漫画家・写真家玉地俊雄 紫煙のゆらぎ

漫画家・写真家玉地俊雄 紫煙のゆらぎ

2008.05.22
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カテゴリ: 紫煙のゆらぎ

              天女下凡

 “ LEGONG FANTASITIQUE 1 ”


この絵は早い段階で仕上げられた作品です。

608mm x 500mm と少し変形ですが、作品としてこの大きさでなくてはならない、
と感じて変形は変形として創りました。

MO 厚手手漉き和紙・青墨・透明水彩・紅朱・色鉛筆、A1パネル張り額装済。

最初ウブドの女性たちの、「天女下凡」に驚いたとき、僕の本職である漫画・イラストで表現して果たして良いのかどうか激しく疑問を感じました。

この絵画の次にはファンタスティキュ2も完全額装された作品として保存して在ります。




しかし、御見せしたくはありません。




マネージャーも周りの人々も良い評価をくれますが、僕にはそう感じられません。

僕の、終生心の師と仰いだ故手塚治虫先生による、強烈な癖の抜けきらない画風は、
玉地画、として誰が見ても玉地が描いたと1目でわかるキャラクタァーになっています。

手塚治虫先生の言われた或る部分。

「玉地さんにしか描けない画風」

手塚治虫先生という巨人の呪縛から抜け切る事が出来ません。

だから、僕は漫画を本格的に描く事をしませんでした。

「天女下凡」とは読んで字のとおり、

天女のように美しい女性が平凡な世俗に下ってこられたというような意味で使われます。

「1見傾城・2見亡国」という言葉もあります。

ひとたびまみえば城が傾き、ふたたび看れば国が滅びる。

「天女下凡」は「西施」* ( sei-shi )という、世の美質をはるかに飛び去ったような美女の、
美女ゆえの激動と薄幸の運命と死の話があります。

その最期は、敵国を亡国せしめんと生贄にされた彼女を、役目を終えた後に、
自国の亡国を恐れた王妃の手に係り、錘りと供に水底に沈められる、
という、あまりの美しさ故の、哀しい結末が彼女に与えられたのでした。

イタリアの作曲家ジャコモ・プッッイーニが、キャンサァーに侵され、余命いくばくもナシと決心して、 大衆にこび続けた甘いメロディをほかし投げて、絶筆となった作品を残しました。

「トウーランドット」という、中国の「西施」とまではいかないが「北施」ぐらいの、
しかし、とんでもない結婚恐怖症候群の、いじわるで、氷のような冷たい心に、
分厚い氷河が乗ッ掛かって、その底の底がガチガチになったような、
美しいお姫様に一目ボケして、ただ一人の従者で彼を密かに慕うリュウ、
との運命のハザマで、栄光と悲劇の死とに分かれ行くオペラがある。

静かちゃんが、1・2位のお嬢ちゃんがひっくりこけて
棚から金色の鏡餅もらった時のBGM「ネッスンドルマ・誰も眠ってはならない」
は好きではない。

いかにも、イタリアオペラの聞かせどころが大言壮語をわめき散らしているようで、
どちらかと言うとキライだが、その後に続く、
「ぉお リュウ なんて可愛そうな」

書きたくは無いけれど
これを書いている今も、涙が出てくるほど美しく短い曲を書き終えて彼は亡くなった。

初演の指揮者アルトゥール・トスカニーニはここで指揮棒を置いた。

補筆完成されていたにもかかわらず指揮棒を置いた。

「友人プッッイーニはここまで作曲した」

ハッキリ言って静かちゃんのネッスンドルマを聞くたびに嫌な思いがしてつらい。


僕はマリアカラスのトゥーランドット姫。エリザベートシュワルッコツブのリュウ、
ミラノ・スカラ座のCDを持っている。

第3幕は Liu......bont! 
までを、わざわざコピーして、ここまでで切って、ここで終わる状態にして聴いている。

消え入るような哀しい女声合唱で終わる「ぉお リュウ」
の後は見ない聴かないスコアもいらないをずっと続けている。

W. A. Mozart の K 626 も「涙の日」の「あぁああめえぇ~ん」の後も聴かない。

そして、その第一幕で3人の道化大臣ピン・ポン・パンが王子カラフを説得する。

「3つの質問に答えられなかった多くの王子たちは皆首を切られたよ」
「あんなの裸に剥いたらだだのお肉の塊だよ」
「煮ても焼いても食えないお肉だよ」

それでも、落ちぶれて国を追われた王子カラフは、ボロボロの父王と彼を密かにしたい続ける唯ひとりの従者可愛そうなリュウを捨てて城の中へと向かう。

向かわなければ歌劇にならないのは仕方が無い。

3つの謎かけのような質問に全問正解を成し遂げたカラフ王子は、
逆に、トゥーランドゥット姫に質問し、その答えを求める。

「わたしの名を明日の夜明けまでに答えろ。答えられなければ約束どおりわたしの花嫁となれ」
北京の街じゅうにふれがまわされる。
明日の夜明けまでに、この異国の男性の名を明らかにせよ。誰も眠ってはならない。

兵士は、やがてカラフの父王と従者のリュウをトゥーランドゥット姫の前へと引き連れる。

そして、無残にも

リュウがカラフの名を絶対に明かす事無く、
痛め責め殺されるのを見ているカラフの阿呆も卑怯者の極みだ。

カラフなんて二葉亭四迷。( くたばっちめえ )
リュウは、カラフと氷のような冷たい心の姫トゥーランドットが結ばれますようにと、
最期の叫び声を吐き出すように呻いて絶命する。こんなっ!

ヒドイ!

このオペラの補筆不完成の終結部を見たいか?聴きたいか?理解したいかぁっ!

僕は最初にトゥーランドット姫を「北施」と書いたが、これは誤りであり訂正する。

トゥーランドット姫は「西施」をみなそこに沈めた王妃である。そしてリュウの魂と愛情こそが「天女下凡・西施」に違いない。

プッッイーニは、本気でこの終幕。

リュウの死によってトゥーランドット姫の心が開き、カラフと幸せになれる。

等との世迷いごとのトラウマを本気で書き上げようとしたのか。

最後まで見ていない聴いていない僕の勘違いだろうか。

僕にとってはいまだ絶対に必ず否である。

女と男の愛情とサガ。
美しきなにかへの憧れと渇望。

女性からみればどう感じるのかがわからない。誰か教えてくださいませんか。

でも人前で、僕にこの話をしろというのだけは勘弁してください。

音楽の本という歌劇の本が出ています。

誰も誰一人として望めなかった映像が、チャン・ィイモゥの映像と、
夜の紫禁城を舞台にしたオペラの実況録画としてあります。
あのとんでもない中国軍や、越国・荊棘花( kei-kyoku-ka )とみまごうばかり。
武術舞踏の曲芸女性の、血も凍るDVDをお買いなさい。

ただひとつ変なのは、このトゥーランドット姫の登場する時のテーマ曲。
‘ やぁまのお寺の鐘が鳴ぁ~る ”にとても似たメロディなのが不思議を誘う。

僕は昔たぶん8千円ぐらいで手に入れましたが、日本橋の中古屋で3千円しません。

音楽の美質プッッィーニの本当に書き残したかった彼の本音が知りたいと思う
ほとんどいないだろうあなた。

その気になったらお買いんなさい。
でも、リュウの死の後は封印してください。


これが理解出来て仕舞うと、おいそれと、美人画が描けるなどという馬鹿な考えと、
自分の画力は何であるのか!という巨大な壁に立ち向かわざるを得なくなり、
行き場を失い立ち止まります。

冗談だとは思いますが、僕が去年の8月以降に作品開示を始めた事に関して、

「遅れてやって来た天災」

僕はケネディの情婦ではありません。

「天災にはそういう人が多いものですよ」

関淳一翁さま、それは違います。僕は狂人です。

こんな言葉を言って僕を惑わせる人々が居るのは事実ですが、
僕は、ウォーキング・ウイズ巨星・巨人手塚治虫先生。

と、いう呪縛からいまだに抜け出せていない。
と、思って一生を終わると感じています。

「先生と呼ばせるほどの馬鹿なやつ」
「先生」という言葉は嫌いなのですが、最近は聞き流すように努めていなす。
「先に生まれているだけですから」

井手康人とか、オカマの男色不美人のような女しか書けない、
おんなじブス専キャラクタァー専門の、崖の上のポニョで大恥こいて、
幼児を恐怖のあまり泣かせた、宮崎駿の思い上がりの南極点
よりはましだと思っているけれど、世界には絵がうまい人は何万人もいる。

だから、ウブドまで出向いて世界のアイドル、ユリアティやビダニや、
大王チョコルダ氏に、呼び捨てにしてもらえるのがとても嬉しいのです。

手塚治虫先生は僕が大学生のときに描いた駄作を見られてこういいました。

「うまいね。だれが書いたのこれ」

まんが博のある部屋で怒鳴り倒された後にもこう言われました。

「玉地さんは描けるんだから描きなさい」

ありがたい師の言葉でしたが、天女下凡という大きな、巨大な美質を前にして、
僕は、卑怯にも写真という手段を、写心という技法で表現する途へと逃げ込みました。

ある意味で、玉地節を強く醸しすぎる絵という誤解から解き放たれた写心作品群が
数多く出来上がったのではないだろうかと感じても居ます。



その結果は読者諸君の判断に任せます。

この絵画作品は印刷流布されています。
無体財産権が玉地俊雄に発生していますので無断使用しないで下さい。


社団法人日本漫画家協会会員・参与


                               玉地 俊雄

この絵画作品は僕の歿後、バリ島ウブドのチョコルダ氏の王立美術館に寄贈される、との言質による約束と取り決めが成立しています。

                *********** No 46 *** 参照


最終更新日 2008.05.20 07:32:50






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最終更新日  2008.10.03 13:48:34


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