１+１=？？？
君って、算数好き？
ボク、どうしてもよくわかんないんだ、算数って。
なんか騙されてるみたいで、どうしても納得できないの。
ねぇ、ボクの話聞いてくれる？
１＋１はいくつ？
小学校一年生、ううん、もっと前に初めて覚えた足し算。
答えはいくつ？
算数なら「２」
だけど･･･、本当に「２」だけなのかな？
違う答えもきっとあるよね。
ボク、ホントは算数なんて嫌いだ。
なんであんな事しなくちゃいけないんだろう。
どうして答えが一つだなんて決まっているんだろう。
みんな算数って答えが一つしかないから、覚えるのは簡単だなんていうけど、
ボクはそうは思わない。
だって、隣の高校生のおにぃちゃんが言ったんだ。
「１＋１＝２とは限らないんだぞ」って。
そのわけをおにぃちゃんに教えてもらった。
おにぃちゃんが学校で習ったんだって。
「水１リットルの分のカサに、同じカサの豆を足す。
そうすると決して足し算みたいに二リットルのカサにはならないって。
豆と豆の間のすきまに水が入り込むから二リットルには足らなくなるんだ」って。
ボク、実際におにぃちゃんと実験したんだ。
コップにいっぱいの水と、同じ大きさのコップに入れた大豆。
一緒にして測ったら、本当にコップ二杯より少し少ないんだ。
でも、ジュースと水を一緒にして測るとコップ二杯になって
１＋１＝２になっちゃうんだ。
せっかくのおやつのジュースが薄くなって、飲めなくなっちゃったのは残念だったけど。
でも、なんか不思議。騙されているみたいだった。
でも、これで僕は思ったんだ。
１＋１の答えは絶対に２だけじゃないって。
それからボクはいろんなことを考えたんだ。
１＋１って何だろう？って。
ボクと友だち。
１＋１は２だから二人。
でも、二人の力を合わせても同じように頑張るとは限らない。
ボクも、友だちも一時間かかって１０問出された宿題をやっと解けるんだ。
だけど、二人で一緒の部屋にいて２０問の問題をときなさいって言われたら、
できるかって言えば、きっと無理だ。
だって、一緒にいたらつい遊んじゃうもん。
問題なんていつもの半分もやれないよ。
だから１＋１は２でも、宿題のほうの１０＋１０＝２０ってことはできない。
間違いになるよね。
でも、でも、逆にネ。
お手伝いで重い袋を運ぶのなんかは違うよ。
仮に一時間で一人が５個しか運べないとするでしょ。
でも、二人が協力して力を合わせたら、きっと１０個以上運べるんだ。
だって、ボクと友達はそういう時にはいつも強力タッグを組めるんだ｡
だから、一人ずつでやるよりずっとたくさんのすごいことができるんだ。
これも１＋１は２だけど、５＋５＝１０以上になるから当てはまらないでしょ。
あとね、僕が困った時、一人で悩んでても、何にも解決にならない事もあるんだ。
そういう時に友だちがいると、いままで浮かばなかったいい解決策がふっと浮かぶ事もあるんだ。
だって、ボクとは違った考えを持っているから、相談すると良い事だってある。
解決策が浮かばないにしても、ヒントを言ってくれたり、話を聞いてもらっているうちに
気持ちが軽くなる事もあるんだ。
これだって、１＋１の考えじゃ、あらわせないよね。
それから、これはすごい事なんだけどさ。
ボクの家のオス犬と、おばぁちゃんの家のメス犬を合わせたら、６匹も子どもを産んだんだ。
これだって、１＋１だよね。
このときの１＋１の答えは８。
ネズミなんかだともっと生まれることもあるから、答えはたくさんになるよね。
ほら、１＋１の答って、一つじゃない。
それなのにさ。
誰も分かってくれないんだ。
この間、僕先生にこれを言ったんだよ。
だけど相手にしてくれなかった。
答えが一つじゃないのは足し算だけじゃないんだ。
ボク、他のもいろいろ気付いたんだよ。
聞いて。
今度は引き算。
一袋３個入りのアンパン。袋に入ったままならこれで一つ。
袋を開けて一個食べたら残りは二個。
一袋引く一個なら、１－１だから０になる。
でも、本当は食べたのは中身だからそれを考えれば、１－１は２になっちゃう。
先生にどうしてって聞いたら、それはヘリクツだっていわれたけど…。
単位をそろえるっと、誰がそう決めたのさ。
数でいえば１と１じゃないかって、僕は思うんだけど。
だから、ボク納得できないよ。
どうして袋と数で考えちゃいけないのかなぁ。
それを教えて欲しいのになぁ。
今度はちょっと難しくなるよ。
分数だって、変なんだ。
「太郎君はパンを２個持っていました。おやつの時間に友達に分ける事にしました。
太郎君を合わせて８人が同じだけに分けるにはどうしたらいいのでしょうか」
二個持っていたのの二分の一は？一個だよ。
一個の半分は二分の一。
その二分の一はって言えば、今までの二分の一をまた一個として考えるんだから
二分の一のはずなのに、四分の一だって。
じゃぁ「二分の一を一だと考える」なんていわなきゃいいのに。
一つずつ考えて、本当のパンとかを使ってみれば理屈は分かるけど、でも、なんかしっくりしない。
最初二つあって、それを分けた一個ずつをそれぞれ分けるって言えば分かるけどさ。
半分を半分にするって言えばいいのに。それなら分かるのにさ。
なんで教科書とか先生って、難しく説明するんだろう。
何で分けたのをまた分けるんだろう？最初から一つを４つに分ければいいじゃん。
しかも、その時にもとのを一個と考えて、その半分？？？
もとが二分の一なのになんで一個に増やすのさ。
しかもさっき二分の一にしたばっかりなのにさ。
あ～めんどくさい。
何を言っているのかボクも良くわかんなくなってきちゃった。
今話したのって、あってるのかな？
ともかく分数って、めんどくさくって、わかんないってこと。
それだけは分かってもらえたよね。
でも、これって、普通の生活していく時にどこかで使う事ってあるのかな？
ケーキ分ける時だって、ママは何となくこの辺かなって切ってるしさ。
自分の文をすこ～し大きくしておいても四等分だって。
う～～ん、分数って、どうしても必要なのかなぁ？
割り算も、やっぱり変。
飴１０個を三人で分けるといくつ？
答えは３個あまり１。
これ、よく見る問題だよね。
でも、友だち同士で遊んでて、持ってきたおやつに余りが出たことってないよね。
別にいいじゃんか、残りの一個誰がもらうかじゃんけんで決めたって。
一番強いいじめっ子が全部持って行っちゃう事だってあるしさ。
みんなが同じ数でなくてもボクはいいと思うんだけどな。
それにね、この飴は嫌いだって言った子はいらないだろうしさ。
子どもの世界の微妙な所、大人って考えてないんだよな。
大体、来る子どもの数知ってて余りが出るようにくれる大人の方が変だよ。
わざと喧嘩のモト作ってるのか、それともその大人の方こそ九九ができないんじゃないかなって
思っちゃうよ、ボク。
でもね、もっと分からないのが、負の数字。
マイナスがつくって奴。
マイナスって何？って、ママに聞いたら借金だって言ったんだ。
そこまでは判ったよ。
で、借金＋借金は大きな赤字。
これも分かる。
借金－借金。これも返済すれば借金は減るから分かるんだ。
ボクもゲームを買う時にお小遣いが足りなくて、ママに借金したから、
すっごくよく分かるんだ、ここの所は。
借金って、いけない事だってこともね。
でも、ここからが全くわかんない。
借金に借金をかけたり割ったりすると、どうして借金がなくなっちゃうのかが不思議なんだ。
借金が何倍になっても、借金は借金だよね。
なんかしてなくなっちゃうなんてこれって、踏み倒し？
それとも、最近テレビで見た自己破産ってやつなのかな？？？
よくわかんないや。
でも、こんなに大きな借金なんて大人の世界の話だから、あんまりボクにはわからなくても
いいんじゃないかな。
ね、算数って、すっごく不思議でしょ。
本当に良く分からないし、答えが一つだなんて誰が言ったんだろう。
だからね、これからはボク、「１＋１は？」って聞かれて、「２～～」なんて言って、
写真撮る時にのんきに笑えないや。
ボクの思ってる事はこれだけ。
君もそう思わない？
え？良くわかんないって？
うん。僕も良くわかんなくなってきた。
でも、聞いてくれてありがと。じゃ、またね。
－終－
☆私にとってはじめて書いた短編です。
どうやっても一話完結で、そのままいくつかが続く長編しか書いたことが
無かったので、ちょっと自分でも驚いています。
こんな感じのものはいかがでしょうか？
小中学生には納得、実感できるかもしれませんね。
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