理想。

「パパは毎日会社に行って、休みの日は家族サービス。
ママは優しくて、毎日美味しい料理やお菓子を作ってくれて。」

こんな絵に描いた様な、いわゆる理想と言われる家族が、現実世界のどこにいるのだろう。

少なくともそれは我が家の風景ではなかった。

父親は一緒に住んでいるのかいないのか、毎晩帰ってくるのか来ないのか分からない。
母親は家事・育児・仕事で疲れ切り、おまけに当てにならない旦那を持ってしまいイライラする毎日。

そしてそんな母親のやり場のない怒りの矛先は・・・私。

怒られない日なんてなかった。
手を上げられない日の方が珍しかった。

自分で何をしたのか、悪い事をしたのかさえ分からない。
理由なんて何でも良かった。

返事の仕方が気に入らない、話し方が気に入らない、仕草が気に入らない・・・。

そんな理由を付けては、躾という名で暴力を振るう。

そんな母親が私は大嫌いだった。

そして、そんな事すら知らず、家にさえ帰って来ない、何もしてくれない、助けてくれない父親が大嫌いだった。

あるのは両親に対する憎しみと、怒りと、絶望感と・・・。

自分は必要のない人間なんだという気持ち、消えてしまいたいと思う気持ち。こんな家から早く出てしまいたいという気持ち、こんな大人には、親には、絶対にならないという気持ち・・・。

反発しかなかった。
でもそれを態度に出す事も、ましてや口に出す事も許されない。

毎日ビクビクしながら生活して、毎日親の顔色ばかり窺がって生活する日々。

学校にいる時間、習い事に行っている時間、友達と遊んでいる時間・・・。

唯一の楽しみであり、自由な時間だった。

こんな事が今後のきりの色んな部分に結びついてトラウマになり、変えられない価値観や考え方、性格を作り出して行く。





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