■□■いぬ・かめ・花もある家□■□

【　ねずみ講　】

ささやかだけど、ねずみ講体験の話しです。

12年前　30代前半、職場の同僚から突然　『いい事があるの』などと誘われた。

同僚といっても、年齢が　ひと回り年下の女の子だ。
年齢の割には　結構大人びた…と言うか、大人っぽく見られたい性格かな。

一人暮らしをしたかったせいか、部屋を借りたり　クルマを買ったりしたかったのか。
早くたくさんのお金をほしかったようで、毎日のように　何か仕事以外にも
精を出しているようだった。
仕事中に　寝落ちしそうなくらい、夜眠る時間も惜しんで　何かをやっている。
店長に叱られながら・・・

特に理由を聞きもしないでいたら、ある日　近くでいい事があると誘われ
最近忙しそうにしている事なのかな　と思った。

普段着やGパンでなく　かしこまった服装で着てほしいと言う。
ワンピースとか固そうなスーツなんて持っていなかったので、好きな白いブラウスと
紺色の長いスカートで（←これ　高かったし！）あたしのクルマで行った。

プロデューサーがなんとかかんとか･･･　と途中　彼女は言っていた。
そんな職種、テレビの世界でしか聞かないなぁ～、何か派手な事か？　と思っていると
成田の　こぢんまりした会館の、体育館のような広い会場に連れて行かれた。
あたしより若い男女が大勢と、年配の人が少しいた。
みな、きちんとした服装をしている。まるで　祝言や祝い会場のようだ。
受付をした。セミナー参加費用　5000円を払わされた。

体育館のような広い場所では　数百人の人間が入り、ざわざわしている。
大きな舞台が明るく照らされ、そこに　プロデューサーと呼ばれるらしい
これもまたきちっとした服装で、背の高い　かっこいい男たちが、3人ほど現れた。
舞台の上の人らも　下の人らも、立ったままだったかな。1時間ぐらいやってたかな。

カタログから選んでモノを買うんだって。額は高いけど　いい品質なんだって。
最初に　自分が高いモノを買っておくと、後で還元される金額がいいんだって。

自分の知り合いや親戚を仲間に入れなさいだって。
その新しい仲間も、その周囲の人を誘ってくれるんだって。そうやって　自分の下には
子分みたいに　半永久的に仲間が増えていく仕組みなんだって。

そして　その人たちは、生活のための必需品を必ず　そのカタログから買うから、
自分には　印税収入のようにお金がいつまでも入り続けるんだって。
自分が　生活に要るモノを買う時、子分が増えれば増えるほど　その買い物の割引額が
大きくなるんだって。
そうすると、今ボクが身に付けているような　舶来のお高～いお洋服を買えるんだって。
かっこいぃ外国のクルマにも乗れるんだって。

そうなるには、途中で諦めちゃあいけないんだって。
仲間を誘う事も　買い物をする事も続けなさいだって。
（その子分たちの働きで、あんたはかっちょいい暮らしできるわけ？と思った）

この仕組みは、ねずみ講ではないんだって。

あんた！それを　世間では『ねずみ講』って言うんだよ！

と言いたかったが、そんな事言えるわけがない！　これに　はまっていたんだわ、彼女。
かっこいいオトコマエ！今あんたが説明した仕組み、それこそをねずみ講と言うんだわさ！

同僚の彼女にも　はっきりと教えたかったけど、彼女の性格を考えると
言っても無駄だろうと思った。しっかりしているとは言え、その　我が強く自信の強い分
あたしの説明を聞き入れて　素直に思い直すとは思えない。

自分で体験して　本当の姿・汚い仕組みを実感したらいいかな　と思った。

数週間後　また誘われて、今度はクルマでこ1時間かかる会館まで行った。
また　あたしの運転。　また　セミナー参加費5000円。
きちんとした服装の理由は、年配者や大人が見た時　若い人らであっても
いい加減な人間の集まりではないと見えるように　そうしているんだとか。

彼女はたぶん、まだ　ろくに儲けは出ていないんだろう。一生懸命だ。
彼女が個人的に勧誘を受けたらしい　先輩みたいなオトコにも、会わされた。
このオトコ　あたしより年下だが、彼女にとっては年上の　相当頼りにしている人物らしい。

でも、これが彼女の致命傷になった...　あたしにとっては、救い　と言えたかもしれない。
このオトコの顔･･･その顔が　あたしには受け入れがたかった～
顔がいやだったぁ～あ。
『何だか何となく　理屈でなく虫が好かない』とは、こういう事なのかなぁ　と思った。

会社で言えば、彼女の直属の上司みたいな人なのかな。だとしたら、
彼女の勧誘で組織に加わるとすれば　あたしもこいつを頼りにして？相談して？
あたしが勧誘をしたり　買い物したりすると、こいつもお得なのか…？

(^o^;)うっわぁ～～あぁ････　ぜったいに　いやだわさ・・・・

そんな時、同僚の彼女が　中古車を買ったのかな。
なのに、居眠り運転だったのか…　事故をしていまい、人身事故ではなかったものの
人の家の塀を壊して、お金がかかる事になった。

気の毒と思い、あたしはカタログから　適当な買い物をして
ちょっとだけ助けてやろうと言う気になった。　（本当に助けになるのか…）
14万円だったかな、消臭と芳香効果のある合成素材の観葉。
注文をしてから数日後、あたしも1人くらい誘ったほうがいいのか
という気持ちと　相談する気持ちとで、当時仲良くしていた中で　最も親身に話しを
聞いてくれそうな　5才年下の男友達に電話をかけた。

今風にかっこよくやっているけど　ねずみ講という事や　一応消費者の立場で
やってみて、勧誘は　たまに誘ってみたらいいかな　などと話してみた。
互いに　性格をしっかり知っている、男女であっても親友の関係だった彼は

『ありんぼちゃん、友達なくすよ』

短い一言をずばっと言ってくれて、それから例の…顔が気に入らないオトコの事もあって、
やっぱり　この組織に入るのはやめる。観葉を買うのもやめる事にした。
同僚の彼女にも　そう告げた。

彼女はやっぱり　例のいやな顔のオトコに相談したらしく、3人で会う事になってしまった。
お金を返してもらう事もあったので、わざわざ　またこ1時間かけて出かけ、
ファミリーレストランで会った。

あぁ～いやな顔だ･･･。
人間的には　嫌いだとか気が合わないだとかは、何も感じないんだけど、顔がどーしてもいや。
ねずみ講に勧誘しているんだから、実際　人間的にもよくはないけどね。

しつっこくしつっこく　説得された。こっちも　いっこもゆるがない。ねずみ講なのは確かだもん。
（そうは言わなかったけどね。言ってもしょうがないでしょ）
やっぱりお金が惜しくなったのか　と、失敬な事も言われた。
そんなハシタガネ、しっかり働いてたら何ともない。このコに　今ちょっとだけでも
助けになったらいいかと思っただけ。
（本人にとってはよくない事と言われそうだね。いずれわかる日が来る　賢いコだと思ってた）

だけど　いやがおオトコが言うには、後で　あたしは後悔するんだって。
今はやめてしまっても　数年後には日本全国民が　この会員になる時が来るんだって。
その時に　あなたはどうしますか？　だって。
（日本全部がねずみ講に入るわけがないじゃん！）と思いつつ、そんな時が来るんだったら
その時に周囲に混じって従うでしょうよ　と答えた。
その辺でやっと　そいつは諦めて、お金の入った封筒をあたしに渡した。

その後も　同僚の彼女はけろりとしていて、あたしもそんな性格を知っていたし
その後も　同じ職場でしばらく一緒に働き、少しだけどお金を貸してやったりしていた。

約半年後、同じような時期に　2人ともその会社を退社し、あたしは転職。
彼女は　たぶんねずみ講に専念したんだろう。

また1年半ぐらい後、あたしは遠く大阪に嫁いでいた。

テレビのニュースで、あの組織の名が出た。
マルチ商法のサンフラワーを警視庁が摘発。幹部十数人　逮捕。。。だって。

あぁ～～あ、日本中がサンフラワーの会員になるって　自信満々だったのになぁー...

30万人もの会員を作っていながら、いい思いをしていたのは　2％ぐらいだって。
ねずみ講って　そんなもの。

ちょっとだけ有名な　サンフラワー事件なのでした。

調べると　こんなのでした↓

ねずみこう【ねずみ講】

〔「鼠講」とも書く〕
会員を鼠算式にふやし、子会員が講元・親会員・数代前の親会員などに
金を送る事を　順次繰り返して、利益も鼠算式にふやそうとする金融組織。

1979 年（昭和 54）無限連鎖講防止法で禁じられた。

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