メアリー女王はスコットランド、エリザベス女王はイングランド。
実は、今我々がイギリスと呼ぶ国は、正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」。
それまでは、4つの王国「スコットランド」「イングランド」「ウェールズ」「北アイルランド」だったのが、1927年にひとつに統合された国なのです。
ちなみに、ラグビー国際組織の歴史より古いラグビー発祥の国イギリスでは、代表は伝統的にかつての王国ごとに出されているのです。
さてこの映画は、さらに時代を遡ること今から約400年ほど前の中世終盤のヨーロッパ。
スコットランドとイングランドが、別々の王国として覇権を争っていた頃の話です。
中世イギリスの二つの王国、二人の女王
この映画、原題は「Mary Queen of Scots」で、ストーリーの中心に据えられているのはスコットランド女王「メアリー・スチュアート」 (シアーシャ・ローナン) です。
もう1人の女王は、イングランド「エリザベス1世」 (マーゴット・ロビー) 。
どちらも、16世紀後半に実在した人物です。
従妹同士で、グレートブリテン島(現イギリスの一番大きな島)の北(スコットランド)と南(イングランド)に二分して君臨していました。
参考: シアーシャ・ローナン<Pinterest画像>
参考: シアーシャ・ローナン主演『ブルックリン』『レディ・バード』
参考: マーゴット・ロビー<Pinterest画像>
参考: マーゴット・ロビー出演『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
確執を生み出した、そもそもの歴史
(引用: https://www.facebook.com/MaryQueenMovie/ )
◇フランス王妃から出戻ったメアリー
もともとイングランド王国に生まれたメアリーは、幼い頃、国内の政変でフランス国王の元に匿われることに。後に王太子フランソワと結婚、その後フランス王妃となります。
一方、イングランドでは、メアリーが出て間もなくエリザベス一世が女王に即位。
しかし、当時からメアリーを支えてきた人たちは、エリザベスが正統な女王でないことを主張していました。
しばらく、フランス王妃だったメアリーですが、国王フランソワが急死。
子供がなかったメアリーが出戻ったのがスコットランドでした。
一方、イングランド国内でもエリザベスの王位継承が不当であることを主張する貴族が多く、二人の女王を巡って、両国の策略合戦が始まることになります。
◇したたかなメアリーの結婚と出産
映画では、強くてしたたかなメアリーが描かれています。
イングランドに比べ、どうしても劣勢にあったスコットランド。
しかし、イングランドから仕掛けられた戦争にも先頭に立ち、部下を鼓舞して打ち負かすシーンはなかなかの見ものです。
また、彼女は政略的な結婚を貴族のレノックス伯マシューから持ち掛けられます。
相手は、彼の息子であるダーンリー卿ヘンリーでした。
エリザベスに子どもができないことを知っていたメアリーは、絶好の機会としてヘンリーと結婚。
好きでもない男と、妊娠が目的だけの行為に及ぶ姿がリアルです。
◇女王を取り巻く男たちの政略
二人の女王同士の確執の一方で、事をもっと複雑にしているのは、それぞれに仕える政治顧問や貴族などの政略でした。
一見、女王に仕えているかのようですが実は、女王を通じて政治的な介入を企んだり、宮廷の中で自分の立場を誇示する輩ばかりだったのです。
メアリーがスコットランドに帰った時、彼女の後見人となった異母兄のマリ伯ジェームズ。
また、ことある度にメアリーに寄り添い忠実に警護を果たすボスウェル伯。
彼らを信頼していたメアリーですが、結局、裏切られてしまう過程が哀れです。
メアリーがエリザベスに仕掛けた提案とは?
夫ヘンリーを、種馬同然にしか扱わなかったメアリー。
その結果、待ち望んだ男の子「ジョージア」が誕生します。メアリーは一計を案じ、ジョージアに夢を託したのです。
しかし、その方法は想像を超えたものでした。
これを異常というのか、いや、王位の継承や家系を繋ぐためならあり得る知恵なのか、なんと我が子ジョージアを、王子としてエリザベスに譲ることを画策したのです。
クライマックスでは、メアリーとエリザベスは秘密裡に会います。
メアリーがエリザベスに何を伝えようとしたのか、エリザベスはどう答えたのか…。
歴史的な事実から言うと、数年後、メアリーはエリザベス暗殺の謀議を図った罪で斬首されてしまうのでした。
オランダの画家(作者未詳)が1613年に描いたメアリー1世処刑の場面
(引用: https://ja.wikipedia.org/wiki/ メアリー_(スコットランド女王))
まとめと感想
メアリーの死後の、スコットランドとイングランドです。
その後、両国をはじめて一つの国にした人物がいました。それは、なんとメアリーの子供ジョージアです。
あれから約400年後の現代において、スコットランドがイギリスからの独立を選挙で問うているのを聞くと、イギリスという国の難しさを今さら感じざるを得ません。
イギリスの歴史が垣間見える ★★★★☆
イギリス皇室は映画になりやすい ★★★★★
参考: 英国王室映画『女王陛下のお気に入り』
女王を取り巻く男はあんなのばかり? ★★★★☆
初々しいだけだったシアーシャ・ローナンが成長 ★★★★☆
マーゴット・ロビーの白塗りは見たくない ★★★★★
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