友人の同人誌その1 ハムスター日誌



  < ハ ム ス タ ~ 娘 が や っ て き た ぁ ! > 

  クレィジーマミとモル、パソコン通信NET縁でこの二人が結婚したのは、
 平成某年の10月。二人ともすでに三十路半ばの晩婚だった。旦那のクレィジ
 ーマミは「クレマミ」と省略され、妻のモルは、それ以上縮めるとヘンだから
 「モル」のままである。二人は、結婚してからも、ずっと、パソコン通信のニ
 ックネームで呼びあっている。

  クレマミとモルは兵庫県の片隅に棲息し、一応まっとうな市民生活を営んで
 いた。そして、1年後、二人の間には可愛い娘が・・・誕生したのではなく、
 買われてきた。それが、ハムスタ~娘の「メイ」なのである。

  メイがクレ・モル亭の一員になるまでには、なかなか涙ぐましい(?)いき
 さつがあった。

  モルは、かねてよりハムスタ~に興味があった。クレ・モル亭は団地なので、
 犬や猫は二人とも大好きだが飼えない。が、ハムスタ~くらいなら可能であろ
 うと、モルは、ことあるごとにクレマミに「ハムスタ~!!」とねだっていた。

  結婚翌年の夏、クレマミは友人の家でたまたま見かけた雑誌に、可愛いハム
 スタ~の漫画があるのを見つけて、その魅力にとりつかれた。しかし、忘れん
 ぼのクレマミは、雑誌の名前が思い出せない。あまりメジャーじゃない雑誌ら
 しい。

  ところが、天は我らに味方した!しばらくしてその漫画が、コミックスにな
 って書店に並んでいるのを、クレマミは見つけたのである。息せききって帰宅
 し、モルに「これこれこれだ!コミックスになってたよ!」と、その本をさし
 出した。おぉ、これが、噂に聞いてたハムスタ~漫画!・・・とモルも、早速
 手に取り、読み始めた。

  とにかく、お・も・し・ろ・い!!! か・わ・い・い!!! ハムスタ~
 の魅力があますところなく表現されてる。作者は小学生の頃から常にハムスタ
 ~を飼い続け、ハムスタ~に関しては、ベテラン中のベテランとのこと。

  その本をここで紹介しておこう。
  「ハムスターの研究レポート」 作者:大雪師走  偕成社

  つまり、クレマミの忘れてしまっていた雑誌は「コミック・モエ(現「コミ
 ック Fantasy」)だったのである。あまりメジャーでない雑誌なんて言うとバ
 チがあたる。その後、ハムスタ~を飼ってることを知った友人二人から、この
 漫画を知ってるか?と推薦されたくらいメジャーだった。

  繰り返し繰り返し読み、指さして笑い、この夫婦は、日課のように本のペー
 ジをめくった。十分、ハムスタ~飼育の参考書にもなる。ズボラなクレ・モル
 でも何とか飼えそうだ・・・と、日に日にハムスタ~の養父母になる夢をふく
 らませていったのである。

  そして、その年の10月中旬のこと。大阪のモル実家滞在の折、モルの誕生
 日が近いので、二人はアクセサリーのプレゼントを探しに出かけた。しかし、
 モルが望むようなイヤリングが予算内では見つからない。また出直して別のお
 店で物色しよう・・・ということになり、帰りかけたが、ついでにペットショ
 ップを覗こうということになった。

  まだ、その時点は、二人とも、はっきり意思をかためていたワケではなかっ
 た。が、夢中になってハムスタ~たちを眺めていたら、もはやその気にならな
 い方がおかしい。「よし、ハムスタ~の養父母になろう!」と相談がまとまり、
 どの子を選ぶか真剣に討議し始めた。

  クレマミは、華奢な体つきのすばしっこそうな女の子に目をつけた。確かに
 キュートな娘だ。しかし、モルは、丈夫で長生きするにはストレスをストレス
 とも感じないくらいのタイプがいいと信じていたので、よく太っていて、グー
 タラした雰囲気の女の子に目をとめていた。この子は、他のハムスタ~たちが
 自分の体の上に乗って暴れているのにもかかわらず、大の字になって平気で寝
 ている。肝の座ったような動作が快い。「私は、このふとっちょさんがいい!
 器量もいいし・・・」と主張するモル。

  もともとモルのプレゼントを買いに来たこともあってか、クレマミは、あっ
 さり折れた。ハムスタ~ハウスのケージと餌も買って、モル実家への帰途につ
 いた。帰りの電車内では、早速このふとっちょ娘の命名について、真剣な討議
 が続けられた。

  「クレマミさんの好きな女の子の名前にしていいよ!」と妻モルは、今度は
 夫の意見に従おうとした。クレマミは、アニメが大好きで「となりのトトロ」
 なんぞは、もう、のけぞるほど好きなのである。特に、登場人物である草壁家
 の次女「メイ」には、ぞっこんまいっている。メイの姉「さつき」にも少しは
 興味があるらしいが・・・。

  そして、ふとっちょ娘の名前は、モル実家にたどりつくまでに「メイ」と決
 まり、早くも「メイちゃん、メイちゃん」との呼びかけが始まった。

  モルの実家の母は「あらま、誕生日のプレゼントがアクセサリーからハムス
 タ~に化けたん?」とビックリ。「うんにゃ、メイちゃんは、私へのプレゼン
 トと違うんよ。アクセサリーは、今度また買うてもらうことになってん。」と
 答えるモル。後日、モルはクレマミから、淡いブルーの石が麗しいイヤリング
 をせしめたことをつけ加えておこう。

  その日のうちに、モル実家からクレ・モル亭へとクレマミの運転する車に揺
 られて、メイは大阪から兵庫へと居を移したのであった。

 [名] メイ
 [誕生]不明
 [性別]女
 [特徴]やや肥満、美形
 [出身]大阪天王寺ステーションデパート内
      ペットショップ
 [住所]兵庫県の片隅
 [好物]大根の葉・ひまわりの種・チーズ・ケーキ

  とにかく、めでたく新しい家族ができた喜びに、終始ニコニコの夫婦であっ
 た。誕生日はわからないので、メイがクレ・モルのもとに来た日、10月18
 日を仮の誕生日と決め、早速、クレマミの電子手帳にはメイのバースデーが登
 録された。

  こうして、メイは、クレ・モル亭の愛娘として、新しい生活を送ることにな
 った。そして、クレ・モルは、パソコン通信のNETで、新しい家族のことを
 吹聴しまくる為、NET仲間は、毎日のように、親馬鹿夫婦の娘自慢を聞かさ
 れる(読まされる)ことになったのである。

                                 つづく


      < い と し の メ イ ち ゃ ん > 

  新しく家族に仲間入りしたメイは、早くもクレ・モル亭で一番エライ人(鼠)
 に出世した。人間夫婦二人はメイの妖しいまでの魅力の虜だ。朝から晩まで「メ
 イちゃん、メイちゃん」とたてまつるのである。まー、ハムスターは夜行性だか
 ら、メイ嬢のご機嫌伺いができるのは早朝と夜しかないのだが。

  ひまわりの種の固い皮を剥いて食べさせるクレマミ、大根や人参のはしっこを
 水栽培して、新鮮な葉っぱが出てきたらせっせとちぎって食べさせるモル。ピザ
 トースト用に買ってあった溶けるチーズも、人間がほとんど使わないうちにメイ
 ちゃんの餌に化ける。食欲旺盛なメイは、とにかく何でもパクパク。ビックリす
 るほど多量の食料を頬袋に詰め込み、コブラみたいな顔になる。

  固くて小さなウンチッチをたくさんする。量は少な目とはいえ濃縮されたシー
 コッコは、みるみるケージの受け皿にたまってしまう。入れてる新聞紙は、寝室
 の紙箱ハウス(巣箱)にため込むため込む。紙箱ハウスは、菓子の箱などを利用
 して、クレマミが作ってやる。巣箱用にと、わざわざ丁度いい大きさの箱に入っ
 たお菓子を買ってきて、そのお菓子はクレ・モルのお腹におさまる・・・という
 オマケもついた。メイのお城(飼育ケージ)の掃除&メンテだけでも、結構な仕
 事量である。

  犬・猫・小鳥・熱帯魚とかと違って、飼育の参考書はほとんど手に入らない。
 子供用の学習本のようなコーナーで見つけた「みぢかないきもの」という本にハ
 ムスタ~飼育のことが載っていた。購入し熱心に勉強するクレ・モル。(注)

  ハムスタ~そのものの資料もうまく手に入らないのだが、クレマミの勤める大
 学の図書館で「実験動物」について書かれた本があり、ハムスタ~のページをコ
 ピー。ひえーーー、可愛いハムスタ~ちゃんを実験に使うなんて許せない!など
 と興奮しつつも、この文献でまたもや勉強。ハムスタ~の生態・特徴・各種標準
 値などが詳しく書かれていた。二人はもうイッパシのハムスタ~博士気分になっ
 ていた。もちろん、かのコミックス「ハムスターの研究レポート」は最優先の座
 右の書である。

  夜行性ゆえ、夜10時を回ると、そりゃ賑やかになる。カジカジカジカジと、ケー
 ジの柵をかじる。紙箱ハウスをかじって破壊してしまう。遊具のまわし車で懸命
 に走る音がキーコキーコ。何度も「メイちゃん、静かになさいっ!」などと、言
 っても無駄なことを言ってしまうモルであった。

  日に日に大きくなってくるメイ。本当に成長が早いのには驚かされる。最初の
 1週間くらいで、倍近くまで増大したように見える。初めの体重を計ってなかっ
 たことが悔やまれた。この調子で大きくなると、兎サイズになるのもまんざら夢
 じゃない・・・などと考え、しっかり栄養計算した(?)餌を与え続ける養母モ
 ル。

  ある日、クレマミは仕事の帰り、田圃に不法侵入して藁を強奪してきた。ダン
 ボール一杯の藁。早速「メイちゃん布団」となった藁。あーー、気持ちよさそう
 だね。赤いルビーの様なまん丸お目々のメイちゃん、その澄んだ目で何を見てる
 のかな?クレ・モル夫婦は、たっぷりメイ鑑賞の時間をとり、この娘のためには
 何でもしてやろう・・・という気持ちを固めていくのであった。愛しのメイちゃ
 ん、元気に大きく育ってね。

  そういう養父母の願いが通じたのか、メイはどんどん大きくなり、日増しに美
 貌度を高めていった。そして、パソコン通信のNETには、毎日のように「メイ
 ちゃん賛歌」が養父母二人によって書かれていた。

  メイは、ハムスタ~の宿命ゆえ、知能がイマイチなのだ。親の顔も自分の名前
 もわかってるのかどうか・・・。しかし、そこんところは、ただ「可愛い」とい
 うことで全てが許される。ええ、許しますとも!

  ああ~、メイちゃん、あなたは世界一、きれいなハムスタ~よ!

                                   つづく

(注1)
 平成某年のこの当時は、ハムスタ~ブームの少し前だった為、詳しい飼育書は
 まだほとんど存在しなかった。現在は、書店のペットコーナーには、多数の参
 考書がひしめきあういい時代になった。(選ぶのに困る時代?)小動物専門の
 雑誌も存在し、資料には事欠かない状況。

       < 怪 力  メ イ ち ゃ ん > 

  メイは、とてもやかましい娘である。自慢の前歯でかじることかじること!!
 飼育ケージの中の紙箱ハウス(メイのベッド)も内側からカジカジカジカジカジカジ。
 入り口だけカッターで開けた紙箱のお家が、あっという間に裏口付きになり、さ
 らに開けっぱなしの天窓つきとなる。

  しまいに、紙箱ハウスの屋根に登ったメイは、みずからの体重でグシャリ。中
 には、取り込んだ餌や新聞紙がこれでもかっ・・・というほど詰め込まれている。
  クレマミは、その都度、お菓子の空き箱などで丁寧に新しい紙箱ハウスを作っ
 てやる。が、新居に住まわせても、3日もたてばオンボロに・・・。ま、でも、
 紙箱ハウスをかじる音は、さほどうるさくはない。

  問題は、ケージの金属柵をかじる音!一生懸命、渾身の力でかじっている。爪
 や歯が伸びてしまうのは、ハムスタ~にとっては死活問題だから、仕方がないと
 いえば仕方がないのであるが。歯がため用の専用のクッキーや蒲鉾板や割箸とか
 も提供してるが、物足りないらしい。

  で、金属柵かじりなら、うるさいだけなのでまだいい!そのことが、後日、痛
 いほど実感させられる事件に結びついたのだ。

  ケージの柵と床とを留めているポチっとしたでっぱり。全部で4箇所(2辺に
 2箇所ずつ)ついているのだが、この小さなでっぱりが一番下の柵にひっかかる
 ことで固定しているのだ。ケージ掃除の時には、人間の力で柵をたゆませてはず
 す。

  そのでっぱりは、プラスチックでできているので、金属柵ほどの強度はない。
 メイは、そこを積極的に攻めて、見事に欠いてしまった。3分の2程かじりとら
 れたでっぱりは、それでも、何とか柵とひっかかっているし、一箇所だけかじり
 取ったくらいでは、ケージ全体はビクともしない。

  が、頑張り屋メイは、ついに2箇所目(隣のでっぱり)もかじり取ってしまっ
 た。四方の柵のうち、1辺が、きわめて不安定な固定状態になったのだ。だが、
 クレ・モルは、まだ安心していた。かじり残したでっぱりで、一応柵はひっかか
 ってるし、あと3辺はちゃんとひっかっかってるのだから・・・と。

  それが甘かった。日に日に大きく成長し、筋肉の力もたくわえたメイのパワー
 を見くびっていたのだ。

  ある夜、クレ・モルがのんびりTVを見ていたら、ドスンという音。あらら?
 キャーー、メイが床を走ってる!脱走だぁぁぁぁ!!! ケージを置いてる机の
 上から床に転落した音だったのだ。平和だったリビングルームは、大騒ぎとなっ
 た。

  天井についてる出入り口を閉め忘れてたんだとばかり思ってたら、ケージが微
 妙にずれてる!脱走犯メイを捕獲しケージに戻した後、現場検証とあいなった。
 始めから柵がきちんとはまってなくて簡単に脱走できたのであれば、きちんとは
 めるよう今後注意すれば問題はない。もちろん、天井にある出入口の閉め忘れに
 も注意が必要だ。

  で、欠けてはいるものの一応は柵にはめこまれた状態のケージが、内側からメ
 イによってはずされたのなら、きちんとした対策を立てねばならない。まさかと
 は思ったが、念のため確認しておく必要はある。あくまでも、「まさか」だった
 のである。

  じっと観察すること数十分。カジカジを始めたメイを根気よく見守る。そした
 ら、始めた始めた!後ろ足をグインとふんばって、前足と口は横に走ってる金属
 柵の1本をしっかり把持し、金属柵を内側にたゆませてるのだ。何度も何度も挑
 戦するうちに、徐々に柵とケージ床との間に隙間ができてくる。しかし、あとち
 ょっとというところで口や前足がすべってしまい元にもどってしまう。

  でも、頑張る!何度も何度も満身の力をこめて柵はずしを試みるメイ。後ろ足
 をググーーーとふんばっている姿のメイは、フワフワの毛の下に隠された筋肉の
 走行を感じさせる。

  そして、ついにやった!見事、はずしたのだ。やっぱり、メイの怪力で内側か
 ら柵をはずしたのだった。1辺が完全にはずれると、後の3辺はたわいもない。
 信じられないことが目の前で繰り広げられて、現場検証者モルは絶句した。

  そこで、モルはクレマミと相談し、細い銅線で柵を補強するという対策を取っ
 た。これで安心。ヤレヤレ

  と思ったクレ・モルは、まだまだ青かった。その銅線をも、2~3日でカジカ
 ジ切断してしまうのだ。線を2重にすれば、線の延命効果は得られる。しかし、
 いずれは、取り替えねばならない。

  結局、その後の飼育ケージメンテにこまめな銅線取り替えが加わったのである。
 養父母の仕事がまた増えたのだ。貧しいクレ・モル亭では、新しい飼育ケージ購
 入計画は全く立てなかった。ま、新しいのを買っても、ケージはいずれ同じ運命
 をたどるのだから・・・。

  次回は、メイの脱走で振り回されるクレ・モル亭狂想曲をお送りすることとし
 よう。

                                つづく

      < メ イ ち ゃ ん 大 脱 走 > 

  ハムスタ~に限らず、日頃、狭い小屋、ケージ、カゴ等に閉じこめられて暮ら
 している動物は、広い世界への憧れが募るのも無理からぬこと。まんまと、束縛
 から逃れようものなら、外の世界の現実を知らぬが仏で、危険を顧みず無謀な探
 検を試みるのである。

  大阪天王寺のペットショップ出身であるメイは、生まれた時から母親ハムスタ
 ~と人間の庇護のもと、ぬくぬくと成長してきたのであるから、戸外の怖さを知
 らなくて当たり前。まさに箱入り娘なのだ。

  現実、ハムスタ~がひとたび戸外に出てしまったら、もう無事な姿で再会でき
 ることは期待できないだろう。外には、猫がいる、獰猛そうなカラスも地上の獲
 物を狙っている。

  たとえ、襲い来る外敵の目から逃れていてたにしても、帰巣の知恵があるよう
 にも期待できず、鳴き声も出さない小さなハムスタ~を、無事に捜索発見できる
 ことは、運を天に任せて、文字どおり「万が一」くらいだと思うモルである。

  戸外への脱出だけ防げばそれでイイと思うほど気楽になれないのが、心配性の
 養母モル。とにかく室内でもその姿が少しでも見えなくなると、狂気の如く捜し
 まわる。養父クレマミは、やはり父親の貫禄でか、「そのうち出てくる」と落ち
 ついたもの。

 養母モルの心配は・・・
  その1.どっか家具の隙間とかに入り込み、出てこれなくなって、空腹と渇
      きの果て、ひからびてしまったらどうしよう。
  その2.台所の部屋には、いたる所にゴキ様よけのおまじない「ほう酸団子」
      が置かれている。知能のかんばしくないメイがエサと間違って食べ
      てしまったら・・・。(蒼ざめぇぇぇ)
  その3.いきなり出てきたメイに気づかず、運悪く踏んずけてしまったり、
      お尻に敷いてしまったら大変!

 とまー、こういう、極めて妥当な心配をしてるのである。

  だから、ケージから出して遊ばせる時も常に見張っているし、ほう酸団子ルー
 ムには近づけないようにしている。養母モルは、目が離せなくてハラハライライ
 ラするので、あまりメイを出したがらない。

  養父クレマミは、時々は広い場所でたっぷり遊ばせ運動させてやることの必要
 性を重視する。もちろん運動させることがハムスタ~の健康上大切なことはわか
 っているが、愚かな養母は、頭では納得しても感情がついていかない。養父が出
 したメイをすぐ養母がケージに戻してしまうのだ。

  運動させる為にケージから出した時は、養父母の目が光ってるので、まだ安心
 といえば安心。そのような時は、戸外(ベランダ)に通じる窓や扉は、必ず閉め
 られていることだし。

  問題は、予期せぬ脱走である。怪力・メイの脱走は、前にも紹介したが、人間
 のうっかりミスの出入口閉め忘れ、柵固定の甘さなどで、たびたびメイは果敢な
 る脱走を試み、さんざん養父母を心配させた。

  たまたま、即、発見できるのは、ケージを置いている机から床にドシンと落ち
 音に気づいた時である。しかし、カーテンをつたって音もなく床に到達した時は
 脱走の発見が遅れる。いきなり、足元に触れて「あ、メイちゃん!」と気づいた
 こともあった。

  脱走に気づき、必死に各部屋を探したのにもかかわらず発見できない時は、モ
 ルの涙腺はすぐゆるんでくる。真夜中3時すぎまで探して見つからず、諦めて寝
 たこともあったが、悪夢にうなされて数時間の睡眠は拷問になるのである。寝な
 かった方がマシだといえよう。

  朝になると、余計に発見は難しくなる。というのは、ハムスタ~は夜行性なの
 で、明るくなると眠ってしまう、エサで釣ろうにも眠い眠いのハムスタ~は、安
 易に釣られてくれないだろう。

  このへんは、逆に言うと、昼間ベランダを開けて洗濯とかしてる時にウロウロ
 出てきてしまう心配がないので、助かるのであるが。ハムスタ~が活躍してる時
 間帯は、ベランダの戸はまず開いていることはない。

  ここで、平成某年7月3日のモル日記から、メイ脱走事件を紹介しよう。

      ~~メイちゃん大脱走!混乱のクレ・モル~~

  今朝のこと。クレマミさんの出勤と同時に私も大阪の実家に向かうべく慌ただ
 しく支度をしてた時、クレマミさんの「メイちゃんが脱走してるよ。いないっ!」
 という声が、ケージのそばから聞こえた。ついに、開け方をマスターしたのか、
 確かに、紙箱の中は、もぬけの空!

  心当たりを探したものの、もうメイちゃんはオネムタイムゆえ、きっとどっか
 で丸くなって寝てしまってるだろうから、見つけるのは無理っぽそう。

  出かける時間が迫っても、見つからない。次第に涙腺がゆるんでくる。クレマ
 ミさんはベランダ開けてないし、戸外に出てしまった心配ないんだから、大丈夫
 ・・・って言うけど。

  もう出かけるのよそうかと思ったが、家にいてても、見つからないメイちゃん
 のことが気がかりで落ちつかないだろうから、精神衛生上も、予定通り、大阪に
 向かうことにした。

  台所には、ほう酸団子が置いてあるし、もし、食べてしまったら・・。ヒエーーー!

  心配で心配で胸がはりさけそうになりながらも、いくつかの用事を済ませて、
 夕方実家へ!そして、いつものパソコン通信ネットにアクセス。そしたら、クレ
 マミさんからメールが届いていた。

  無事捕獲したとの連絡。クレマミさんもやっぱりメイちゃんのことが心配で、
 仕事に出たものの、PM2時には帰ってきたそうな。ま、土曜日は、元々お仕事
 はお休みの日のボランティア出勤なんだから、仕事をおさぼしたことにはならな
 いけど。

  クレマミさんは、朝はメイちゃん捜索のためいつもより随分遅く出かけて、2
 時には帰って来たんだから、ほとんどお弁当を食べに職場に行ったようなもの。

  スノコ床の下に入り込んでて、入ったものの出られなくなっていたらしい。鼻
 先をスノコの隙間から出してた姿は面白かった・・・だって。アハハハ

  あーー、よかった!もう元気なメイちゃんと会えなかったらどうしよぉぉぉと
暗くなってた気分がいっぺんに晴れ晴れっ。さて、明日、家に帰ったら、メイちゃ
んをウリウリ可愛がってあげるんだーーい!

  とにかく、親に心配をかけるのは、どの世界の子供でも同じであろう。メイは
 相変わらず能天気に、柵をカジカジしている。

                                つづく


    < 食 い し ん ぼ メ イ ち ゃ ん > 

  メイは何でもよく食べる。栄養分をしっかりたくわえて、ぷっくりカッチリのい い体格を誇っている。だから、力が強い。果敢にケージの天井にもぶらさがる。

  その食いしんぼぶりが、養父母の格好の遊びの標的になろうとは!メイにとって、迷惑なこと、この上なしであろう。

  ハムスタ~飼育の座右の書である、かの「ハムスター研究レポート2巻」(大雪 師走:著、偕成社:発行)に紹介されていた「危険なお菓子」を、早速ためしてみるクレ・モル夫婦であった。

  ハムスタ~は大きな「頬袋」を持っていて、餌を詰め込みまくり、ぱんぱんのほっぺたになるのである。そりゃー、大量に詰め込むスペースが確保されてるものだ。そして、こっそり紙箱ハウスに持ち帰り、パラパラパラと頬袋から戦利品を出す音なんかを響かせたりする。

  この爆笑漫画「ハムスターの研究レポート」に、ポッキーチョコを与えるとその まま詰め込むので頬袋がうにゅーーんと伸びてしまうシーンが・・・。「危険だから折ってあげよう」と締めくくられていたのだが、悪魔のような養父母は、ニンマリ。

  ある日、ポッキーが特売になってるのを見て、意気揚々と購入。その夜、早速ためしてみた。きゃーーー、漫画と一緒ダ!全部入りきるわけないのに、スティックをたてたまんま一心に詰め込むメイ。慌てて、ポッキーを取り上げたのは言うまでもない。頬袋を突き破っちゃったらえらいことだ。命にかかわりまっせ。

 ところがだ・・・。うちのメイは、特別賢かった。2度目からは、ちゃんと自分で 適度な長さに折って頬袋に詰め込むのだ。親馬鹿なクレ・モル夫婦は、やんややんやと我が娘の天才ぶりを褒め讃えた。能天気な夫婦だということは、本人たちが誰に言われなくとも、十分にわかっている。

  どんどん、ヒマワリの種を手渡しては頬袋に詰め込むメイ・・・というのを繰り返し、メイの顔がコブラのようになるのを指さしては笑い興じる養父母でもあった。

  だぁーーーって、どっちが頭がお尻がわかんなくなるくらい、顔が膨張するんだもん。笑える笑える。コレコレ

  それに、夜行性であるハムスタ~は、昼間は起きたくても眠くて目があかない。でも、食いしんぼだから、食べ物の気配で起きてくる。それによって生じる悲喜こもごももメイの身の上にふりかかるのだ。

  さて、今回も、ある日のモルの日記から、メイの受難を紹介しよう。

  平成某年6月25日 モル日記より

     ~~ねぼすけ食いしんぼメイちゃん~~

  お昼、メイちゃんのぐっすりスヤスヤタイムに、いぢわるモルがメイちゃんケー
 ジに忍び寄り・・・。フッフッフッフ

  メイちゃんの大好物のヒマワリの種をいれた容器をガラガラ振ってみた。そした
 ら、食い意地のはった(誰に似たのやら?)メイちゃんは、ふらふらと紙箱ハウス
 から出てきて、その音の在処を探るべくウロウロ。

  でも、いちばん眠たい時だけに、思うように身体が動かない様子。目をあけよう
 としてもあかない。瞼に一生懸命力いれて、何とか目をあけようと頑張ってるのが
 見ててハッキリわかるんだ。瞼ピクピク。ゲラゲラゲラ

  でも、瞼が接着剤で張り付いたように、あかない! 糸のように細い、つむった
 ままの目が、マジに可愛い!

  で、ヒマワリ種ガラガラを止めると、メイちゃんは、目を閉じたまんま、紙箱ハ
 ウスの奥へと消えていった。

  あははは、こういういたずら、やめられないなー。

  いかにメイにとって受難でも、クレ・モル夫婦が、メイを心底溺愛してることに
 は違いがないのだ。



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