kaiちゃってもいいですか?

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昇れない階段

昇れない階段

少年はこの世界に来てから、何度もくじけそうになったが、その度に

必死に自分を言いくるめ奮い立たせてきた。

正に気力と言うものだけで、かろうじて動けている少年の木の幹は

あきらかに細くなっていた。

「やった、初めて来る場所だ」

少年は少しだけクックに笑って見せた。

少年は階段を1段上った。

すると少年の体の痛みが少し治まった。

「きっと、以前いた世界につながっているんだ」

少年の心の中に久しぶりに希望が芽生えた。

だがその希望が、すぐさまかき消される事に少年は気付くよしもなかった。

明け方、少年が声をかけた。

「クック、一緒に戻ろう」

少年は昨日やってみせたように階段を1段上った。

するとクックは少年を通り越し一番上の階段まで一気に上って行った。

「ワンッ、ワンッ」

クックは嬉しそうに尻尾を振りながら少年を待っていた。

「今行くから、待って」

少年は2段目の階段を上ろうとしたが、どうしても上ることができない。

「え?」 少年は少し驚いた。

だが、長い時間をかけ、必死に2段目まで上がった。

すると、体の痛みが更に引いていくのがわかったが、もう一段上る力が

少年には残っていなかった。

それどころか、一気に階段の下まで押し戻されたのだ。

それと同時に体の痛みも一番辛い状態に戻った。

この日から少年は100年の木の場所と、この階段を往復する日々が続いた。

クックはもう少年を追い越す事はなかった。

「どうしても階段を上ることが出来ないよ」

少年は100年の木に話しかけた。

「なぜそんなに頑張る必要があるのだい?」

100年の木が言った。

「なぜって・・僕、悔しいし、悲しいし、元の自分に戻りたい」

「よくお聞き、今の自分が君自身なのだよ」

「辛いだろうが、それを受け止めなければ君が言う出口とやらにはたどりつけない」

少年はその夜、頭の中がグルグルしてほとんど眠る事ができなかった。






グリルデガバチョ

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