雲の上はいつも蒼空

雲の上はいつも蒼空

☆ポーランド


ワルシャワ
クラコフ


夜行列車に乗って、初めての地ポーランドはポズナニに…。

92年10月23日(金)[109/150] 曇り、晴れ

ポズナニには5:30に到着予定。
5時頃に起きた。

身支度をして、ヤヌシュさんと話をしていると、
飲み物の車内販売が回ってくる。

彼は私に紅茶をご馳走してくれた。
私が支払おうとすると、
とんでもない!といった具合に、
「だって、ここはもう僕の国なんだよ!」と言う。

自分の国にやってきた旅行者を歓迎するのは、
当然のことだ、という温かさや、
自分の国への誇り、私を思いやってくれる気持ちが、
その様子から伝わって来て、なんだかじんとした。

ありがたくご馳走になった。

紅茶はポーランド語でヘルバターと言うそうだ。
コーヒーはカーバー。

ヤヌシュ氏と別れ、列車を降りる。

まだ、外は暗く、かなり寒い。
ここは既に冬、といった雰囲気だった。

割合大きな駅には人が結構たくさんいる。

5時半着の列車で着くとは言ってあったのだが、
あんまり早くに訪ねては迷惑だと思うので、
いろいろと用事を済ませてから、
構内のベンチに座って時間をつぶす。

これから訪ねるアンナさんとは、
ヴェローナのユースホステルで会った。
50代後半くらいと見える女性で、
ポズナニでお医者さんをしていると言っていた。

イタリアには休暇で来たそうだ。

彼女は、横浜に住んでいる日本人の友達と連絡を取りたいのだが、
住所を調べて教えてくれないかと話し掛けてきた。
当時横浜に住んでいた私には、
調べてみれば何とかなりそうだと思い、OKした。

彼女とは他にも色々話が弾み、
ポーランドに来るなら、是非私の家にいらっしゃい、
と言ってくれた。

お邪魔して、今日はいろいろお話をして、
どこかいい宿を教えてもらって、この街に数日いようかな、
…などと思っていた。

-7時を過ぎたので、教えて貰ったとおり、
トラム乗り場へ行き、アンナさんの家へ向かう路面電車に乗る。

街は、プラハとはまた違った雰囲気。
田舎ではなくて、人のたくさん住んでいる住宅街って感じ?
朝早く薄暗いせいで、あまり華やかには見えないが、
泥臭い感じもしない。道は広い。

7時半頃、アンナさんの家へ到着。

彼女は私を歓迎して家に招き入れ、
この部屋とベッドを自由に使ってね、と部屋に案内してくれ、
シャワーをどうぞと言ってくれた。

私を泊めることが当然と思って準備してくれていたことにビックリ。
ただ一度、旅先で会っただけの私を、そんなに信用していいの?

彼女の様子から、遠慮してはかえって失礼だ、という気がした。
私はありがたくご好意を受けることにし、
シャワーを浴びて、部屋で休ませていただくことにした。

以前も書いたが、
私は夜行列車があまり好きではない。
以前盗難に遭った、ということもあるし、
夜行明けは疲れて半日から一日、何も出来ないことが多いからだ。

真正バックパッカーなら、そんなことはあるまい。
私はバックパッカーでも軟弱な部類なのだ。

というわけで、この時も例にもれず、ものすごく疲れていたので、
シャワーを頂いて、ご自由に、といわれた部屋のベッドで、
10時から昼頃まで、眠らせていただいた。

初めて訪れた国で、よそのお家でこんなことになるなんて、
信じられない思いだった。

ベッドに横になって部屋を眺めると、本棚に一杯の本が見え、
私は、誰かが使っていたお部屋を空けてくれたようだなぁ、
…とか思いながら、あっという間に眠りの世界へ入っていった。


二時間くらいぐっすりと寝て、
14時頃お昼御飯をいただく。

出して下さったのは、「ピロギ」。
アンナさんによれば典型的なポーランド料理だとのこと。
家庭的、というより家庭そのものという感じのおもてなしに感謝。

別メモより、「ピロギ」とは…、
見た目は餃子のような感じ。

皮の中にマッシュルームを炒めたものを入れ、茹でる。
茹で上がったら、ベーコンの油をかけて食べるというもの。
皮はひだひだをつけずに閉じてあって半円形。

ポーランド料理は全般に薄味で、
けっこう油を使うものが多いかな?という印象だった。

食事の後、アンナさんのお孫さんで、
1歳のテレサ(テレスカ)と遊ぶ。
娘さんが結婚して近くに住んでいるため、
こうして遊びに来ることが多いようだ。

お目めが大きくて、とっても美形の赤ちゃん!
なついてくれて楽しい時間を過ごした。

アンナさんが、ドライブに連れて行ってくれ、
カテドラルなど、ポズナニの街の中心地を案内してくれる。

とても巨大でロシア的な印象のモニュメントも見た。
戦争関係のもののようだった…。あれは何だったんだろう?
アンナさんが説明して下さったはずだが、メモしておくべきだった。
資料もないので確認できず、残念。

夕方からはコンサートに連れて行って下さるという。

プラハでよく出かけた気軽なコンサートかと思いきや、
立派なホールで行われ、皆が盛装して集う正式なものだった。
私は軽装だったので最初のうち恐縮していたが、
演奏の素晴らしさに、そんなことをすぐ忘れてしまった。

ポズナニフィルハーモニーオーケストラと
ポーランドの指揮者、ソロバイオリニストによる演奏で、
リヒャルトシュトラウス、ブラームスなどの曲を次々と、
19時から21時半のたっぷり二時間半、幸せな時を過ごした。

アンナさんのもてなしに感謝。
こんなに良くして頂いていいんだろうか?

個人的なこともいろいろ話した。
ご主人が亡くなられて、お母様と社会人の息子さんとの三人暮らし、
近所に娘さんご夫妻と、孫のテレスカがいる。

アンナさんはお医者さんだが、
この国では、医者はあまりお金持ちではないそうだ。

確かに生活ぶりはつましさが感じられるし、
最初ヴェローナでお会いした時も、勤続何十周年の旅行で、
ユースホステルに泊まっていたのだから、
贅沢な生活をする人の多い、日本の医者とはだいぶ違う。

でも、旅先で出会っただけの私を、こうして、
時間や手間を惜しまず(もちろん費用も!)もてなして下さる。
その心の豊かさは真似の出来ないものだと思う。

夕べ会ったヤヌシュさんからも、このアンナさんからも、
ポーランドの人からは、これまでどの国でも感じたことのない、
細やかなもてなしの心を感じる。
しかも喜んでして下さるので、こちらも遠慮をするというより、
喜んでご好意を受けなくては、という気持ちになる。

思いもかけない展開だったが、とても幸せな一日だった。

シャワーをいただいて、23時半ごろベッドに入る。




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