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第02話-7
ロディの機転(横暴)で助かったものの、さすがにギアを使って遺跡をこれ以上破壊するわけにはいかない
・・入り口の様子を見に行っていたリィズが戻ってくると、騒ぎ立てていたS.G隊員一同がびっ!・・と敬礼を決める
彼女も軽く手慣れた様子で敬礼するとテントに入り、一人だけ離れた席に座る
「さて・・話はどうまとまったのかしら?」
「それが再調査どころじゃないかもしれないんですよ、リィズさん」
シュウは手元の資料に左から右へ目を通しながら、彼女の方は向かずに言った
・・はぁ?・・と疑問の声をあげそうなリィズに、一部始終を聞いていたラルフが耳打ちする
「・・最後の審判(ラスト・ジャッジメント)・・・???」
「はい、遺跡の最終防御システムらしいんですが・・どうも隊長がその引き金を引いてしまったらしくて」
「な、なんであたしがっ!?・・そりゃ確かに「礼拝堂」で最初にミスしたのはあたしだけど・・」
リィズは最後の方を小さく言いながら、自分のその、ふくよかな胸に手を置いて考えてみる
・・遺跡のセキュリティは全然動いていなかった(むしろ死んでいた)
唯一生きていた礼拝堂の端末を操作しようとして彼女は・・・
・・ぶっ叩いたのよね・・
文字が読めない事に腹を立てて、「どがっ!!」と力の限り
おかげで遺跡の防御機能が再動してしまい、あのような事態になったのだ
「・・でも、どうしてそんなの分かるのよ?」
「私が知っているからです。」
席を立ち、挙手するガンマ
リィズは・・「なんだ、この一つ目の怪しいIFRは」・・という偏見の目を向ける
「私はここが「遺跡」になる前からのデータを持っています・・ここは当時あった大戦で「最後の砦」として使われていたのです」
「・・・大戦?」
・
・
・・以下・省略(自己紹介からメイに話したこと、それと大戦の長い長い歴史)
・
・
「で、結局大きな戦争のおかげで文明崩壊。月の要塞もすっかり荒れ果てたただの「遺跡」扱いと・・」
月は大戦で使われていた要塞の跡地だというのだ。
・・デス・スターもびっくりだな
ロディはそんな事を考えながら、ダースなんとかの、あのテーマを口笛で吹いていた
##########################################
「ともかく・・最後の審判って何が起きるのよ?」
「要塞攻略の最終兵器・・コードネームは「アークエンジェル」とだけ」
「隊長・・そんなこんなの間にあれはなんでしょうか?」
「・・何よ」
一人の隊員の怯えきった声に、リィズは面白くないような顔でテントの外に出る
「うそん」
出た瞬間、怯える隊員と同じく凍り付いている彼女の姿があった
一同は次々と外へ出て・・その光景を目にする
ついに、ロディ達ユニオンの皆も外へ出てみた
「・・・アレハナンデスカ??」
思わずカタコトになるロディ
大気が薄いせいか青くはない空に・・・
巨大な巨大な・・・とっても巨大な「天使の羽」が出現していた
「アークエンジェルってあれの事・・?」
「うわーっ・・でっかーい・・・」
セラは呆然、メイはやや嬉しそうにつぶやいた
「・・動いてしまったか」
ガンマは事を察したように言うと、ロディとリィズに言う
「あのガーディアンが当時のスペック通りならば「装甲は並み居る攻撃全てを打ち砕き、その目は全てを貫く光を放ち、そしてその一撃は星をも砕く・・」
「あんですとぉっ!?」
同時に大声で叫ぶ社長&隊長
「・・っとなりゃ行くしかねぇだろ!!」
「食い止めないと地球が危機って事ね!」
ロディは外で、膝をつく形で置いてあったゼファーのコクピットに滑り込む
リィズはS.G隊員に指示を出し、すぐに配備されていたギア全てを集結させた
『でも待てよ・・?アレって地球を守るためにあるガーディアンなんだろ・・?』
「・・はい、しかし・・果たして今の地球を当時と同じに認識できるかどうか・・敵と間違えないといいのですが」
『コンピューターがそんなに誤認するもんかよ、ボケたジジイじゃあるまいし・・・・』
どぉぉぉ・・
地球の方を向いていた「アークエンジェル」が突然ミサイルを十数発もぶっ放したのは、まさにその瞬間だった
・・全員の頬を汗が伝う
「ロディさん、これって誤認してますよね?」
『急いで止めろっ!!』
「止められるんですか?」
『止めるんだよ!・・メイ!』
「う、うん!」
メイはゼファーから聞こえてくるロディの声にせかされて、腰のポーチからナビを取り出す
折りたたみ式携帯電話のようになったナビを、地面に向けて・・銃のように構えてトリガーを引く
「じぃえいちないんてぃないん・ドーマぁ!・・コールっ!!」
ゼファーの場合とは違うパターン・・子供のラクガキのような簡素な幾何学模様が地面に展開する
そこからは白い・・しかし、緑を基調とした彼女の機体、「ドーマ」が出現した
ロディの真似をして肩に飛び乗り・・危うく落ちそうになりながらコクピットに飛び込むメイ
『音声チェック、パイロットネームをどうぞ』
ドーマの「OS」がメイにいつものように問いかける
車のようにキーを必要とするゼファーに対し、ドーマは最新鋭OSのおかげで手の動作なしに起動できる
「メイナード=リィオン、じゅういっさい!」
年齢まで言う必要はないのに、彼女は癖でこう言っている
OSはすぐにメイのデータを画面に表示し、頭部のモノアイを起動する
『ロディ、どーするの?』
『・・とりあえず突っ込んでみる!援護しろ!!』
『ふぇぇぇ!?そんな!?危ないよ~っっ!!』
ゼファーはどかどかと突っ走り、一定距離を走り終わると脚部裏のキャタピラを高速回転させた
・・ぎぃぃぃぃぃぃ・・・
モーターの音が響き、ゼファーは走っていた時の三倍もの速さでアークエンジェルに突っ込んでいく
目標は地球の方を向いていて、こちらには気付いていない
『ものは試しっ!!・・サイホイール起動!』
ゼファーの右腕から、円盤状のパーツが分離する
左手でそれを掴み、高速走行のままサイドスローで勢いよく投げ飛ばす
円盤はフリスビーのように・・回転を速めながらアークエンジェルに迫る
・・どん・・っ・・・・
『はっ!?』
しかし、円盤はアークエンジェルに当たる直前で「爆発」してしまった
『どーいう事だシュウ!?サイホイールが消滅・・・』
「ええとですね・・アレはまぁ、ピンポイントで張れる「相干渉バリア」のようなものでしょう。」
「触れたものはみーんな「相殺して消しちゃう」ってことにゃね」
『・・・面倒な相手だな~・・』
しかしゼファーは相変わらずスピードを上げ続けている
多少整備されているとはいえ起伏の多い月面を、機体は何の引っかかりもなく走り続けていた
・・やがて、機体はアークエンジェルめがけて飛び上がる
『俺の「根性」!!・・・・受け取れぇぇぇぇぇぇ!!!!!!』
飛び上がる瞬間、ゼファーの目が緑色から・・淡い、青系の色に変わる
・・きぃぃぃぃぃ・・と咆吼するやいなや、右腕に展開したレーザーブレードは機体の四倍・・オーバーなまでに伸びる
精神力をエネルギーに変換するシステム・・シュウが解析に成功した遺跡の技術「ロストテクノロジィ」を応用したもの
ロディの場合はこれを「根性」と表現しているが、パイロットが熱血バカならば、このシステムの出力も上がり・・
『うぅおぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!』
ゼファーの跳躍力を五倍近くに高めたり、レーザーブレードの長さを四倍に伸ばしたり・・という事もできる
そしてエネルギーはパイロットの精神力のみに委ねられ、まさにパイロットと
「人機一体」
となる
・・ばぢぃぃぃぃっ!!
レーザーブレードがアークエンジェルの展開した相干渉バリアに当たる
バリアに触れたレーザーが次々に相殺され、阻まれてしまい・・ゼファーの攻撃は本体に届かない
『っ!!!・・・最大出力だ相棒!!・・相干渉だろうがなんだろうが、お前に切れない物はなぁぁいっ!!』
・・きぃぃぃぃ・・・
人工知能の類は積み込まれていないのだが、ゼファーは意志があるかのごとくロディに呼応し、レーザーブレードの出力を上げる
最大発振のレーザーブレードはついにその長さをアークエンジェルと同じにまでしていた
##########################################
『え、援護の意味ないじゃんっ!!』
メイは一応さっきからアークエンジェルを狙撃していたのだが、ドーマのレーザーキャノンは全然効いていないらしい
・・当然か。
シュウはドーマを眺めながら、無駄なその行動を止めようとはしなかった
「第8小隊前へ!」
そこへリィズの指揮する「第8特別実験小隊」がダークブルーの量産型ギア「G-H/SG-7(通称7式)」12機と共に現れた
周囲の隊員が待避すると、小隊のギアは一斉にライフルを構え・・
・・たその直後に、風が吹いた
びゅ・・・
『うわぁぁぁぁぁぁっ!?』
ラルフ達パイロットの絶叫が響き渡る
風かと思われたそれは、よく見るとエネルギーの「障壁」のようなもの・・
一瞬にして12機ものギアをなぎ払い、戦闘不能にしてしまった
「ちょ・・ラルフ!?みんな!!生きてる!?」
・・やや、間があく
『は、はい・・全員かろうじて・・・』
『何ですか今のは!?』
「・・大天使様からの攻撃ですよ」
リィズの後ろにいつの間にか現れたシュウが、これまたいつの間に記録したのか先ほどの瞬間の映像を見せて言う
確かに、アークエンジェルの方角に・・そのエネルギーの発信点が見えた
「・・あたしら・・もう出番終わり?」
「じゃあ歩兵として戦いますか?あれと」
「・・・・・・」
リィズはがっくり、肩を落として・・シュウがそれを慰めるかのように、肩をぽん、と叩いた
サクラはその横でネス、シードと共にゼファーの状況を伺っている
セラはテントの外でメイに叫んでいた
「お姉ちゃん!さっきみたいのが来たらやられちゃうよ~っ!!」
『・・うん・・危ないよね?』
半ば呆然とした様子のメイ
先ほどの一撃は、結構ショックだったらしい。
「・・ゼファーもダメダメみたいにょん。」
モニターの中でゼファーはレーザーブレードを最大出力のまま振り回しているが・・全然歯が立たない
「こりゃロディちょんもつらいでしょーねー」
後ろではネスとシードがはらはらしながらモニターを見ているのだが、サクラは飴玉をなめながらほおづえついて見てる始末
・・緊迫感がまるでない
「仕方ありませんな・・彼に頼るとしましょう」
『彼?・・・ガンマのお友達ってそんなに強いの?』
「・・ええ、まぁ・・あの機体の兄弟みたいなものですからね」
「はい?」
皆が揃ってぱちくり、と瞬きをする
ガンマはすたすたとドーマの前くらいに立つと言った
「ご主人、機体をお下げください」
『う・・うんっ!』
何が始まるのかわくわくし始めるメイ
ガンマは右腕を上に上げた
その円筒形の腕から四つの四角いブロックが飛び出し・・レンズのようなものが展開される
「・・・NAME G-D/88
"DESTROY"
」
小さなつぶやき・・その名を呼ぶやいなや、ガンマの腕のレンズが空に向かって四つの赤い光の柱を立てる
「COLL HERE!!」
大きく叫ぶとその腕を地面に突き立て・・・
・・地割れが起きた
月が真っ二つになってしまうのではないか、と思わせるほどの、大きな亀裂が地面にできあがる
ついに、地面が割れてしまい・・ガンマはそこへ吸い込まれるように落ちていく
『ガンマっ!?』
「待って!・・なにか・・上がってくるよ!?」
・・それは巨大な・・・とにかく巨大としか表現のできない、機動兵器だった。
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