銀の鬣●ginnotategami

銀の鬣●ginnotategami

「12年前と同じこと、違うこと」


『あら、』


ABCストアで振向いた彼女

相変わらず茶髪でストレートの長い髪



「久し振りだなあ、元気だった?」


我ながら、マヌケな返事、

一番忘れたかったのに、忘れられなかった



『ちょい更けた?』

「お互い様だろう」

『あっ、こっちが長男の健哉、こっちは次男の雅哉』

「結婚したんだ」



当たり前のことを聞くなよ。見りゃ分かる。

不良少女だった。ヒモ男にだまされており、

手を切らせるために、危ない橋も渡った。

やがて、ミイラ取りがミイラになった。



『あの頃、楽しかったね』

「いつも、怒ってたくせに」



待ち合わせに来ない。連絡もない。

独りぼっちの記念日

俺、怖かったから



『あなたのお陰、いまの私があるの』

「お陰、俺のお陰で苦しめた」



絶対に重荷にならないから、

ただ、好きでいてこれることが、嬉しいから

そんな訳、ないだろ。

意を決して〈お前とはただの遊びだよ〉と言った。



『ピンクのネクタイなんて、相変わらずね』

「精一杯の、若作りって やつだな」



元気でな、ヒドイ俺やったけど、

幸せにな、今でも・・・・だから

別れ際、振り返って、彼女は言った。



『上の子、誰かに似てない?』

・・・・・・・・・・・・・・

「お前に似て、ヤンチャになりそうだ」



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