4月28日(巡礼28日目) Acebo アセボ 〜 Ponferrada ポンフェラーダ (16.5km)
カミーノでは、たとえ一人で歩いていようとも、いくつかの貴重な出会いがあるはずだ。
それは、誰にでも用意されているものだと思う。
山中にはこんな石で作られた矢印やハートなどもあって、旅人の心に暖かい風を運んでくれる。
どれだけ他人との接触を避けて歩こうとも、いつか出会いは訪れる。
そんな奇跡のような出会いをいくつか経験したカミーノだったが、カルロスとの出会いも、この後の私のスペイン滞在を大きく変えることとなった。
打ち捨てられた古い家屋が昔を物語る。イラゴ峠付近には廃村が多い。古い小屋の前でじっと佇む子ヤギたち。こんな時の止まったような古い村では、神の化身のように見えてしまう。
アセボを出て山道を下っている途中、私は一人のスペイン人男性に出会った。
彼は私を見るなり小さな目を真ん丸にして期待をこめた眼差しで、日本人かと尋ねた。
イエスと答えると、なんと彼はいきなり小躍りし始めるではないか。ヤッター! とでも叫んでいるような勢いでその場で手を挙げてくるくると回りながら何やらスペイン語で歓声を上げた。
彼、カルロスは日本語を勉強中のスペイン人で、日本人に会いたかったのに今まで会ったのはコリアンか中国人ばかり。
ところがこの日、念願の日本人に初めて出会えたので、ついにキターっ!! とばかりに快哉を叫んだのだという。
次の町モリーナセカのバルで、一緒に歩いているという彼の兄と休憩しているカルロスと再び会い、その後も足を痛めて休んでいる彼に追いつき、一緒にポンフェラーダの街に入った。
日本語を勉強中とはいえまだ始めたばかりなので、単語レベルしか喋れず二人の会話は主に英語だったものの、彼は巡礼が終わったらぜひサンティアゴ・デ・コンポステラからほど近いヴィゴの彼の家に泊まってほしい、と招待してくれた。
この後、彼が残した「がんばれ、よーこさん」のメッセージを見つけた時は勇気付けられた。
マジックで道路標識の横などに日本語のひらがなで書かれているのだが、私の名前の正確な発音と「は」がわからなかったらしく「がんげれ、よこさん」という奇妙な日本語になっていたのは微笑ましかった。
そしてサンティアゴ到着後、飛行機の日程に余裕のあった私は、ポルトへ行く途中に位置するヴィゴに立ち寄り、カルロス一家から三日間の歓待を受けることになる。