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県政を後戻りさせてはならない
県政を後戻りさせてはならない
県政改革フォーラムから
県政を図る4つの『ものさし』
県政の舵取りを二期にわたって担った田中康夫氏について、様々な評価が飛び交っています
が、県政にとって大切なのはいったい何なのでしょうか。4つの『ものさし』で考えてみま
しょう。
『第1のものさし』地方自治は暮らしを守るためにある。
田中県政は教育や福祉といった分野では住民の暮らしと地域を守るために、国の基準を上
回る施策を数多く行っています、30任期簿学級は全学年で実施。乳幼児の医療費は就学前ま
で所得制限なしで無料。宅老所も250カ所以上になりました。
『第2のものさし』地方自治体は住民が主人公である。
「車座集会」「ようこそ知事室」で県民の声に知事が直接耳を傾けたのは、今までになか
ったことです。県職員が出向いて県への要望や地域課題を聞き、支援策を検討。市町村にも
多くの県職員(2004年度181人)を派遣しました。
長野県は前の知事が、中央の業界利益を優先(ゼネコンは公共事業の8割を持っていった)
した開発政策を進め、1兆6400億円という膨大な借金をつくり、議会の大勢もその方向支
持してきました。一番心配していたのは県民で、進めてほしい政策の第一位が「財政建て直
し」です。それに応え、現県政は財政改善を最優先課題にしてしゃっきいんを大幅に減らし
ています。また、「談合」の温床である「入札制度」にもメスを入れました。
『第3のものさし』地方自治体は政府の出張所であってはならない。
国は様々な分野で県をチェックし、政府の政策に従うように求めています。田中知事は
国のすすめる(弱肉強食の)新自由主義とは「対極にある」(2月県会施政方針)ことを
表明しました。市町村合併問題では、国が強力に合併を迫ってくるなかで、「自律」を選
択した市町村にも必要な援助をしました。膨大な補助金を使ってダム造りをすすめる国の
政策に対して、ダムは危険で無駄だという住民の運動と、知事の「脱ダム宣言」浅川をの
ぞく九つのダム計画は中止となりました。新たな河川整備計画は、住民が中心になって動
き出しています。県と市町村との関係では「対等な関係」づくりをし、市町村を上から指
導したり金をやる姿勢からサポート(援助)する姿勢に転換しました。
『第4のものさし』地方自治体は住民の安心・安全・平和な暮らしを守る
田中知事は憲法9条を守り、教育基本法は変える必要がないと明言しています。自衛隊
のイラク派遣にも反対を表明しました。国から策定を求められた「国民保護計画」では有
事がおこらないように努力することは国の責任であると付記しました。
この4つの『ものさし』は、県民のための県政にとって大切なことです。「環境にやさ
しい」「人的資源の活用」「情報公開」という『ものさし』もあります。それぞれの『も
のさし』を見なければ、県民と共に軌道修正をしてきた県政を後戻りさせることになりま
す。それぞれの文差しは現在プラスの方向に向いていると言えます。
「小さな過失や欠点」に目を奪われて大切な『ものさし』を見なければ、県民と共に軌
道修正をしてきた県政を後戻りさせることになります。かつての主役だった大きな企業や
集団の力を復活させ、組織が既得権益を守るようになれば、「民主主義の目さまし時計」
でせっかく目覚めた信州は再び眠りにおち、長野はツンドラ地帯に逆戻りしてしまいます。
5年連続で借金を減らしたのは全国で長野県だけ
吉村県政は膨大な公共事業で借金を増やし続け、2000年には1兆6,400億円にもなって
いました。お年寄りから赤ちゃんまで県民1人当たり約80万円の借金。県財政は破綻寸前
でした。田中県政になって、徹底した財政改革が行われました。大型公共事業は、生活に
密着した公共事業へ転換されました。機構改革をしつつ職員数を448人(一般行政職)減
らしました。職員給与も知事始め特別職の給与は全国最低、一般職も5~10%減額が実施
されました。外郭団体への支出の大幅見出しは、3年間で36%(約51億円を減らす)。
同和対策事業は原則廃止、突出して多かった運動団体への補助金、委託料も2003年度限り
で原則廃止となりました。
これらの改革によって、田中県政になってから、920億円の借金を減らしました(2005
年度見込み)。利息払いは、36,1%も減りました。予算の公正も大きく変化し、ダム建設
など大型公共事業は減って、民生費、教育費の割合が増えました。
公共工事の流れを変えた「脱ダム」
ダムが本当に必要なのかどうか、ダムが自然や環境にどういう影響を与えるかをきちん
と検討することなく、ダムは作られ続けてきました。国や県の進める大型公共工事は上か
ら決められ、いったん計画されればたとえ必要性がなくなっても止まりませんでした。水
源地長野県でも、地もとの反対や、環境への影響を心配する人々の声は全く届かないとい
ってもよかったのです。下諏訪ダムでは、世論調査でも「ダムはいらない」という住民の
意思がはっきり出ているのに、吉村県政と、地元自治体の長などはダム建設を推進してき
ました。
こんな中で出された「脱ダム宣言」は、●コンクリートのダムが地球環境にとってむし
ろ負担をかけること、●ダム建設費には膨大な補助金を供い、国と県の財政に大きな借金
を積み重ねたこと、●もし河川改修がダムよりもお金がかかるとしても、将来の子孫に残
す自然環境を考えればダムを造るべきではない。と言っています。これは全国的にも大き
な影響を与え、その後の公共工事の流れを変えました。
「脱ダム宣言」後、「長野県治水、利水ダム等検討委員会」がつくられて公開の場で検
討された結果、すでに工事が発注されていた浅川ダムも中断されたのです。各河川ごとに
住民が意見を出す仕組みが作られました。蓼科ダム計画を抱えた川上部会では、住民と行
政が徹底した現地調査をして河川の実情をつかみ、安全と治水のために何をするべきかを
検討しました。その結果全員一致でダムではなく河川改修をする道を選びました。住民が
中心になった河川整備計画が動き出しています。
30人学級の実現と子育て支援
吉村県政の時は、長野県は福祉の墓場といわれた細福祉教育予算がなく、公共事業費が
大きく上回っていました。田中知事は就任直後これを是正、今エンド予算では公共事業費
13.6%に対し教育費は、24.1%と大幅に上昇しました。2002年度からは30人規模学級が
スタートし、現在は市町村との協力で小学校6年生までの30人学級が実現しています。県
財政が多額の借金をかかえ支出を切りつめている中でも、先生や父母など県民の運動や願
いに応えて知事が決断したものです。
不登校や引きこもりの子どもたちを支援する子どもサポートセンター創設。教育の機会
がなかった人のために養護学校高等部訪問教育の年齢制限をなくし、養護学校へ看護士を
配置、障害のある児童生徒や外国籍の子どもに対する学校生活支援、長期入院児童生徒へ
の訪問支援事業も実施されました。
子育て・保育では「信州はぐくみプラン」で県内の子どもたちの現状を調査し、国が保
育への支出を大幅に削っているなかで県は調査を元に可能な支援をしようとしています。
認可外保育所(自由保育所)の役割を認め、助成が充実したのは画期的なことです。
須坂市内の中学生のいじめによる自殺事件で父親前島章良氏は、再び同じ悲劇を繰り返
すなと、命の大切さを訴え多くの子どもたちの相談にのりました。田中知事は「子ども支
援部」を創設、前島氏を課長に「子どもの権利支援センター」で子どもたちの声を受け止
めています。
「高校改革プラン実施計画」については一斉実施は延期し、教職員、住民、生徒との合
意を求めるべきでしょう。
福利・医療の予算大幅増額、宅幼老所は県下に250カ所
田中知事は就任してすぐに、予算の重点を福祉、教育、環境など県民生活を重視した公
共投資へと移すと表明、福祉・教育の予算は大幅に増額されました。その結果。県の歳出
に占める民生費の割合は90年代には4~5でしたが2005年には8.8%に上昇しました。知
事は保険・福祉・医療施設などに足を運び、懇談し、現場の声に耳を傾けています。高齢
者・障害者も在宅介護サービスの充実、小児医療・高度医療・緊急医療体制の充実、県立
病院の整備、保険・福祉・医療関係従事者養成などの施策が実施されました。知的障害者
グループホームは4年間で4倍以上(06年2月で134カ所)になりました。また国の制度
の狭間にある困難な人々を支援するとして障害者総合支援センター、小児救急医療、外国
人救急医療、などにも取り組んでいます。
今、介護見直しや医療制度の改悪により、低所得者が介護や医療を受けられない状況が
生まれています。ケアハウス(軽費老人ホーム)の補助金も、国は全額カットしました。
これに対し県は04.05年度に国の補助金分も含めた全額補助をしました。
県が20003年度から実施している「宅幼老所開設支援事業」は全国的にも注目を集め、
2005年3月で約250カ所の宅幼老所(全国一多い)ができました。生活する地域での介護
保険事業の可能性を開き、スタッフの就労など来よう・経済効果も期待されています。地
域で自発的に活動する県民を支援して福祉・医療の充実を目指す。県と県民の協働の「長
野モデル」の典型ともいえます。
自然と共生する農業
「環境に付加を与える農業から自然と共生する農業へ」現在の長野県の農業政策の目標で
す。長野県では1ha以下の農家が82.7%ですが、国は4ha以上の農家にだけ支援を集中し
ようとしています。長野県は利潤追求で農家を切り捨てるのではなく、いのちと環境を育
む産業として位置づけています。
環境保全型農業を広げるために化学肥料や化学合成農薬の使用を減らす生産者グループ
の支援、新たに農業をしようとする人の研修を応援する新規就農里親支援事業、集落営農
を進めるおらの村づくり事業など、いくつもの新しい政策を実行に移しています。
2002年度から始まった長野県原産地呼称管理制度は、農産物の味覚、栽培方法、生産
方法など農産物の質を重視して信州農産物のブランド化を進めようとするもので、ワイン、
日本酒、焼酎、米などでは、すでにたくさんの認定品が出回っています。2003年度からは
子どもたちに質の良い地元の農産物を食べてもらう地域食材の日が、すべての小中学校で
実施されています。
長野県の森林について、県民は森林の荒廃を心配し、土砂の流出防止や水源滋養の役割
に期待をもっています(2003年調査)。県の森林政策は、ダム建設ではなく森林を整備
し地元散在を利用していく方向へと大きく転換されてきました。「長野県ふるさとの森林
づくり条例」(2004年)にもとづいて、森林整備の目標も出されました。干ばつは
2004年からの12年間に25万ha実施する計画です。土木建設業者に森林整備の仕事をして
もらうなど、仕事の拡大と森林整備のにない手作りも進められています。間伐材を活かす
木製ガードレール事業も進んでいます。
抜本的対策に取り組み始めた廃棄物条例
信州の美しい風土・自然・住民生活にも大量生産-大量消費-大量廃棄の弊害が広がって
います。住宅近くや山間地の廃棄物の山。ゴミ埋め立て地での「遮水システム」の破断。
河川に流れ出している汚染水。田畑の周辺に放置された大量の焼却灰などです。「大型ガ
ス化溶融炉」の問題もあります。また、自治体が税金で処理する「一般廃棄物」(消費者
の排出ゴミと事業系ゴミ)の他に、その8倍以上の料がある産業廃棄物の企業責任の問題
もあります。
吉村県政のもとで、業者に甘く地元住民に横柄だった県行政。伊那では産廃処理場問題
で住民が運動を続け、ついに最高裁は、事実上業者への指導を野放しにしてきた県行政を
誤りと判断しました。田中県政は、その司法判決を一つの拠りどころとして、長年見て見
ぬふりをしてきたこれらの問題に対し、抜本的対策に取り組み始めています。住民への対
応も大きく変化し始めました。いったん処理場建設を認めて届け出受理をしたのを司法判
断に従って取り下げるとか(伊那)、住民の同意が成立していないことが明らかになって
許可を取り消す(三郷)などの住民の声に耳を傾けるようになっています。施設内容の情
報は、はじめ「企業秘密」と言って県が公開を拒んでいましたが、田中県政になって情報
公開が徹底してきました。
県民の立場から県政改革の今を考えるネットワーク
連絡先:〒380-0936 長野市中御所岡田78
信州の教育と自治研究所
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