「栄養と料理」



 先日、久々にファミリーレストランに入りました。夫と二人でオーダーを思案
している時、隣のテーブルに料理が運ばれてきました。お隣は80歳をいくつか越
えたくらいの見事な白髪のお年寄りご夫婦で、お二人がオーダーされていたのは、
たっぷりホワイトソースとチーズの乗ったグラタンでした。美味しそうにゆっく
りゆっくり召し上がる様子が目を引きました。乳製品は好きだけど、グラタンは
ちょっと苦手な私は「わぁ、ハイカラなお年寄り!」と、ついお二人に目が行っ
てしまったのです。
 戦中戦後をくぐりぬけ、若い頃は、決して栄養豊かな食生活を送ることはなか
ったでしょうし、乳製品を身近に取り入れることなく過ごされた世代かと思われ
ます。でも、今、見直されている昔ながらの日本食の恩恵をたっぷり受けてきた
ことがうかがえる、贅肉のない矍鑠としたお姿。一番、長寿がかないやすい年代
なんでしょうね。インスタント食品やファーストフードで子供の頃からすでに成
人病の赤信号が点滅している現在と対局するものを、見知らぬお年寄りの姿から
感じました。
 遊びにこられたお孫さん、いや、ひ孫さんから「おじいちゃん、おばあちゃん、
グラタンとても美味しいよ」とでも勧められて口にし、美味しかったので、たま
にこうやってご夫婦で食べに来られてるのかしら?それとも、健康教室で、骨折
で寝たきりにならないよう乳製品をタップリとりましょうと、栄養士さんの作ら
れたグラタンを試食されたのがきっかけなのかも?などとあれこれ想像を巡らす
ことしきり。というのは、昔から食べ慣れてるという雰囲気ではなかったからで
す。そんな想像の世界にひたっているうちに、私たちにも長い待ち時間の末やっ
と運ばれてきた料理を前に、数分は空腹を癒すのに夢中でした。気がついた時に
は、すでに、お隣のお二人は席を立たれた後。お皿にふと目をやると、お二人と
も半分ほど残しておられます。
 黙々と長い時間かけてスプーンを口に運んでおられた様子と、半分も残された
グラタンとの対比が何となくおかしくて、夫に思わずそのことを報告してしまい
ました。食の細くなったお年寄りには、半分がちょうどいい量だったんでしょう。
私たちも、老後はあのような夫婦になれたらいいなぁと憧れるとともに、数分で
たいらげてしまう早食いと過食傾向を大いに反省。
 これからも乳製品を取り入れた食生活で、元気で長生きして下さい…と心の中
でつぶやきながら、レジで会計をすませるお二人の後ろ姿を見送りました。

            謝礼はテレカ1枚(\500)なりぃ(^o^)


© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: