願 い
ハガキ到着から葛藤する事4ヶ月、なんてことない日によぎった思い。
「行ける、僕、箱に乗れるかも知れない」
少年が四角い箱に恐怖を憶えてから、実に4年の歳月が流れていた。
「嘘だ嘘だ、お前は臆病者さ、のれるはずがないケケケ」
「行けるよ、でも失敗したら今までの年月が水の泡だ。
わかっているんだよね?チチッ」
「うん、僕、わかっている」
「丸太小屋に向かっている途中、恐怖心に負けてしまったら
僕はあと何年も乗れなくなるんだ」
「じゃあ止めちまえ!ケケッ」
「お前は、自分自身も操れないんだろ?」
「どうしても行きたいんだ!もし乗れなくなっても構わない」
「後悔するぜ!こ~うか~いす~るぜ~~ケケ」
<うるさい、黙れ!>
少年が声を荒げた瞬間、ハットは姿を消した。
なにが彼を駆り立てたのだろう。
すぐさま少年は樹木新聞を手に入れ、箱に乗る日を決めた。
その日が近づいて来る度に、少年に襲い掛かる数々の症状、
それでも思いが揺らぐことはなかった。
当日の朝、胃の痛みと吐き気、珍しい事ではないが少年は
自分を落ち着かせるのに何度も何度も深呼吸した。
「僕は行くぞ」静かに白ハットに言い聞かせていた。
少年は以前いた世界の友達と一緒に行く約束をしていた。
「もし2回行けたなら、そのときはビデオカメラを持っていくんだ、だって、
僕の心と体は一つではないから辛い時はソレをみて
友達に元気をもらうんだ」
頭によぎる、何度も乗れるはずはないという思い、
だから少年はそう決めていた。