freedom~自由~

freedom~自由~

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君はいつも私のずっと先にいる。

いつもどこか遠くをずっと見つめている。

―――ここは暗闇。何も見えないのに。―――

君のいるところへ行こうとしても足が動かない。

君の名前を呼ぼうとしても声が出ない。

君は私に気づいて私の方を向く。

私は君に近づこうと手を伸ばす。

君も私に向かって手を伸ばしてくれる。

私はもう一度君のいるところへ行こうとする。

足が動く。

そして私は君に近づいていく。

あと少しというところで向かい風が吹いてくる。

君に近づけなくなる。

そして君はいつもこういう

「オレもう行かなくちゃ。」

すると君はどんどん私から遠ざかって闇の中に消えていく。

そこで私は目が覚める。

私はまた泣いていたらしい。顔に涙の痕が少し残っている。

今日は寝すぎてしまったようだ。

時計の針は午後の2時を指そうとしている。

少しだるかったがベッドからでて食事の支度をし始めた。

今日は君が好きだったケーキだ。

紅茶を2つ用意して自分の座っている席の反対側においた。

今、この家には私一人しか住んでいない。これから誰かが来る訳でもない。

「今日は、君の特別な日だから。」




ほんの1週間前の出来事だった。

ホークアイ中尉から君が死んだというしらせを訊いたのは。

――――――・・・・・・・・・・・。

コンコン。

ノックの音がこの静かな部屋に響き渡る。

「入りたまえ。」

「失礼します。」

入ってきたのはホークアイ中尉だった。

「今日は大佐に重要なおしらせがあります。落ち着いて訊いてください。」

ホークアイ中尉はいつにもなく真剣な面持ちだった。

「5日前に列車の事故がありましたよね。エドワード君がその事故に巻き込まれて・・・・死にました。」

信じられなかった。

その事故があった前の日にエドから電話が来て3日後には此処につくと嬉しそうに言っていたのに。」

どうして君は私をおいて先に行ってしまったんだ。

いっそこのまま死んでしまった方が楽なのではないだろうか。

君のいないこの世界に生きていてなんの意味がある?

――――――・・・・・・・・・・・。

『よっ!大佐!!』

電話の中から君の元気な声が聞こえてきた。

「どうしたんだエド。君から電話をしてくるとは珍しいな。何かあったのか?」

『オレらさ。あと3日ぐらいしたらセントラルに着くんだ。それから2週間くらい大佐の家に泊めてもらえないかな~って。それでさそのときに大佐オレの誕生日に祝ってよ!』

「そうかもう1年が経っていたんだな。いいだろう君の好きなところにも連れて行ってあげよう。」

『やった!大佐ありがと!楽しみにしてるからな。じゃあな!!』

あんなに元気だったのに、君は一瞬にしてこの世界から消えてしまった。

そして私の目の前からも。


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