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2017年の旅行記　ニューカレドニア(2月)　クラビ(9月)

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小野田坂道は千葉県の総北高校の1年生。毎週ママチャリで秋葉原に通うアニメが大好きな気弱な少年が仲間と出会い自転車競技部に入部。試練を乗り越え才能を開花させていく......原作、渡辺航の自転車ロードレース漫画。

☆前のお話は　

第1話「アキバにタダでいけるから」第2話「部員をふやすため」

第3話　「僕は友達いないから」

「レースはまだ終わっていない。絶対、今泉君に追いつくんだ」

再び坂を登る坂道。今泉はゆっくり坂を昇っていた。

「早く昇ってこい。おれは、もう一度みてみたいんだ。あいつのペダリングを」

車でふたりの後を追いながら、坂道のペダリングは特徴的だから、今泉もじっくり見たいと思っているはずと話す幹と兄。今泉は考えていた。

『あいつのペダリングの秘密は、体重をのせた踏込みでもなければ、立ちこぎでも、ダンシングでもない。さっき抜くときに確認した、あいつの乗り方は、ペダルの回転数、ケイデンスにある。経験もなく練習もしていない、まったくのド素人のあいつの力を見極めてやる』

サドルを上げただけで、ぜんぜん違うと気づいた坂道は、これなら追いついて、勝って、アニ研の部員を増やせるかもと思った。今泉に追いつくが、また離される。素人にしては、よくやったから、いいぞと今泉は突き放す。しかし坂道は再び追いついてきた。

「こげばこぐほど進むのって、楽しいですね。今泉君」

坂道が追いついてくるのを待っていた今泉だが、くいついてくる坂道に驚く。坂道のママチャリのフロントギアは、かなり小さい。子供が遠くまで行けないように細工したか。坂道に並ばれ、冗談じゃないと本気になった今泉は、振り子ダンシング。離された坂道は、

『頭の中、真っ白なのに、からだは苦しいのに、なんでだろう。ぼくは今、どうしても今泉君に追いつきたい』

差が縮まった。その様子を自転車競技部の面々が上から見ていた。残りわずか、毎週アキバまでと言ったが、自分は毎日その距離を走っている。練習量が違う。

先に出た今泉だが、溝蓋の隙間に前輪をとられる。立て直したが、失速している間に、坂道が完全に並んだ。

三度もちぎって、差を見せつけた。普通ならバトルは終わっているはずなのに。息は上がりまくって、それでも追いつこうとする坂道。

「なんで、そこまで追いかけて来るんだ?」

「ぼくは、どうしても、アニ研つくりたいだけなんです。ぼくは、友達いないから」

今泉が先にゴール。倒れこむ坂道に駆け寄る幹と兄。勝負に負けてがっかりする坂道に幹は、あの自転車であれだけ走れるのはすごい。しかもあのギアでと言う。ギアが小さいと進まないしスピードが出ない。親御さんが細工したんだろうという幹の兄の言葉に坂道は、気づいた。

そういえば、中学の時、母が修理しておいたという自転車、アキバに行こうとしたら、なかなか進まなかった。あの時だ。それでも坂道は、まあいいか、とアキバに自転車で行った。

この自転車でアキバまで毎週行っていたなんてすごいと幹。しかも、今泉に本気を出させるとはと兄。あいつ、面白い登りをしていたなと自転車競技部の3年生たちも話していた。走りは完全にド素人だが......

翌日、サイクルコンピュータを返す坂道。今泉は、安物だからやると言う。

「それより、おまえ、自転車競技部に入らないか」

なんでとたずねる坂道に、今泉は、無理にとは言わないが、実力はまだまだだが、おまえはペダリングがきれいだ。伸びる可能性がある。自分も来週から本格的に参加することにしたと話す。

「すごく、うれしいです。ほんとに、ぼく、そういう褒められることないから。でも......」

運動部は苦手な坂道。今泉は、無理にとは言わない。自分で決めていい「おまえは、おまえの道を行けば」と言う。そして、同じ中学から来た人たちに、アニ研のこと、一応、声をかけておいたと言った。

「増えるといいな」と言って今泉はトイレへ。見ていた生徒が、あんなにしゃべっている今泉を見たのは初めてだと言い、坂道をすごいなと言う。坂道は、

「今泉君は、優しくて気さくで、とってもいい人です」

今日もアキバへ向かう坂道。今泉にもらったサイコンと幹に上げてもらったサドルで、アキバへの道のりが早く感じられる。すごく快適だ。でも、今泉君と登ったあの坂、なんだか、すごく楽しかった。ラブヒメを歌いながら自転車を走らせる坂道。アキバに着いた。今日は新記録かも。

自転車を停めた坂道に、地味な自転車だなと声をかける大阪弁の少年。

「でも、使い込まれたグリップ、すり減ったペダル、整備されたブレーキ、適切なサドルポジション。おまえ、ええチャリ乗っとるな」

☆次回　「鳴子章吉」

【感想】

・「僕は友達いないから」今泉君も、イケメンだけど友達いない人かな。それにしても、坂道君のママチャリ、サドルの高さを変えていなかっただけでなく、細工までしてありましたか。結果、クライマーを作ってしまったかな。それに、今泉君は練習量が違うと言っていたけど、坂道君の家って、裏門坂に負けないくらいの坂道でしたね。

・おお、派手好きな大阪男の登場ですね。今泉君もいい人みたいだし、この人も面白そうだし、続き楽しみです。