† ange plume †

† ange plume †

+++天国の犬+++


天国の犬

老人と犬が乾いた道を歩いていました。
両側は高い壁にさえぎられ、道からそれることはできません。
ふたりはずっと歩きつづけ、ある門の前にたどり着きました。
門の中を覗くと美しい草原や森が見えました。
ちょうど老狩人とその犬にとって申し分のない場所のようでした。
が、そこにはこう記されていました。
「私有地に付き、立ち入り禁止」
仕方なく、ふたりは歩き続けました。
今度は白い服を来た門番の立つ、美しい門の前に着きました。

「天国へようこそ!」門番は言いました。
老人は嬉しくなり、犬と一緒に中に入ろうとしました。
すると門番がこういいました。
「すみません。犬は中に入れません」


「一体、どんな天国が犬を入れないというんだ!
 もし一緒に入れないならわしも入らん。
 こいつは生涯、わしに尽くしてくれた大切な相棒だったんだ。
 ここに来てこいつを放り出すことなんかできるものか」

「どうぞお好きなように。ですが、ご注意申し上げておきます。
 この道を行けば悪魔がいます。そしてあなたを甘い言葉で誘惑してくるでしょう。
 どんな願いも叶えてあげると。ですが、あっちもやはり犬は入れません。
 犬を捨てない限り、あなたは永遠にこの道をさまようことになるのです」

老人と犬は歩き出しました。
今度は壁が壊れ、穴の開いているところに来ました。
中には老人が一人座っていました。


「すいません。ワシと相棒の犬はえらく疲れてしまってます。
 ほんの少しばかり、その穴の日陰で休ませていただけないでしょうか」

「どうぞ、どうぞ。あちらの木陰には冷たい水もありますよ。ゆっくりしてください」


「ところで、犬も一緒に入っていいんだろうね?
 ここに来る前に会った男から、ここらへんはどこも犬は立ち入り禁止だと聞いたんだが」

「もし、犬は入れないと言ったらどうしますか?」

「わしも入らんよ。それで天国にも入らなかったんだからな。
 門番に犬は天国には入れないといわれたんだ。
 だから、わしらは永遠にこの道をさまよって過ごすことにしたんだ。
 ほんの一杯の水と少しの日陰があれば十分なんだよ。
 でも、もしこいつは中に入れないというんであれば結構。わしも入らないというわけだ」

中にいた老人はニッコリ笑って言った。

「天国へようこそ」

「え?ここが天国?犬も入っていいのですか?何でさっきの男はダメだと言ったんだろう?」

「あれは悪魔です。彼は生涯を共にした友を快適さと引き換えにしてしまう連中を引き込んでいるのです。
 人々はすぐに間違いに気付くでしょう。でも、すでに遅すぎるのです。
 犬たちはすべてこちらに来ます。でも、いい加減な連中はあちらに行くことになるのです。
 神は犬を天国に入れないなんてことは許しません。
 だいたい、神自身が人の生涯の友達として犬を作ったのですから。
 死なんかにその友情が別けられるようにするものですか」


(作者不詳 翻訳:Lyubin)




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