唐揚げを食べてて右下の奥歯が陥没する。
なので観念して銀歯にすべく歯医者に通うことになった。
なんの因果なのか、歯医者が往復距離にしてどん兵衛が食べ頃の所にある。
素晴らしい。
綺麗な院内、可愛い歯科衛生士のお姉さん。
素晴らしい。
最初の問診でお姉さんの脚がなぜか90度に開かれている。
素晴らしい。
しかし、あからさまにガン見をすれば診察台で仰向けにされた時に言い訳無用の男のサガが牙を剥くだろう。
目を閉じて心の中で必死にお経を唱えて平常心を保つ。
レントゲンを撮るために小さなレントゲン室へ。
顎全体のレントゲンを撮り終えたあと、治療する歯の局所的なレントゲンを撮るため壁際に備え付けの椅子に促される。
「失礼します〜」
エプロンを掛けるために正面から抱き付くように腕を首にまわしてくる。
素晴らしい。
てか座る前にエプロンした方がよくないか?
あまりに近すぎるためにお姉さんの温度が伝わってくる。
またしてもこれは診察台で仰向けにされた時に言い訳無用の男のサガが牙を剥くだろう。
目を閉じて心の中で必死にお経を唱えて平常心を保つ。
歯の治療に来たはずやのに来る店を違えたんやろか?
なんてささやかな疑問をよそにアインシュタインのような先生が登場。
…。
…やっぱりな、なんて妙に冷めた気持ちで問診に答えて治療へ。
あんぐりと大口を広げて麻酔を打ち、頃合いを見計らって歯を削りだす。
「30代の成人男性の場合、麻酔が効きにくいですから痛かったら手を挙げてくださいね。僕もねぇ、大学の先輩に麻酔を6本も打たれて死にそうでしたよ〜」
(なっ!!治療中にそんな情報いらんちゅうねんっ!!)
チュイイーン!!
人の心配をよそにアインシュタイン先生は彫刻家の如く歯を削る。
チュイイーン!!
歯の外壁を削り一気に神経へ。
チュイイーン!!
(アガガガガガガ!!!痛い痛い痛いっ!!!!!)
あまりの痛みに堪らず手を挙げる。
チュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!
(無視かいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!)
数分後。
診察台でぐったりする僕に「大丈夫ですかぁ〜?」と吐息を感じる距離で声を掛けてくるお姉さん。
「…ハイ」
そう答えて、目を閉じ、心の中で必死にお経を唱える。
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