それは、ある槍の物語。ある男の手に渡った、ある槍の物語。男は知らなかった。自身の刻に終わりが近付いていることを。槍は知っていた。男の刻に終わりが近付いていることを。
男は愛していた。その槍を振るう度に鳴る儚くも美しい音色を。そして槍はなき続けた。男に終わりを告げようと。いつしか男は息絶えた。激しい戦場で愛する槍の音が鳴り響く中。
それは、終わりの物語。ある男の刻が終わった物語。冷えた肉塊になってしまった男の横で、槍は568番目の持ち主の死を、ただ静かに嘆き哀しんだ。
槍は次の持ち主を待っている。持ち主の命が失われる終焉の刻に、再びその美しい音色を鳴らす日を。永遠に続く刻の中で、幾度となく終わりを見てきた槍は今も待ち続けている。
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2016年02月11日
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