つい先日、英国の名門大学に通う学生がユーチューブ(動画投稿サイト)にアップした動画が話題になっている。この英国人学生は韓国の修能に出た英語の問題が解けずに悩んでいるという。
ケンブリッジ大学で言語学を専攻するこの学生は、修能の英語問題について「日常生活でまず使われることのない単語や表現が出題されている」「自分には到底理解できない」などと語った。この学生はさらに「私が使う英語とは違う英語だ。外国語のようだ」とも話した。この動画は、韓国の英語教育がいかに日常における実際の英語と懸け離れているかを物語っている。
ところが韓国の受験生たちはこの種の問題をさほど難しいとは考えていない。昨年の修能英語で満点を取った受験生は1万9654人、全体の3.37%に達した。もちろん受験生たちが英語の勉強に熱心に取り組んだからともいえるが、実は「修能EBS連携政策」について知っていれば、誰でもその単純なからくりが理解できるはずだ。
2010年から施行されている修能EBS(教育放送)連携政策は、最初は一種の私教育対策として始められた。修能の70%をEBS教材から出題すれば、生徒たちは塾などに通わなくなると考えられたのだ。この政策によって私教育をどれだけ減らせたかは分からないが、英語教育に関しては一つのおかしな現象が起こった。EBS教材の英文を韓国語に訳したテキストが生徒たちの間で一気に広がり、中には「英語の勉強はこのテキストの暗記になった」と口にする生徒たちも出始めたのだ。しかし後に「これでは英語の勉強にならない」という指摘が相次いだことを受け、政府は「今年からEBS教材の文章はそのまま出題しない」と発表した。
英語教育の改善を求める声は以前から何度も出ていた。2008年に李明博(イ・ミョンバク)政権が発足した際、政府は「実用英語」を英語教育のスローガンに掲げた。発音、リスニング、英作文、読解の全てを評価する高校生向けの「韓国型TOEFL(国家英語能力評価試験)」の制度を立ち上げ、これを大学入試に活用する計画も同時に発表された。ところが13年の初めに政府はこの政策を次の政権に押し付け、次の朴槿恵(パク・クンヘ)政権は完全に白紙化した。「準備が不十分」だとか「地域ごとに格差が大きい」というのが理由だったが、その一方で「多少時間がかかっても、最後まで定着させるべきだった」という指摘も相次いでいる。いずれにしても「韓国型TOEFL」の開発に要した370億ウォン(約39億円)の予算は無駄になった。その後、英語教育は再び文法と読解中心に逆戻りし、英国の大学生が「外国語のようだ」と感じるような英語の問題に、韓国の受験生たちは再び取り組むようになったのだ。
今日は受験生たちが遅刻しないよう公共交通機関の混雑を緩和するため、会社では仕事を始める時間が遅くなり、警察官は夜明けから特別体制で交通整理に追われている。またこの日は受験生の家族はもちろん、社会全体がじっと静かに過ごすだろう。「世界で最も教育熱の高い国」の様子が再び海外で報じられるかもしれない。ところがわれわれ大人たちは、大学を卒業した後も自分の意思さえ表現できないような英語教育しか受けられず、それが韓国では何十年も続いてきた。間違いなくどこかがおかしい。しかしこの国ではそれを正すよう求める声も出ないし、また誰も努力しようとさえしない。
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