雑であったり、製造ノウハウのような
暗黙知だったりする場合には
情報粘着性があるために簡単に移転できません。
移転してメーカー側で問題解決するよりは、
情報のある部品メーカー側に
開発側を移したほうが効率的と言えます。
開発段階から製造しやすい設計にする
デザイン・フォー・マニュファクチャリングも
容易になります。
こうして、 承認図方式にして、
製造と開発を一括して部品メーカーに
アウトソージングするようになったわけです。
もっとも、マサチューセッツ工科大学の
フォンヒッペル 氏は情報粘着性を
情報移転コストと定義したので、
これではトートロジーです。
後に スズランスキー 氏は、
情報移転の際の イベントフルネス(波乱度)で
情報粘着性を測定しようと提案しました。
2018年08月21日
何をどこまでオープンするか
オープンしすぎで失敗したIBM
家庭用VTRでVHS規格が
デファクト・スタンダードになったのは、
もう一つ大きな理由があります。
実は、日本ビクターはソニーと比べて市場地位が
低かったので、VHS規格を オープンにしたのです。
具体的にいえば、
他企業に規格の情報を無償で公開し、
普通なら門外不出の試作機まで、
他社に無償で貸し出しました。
他社はこのこのことがあったので、
VHS規格のVTRを作るのが容易になりました。
しかし規格はオープンにすればいい
というものではありません。
例えばウィンドウズパソコンは
IBM-PCの系列に属しますが、
これはパソコン参入に出遅れたIBMが、
パソコン市場に参入する際、
1981年に発表した規格です。
IBMはこの規格情報を積極的に
オープンしただけではなく、
部品の調達までオープンにしてしまいました。
そのおかげで、部品を買い集めてくるだけで
容易にIBM-PC互換機が作れるようになり、
多くのIBM-PC互換機メーカーが
パソコン市場に参入してきました。
その結果、IBM-PCはデファクト・スタンダードになり、
部品調達のオープン化で、
プロセッサを作るインテルや
OSを作るマイクロソフトは急成長しました。
しかし、IBM自体は2004年にPC部門を
レノボに売却してPC市場から撤退しました。