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K/Night
天生水生サイド
でも、まだ君との思いではあの時の、幼いときのまま。
覚えているよ。忘れるはずがない。
君がいなかったら今の私はなかった。
・・・会いたい。
今の君は、私の知っている君だろうか?
ねぇ、竜ちゃん。
起きて窓の外を見ると、雨が降っていた。
まるで自分の心を映しているようだ。
「・・・憂鬱だな。」
呟く言葉は雨音に消えて。
思わず溜め息を吐く。
「・・・行くか。」
長い黒髪を手梳で整えながら、天生水生<あもう みなぎ>はベッドから起き上がった。
どうしてこんな事になったんだろうか・・・。
黒い背広に身を包んで、水生は疲労気味に廊下を歩いていた。
まだ自分は卒業もしていない、高校生なのに。
見知ってもう慣れてしまった警視庁の廊下を唯々黙々と歩く。
「とりあえず、あの課に行くか。」
水生は1つに結わいた髪に少し触れながら、楽しみなのか嫌なのか、複雑そうに顔を歪めた。
と、その時、
「大丈夫ですか?上杉先輩。」
目の前で大量の書類を持った2人の警官が書類保管室の前にいるのを見掛けた。
「うーん。ドアノブに手が届かないんだよ。」
上杉と呼ばれた男が、書類を持ちながら片手をドアノブを掴むべく動かしていた。
あの調子だと書類を落としそうだ。
「・・・・・・。」
見ていられなくて思わず早足になる。
上杉がドアノブを掴むより早く、水生はドアノブを回してドアを開けた。
「どうぞ。」
隣にいる2人に声を掛ける。
「あ、ありがとうございます。」
もう1人の―――どうやら男のようだ―――警官が先に礼を述べる。
そして、
「ありがとう。」
上杉が子供のような無邪気な笑顔を浮かべた。
思わず息を呑む。
あの、竜ちゃんの笑顔と、まるで一緒だったのだ。
「・・・どうしたんですか?」
首を傾げる上杉。
慌てて首を振って、
「いえ、なんでも。」
水生も笑顔を浮かべた。だが、どうしても気になって、
「手伝いましょうか?」
無意識のうちに言葉が口から出ていた。
気付いた時にはすでに遅く、嬉しそうな上杉の顔。
「良いんですか?うわー助かります!」
どうやら本当に困っていたようだ。
「良かったな、安修紀。親切な人がいて。」
「本当にありがとうございます。先輩と2人でやるには書類が多すぎて。」
安修紀と呼ばれた男も、嬉しそうで。
「まぁ、良いか。少しくらい遅れても。」
今更だし、勘も取り戻しておきたかったから、水生も部屋に入って2人の手伝いを始めた。
さすが3人というだけあって大量の書類はすぐになくなった。
上杉と安修紀は水生に何度も礼を言って、部屋を出て行った。
自分しかいなくなって、水生は息を吐く。
「・・・私も行かなくてはな。」
部屋を出て、小走りに行くべき場所に向かった。
捜査課。
そこは、水生が9年くらい前から足を運んでいた場所だった。
理由は父親の手伝いの為。
否、手伝いの範囲を越えているだろう。実際に事件の捜査をしていたのだから。しかも、今も昔も良く間違えられているのだが、女の自分を、だ。
さすがに9年前、9歳の時はデスクワークだったが。
この頃は学校の方が忙しくてここにはあまり来ていなかった。
そうしたらどうだ。
いつの間にか父親は捜査課から移動していて、さらには空いたポストに自分を入れると言う。法律違反だろう、と言う言葉は虚しくも父親やその親友の耳を通りすぎるだけだった。
最終的には2人に泣き付かれる事になって、渋々引き受ける事に。
そして今に至る。
「・・・・・・。」
目の前の扉はまるで大きな壁のようだ。
そしてその奥には、もう戻れそうにもない世界が待っている。
どうせ将来はこの世界に来ると思えば楽なのだが。
「しかも・・・聞くところによると、私に1人、パートナーが付くとか言ってたな・・・。」
そして相手はそれをOKしているらしい。
パートナーが18歳で女、だなんて知ったらどう思うのだろう。
「その時はその時か。」
いい加減、何時までも扉の前に居るわけにはいかないから、水生はドアノブに手を掛けた。
扉を開く。
「来たね。水生君。」
父親の親友、立本久嗣〈たちもと ひさし〉が水生に気付いて立ち上がった。
この課でのトップ、警部である。
「もしかしたら、来ないんじゃないかって思っていた所だよ。」
そして課の全員に声を掛ける。
「皆、こっちに集まってくれるかい?」
手招きをされて中に入る水生。辺りを見渡してみると、顔見知りが殆んどだ。その中に、
「・・・あ。」
上杉と安修紀の姿もあった。
・・・交通課とかだと思っていたんだが。
人は見掛けによらないな、苦笑しながら思う。
「今日からこの課に配属することになった天生水生君だ。知っている者も多いと思うがね。」
それから立本は水生に顔を向ける。
「天生水生です。まだ未熟者ですが、よろしくお願いします。」
軽く頭を下げる水生。すかさず立本が、
「未熟者ではないだろう。皆、分からない事があったらこのベテランの水生君になんでも聞きなさい。」
言葉を訂正して、
「あとは、水生君のパートナーを紹介するだけだね。おいで、竜矢君。」
上杉にと手招きした。呼ばれた上杉は、驚きながらこっちに来た。
「竜矢君、前にも言った、君のパートナーだ。ほら、自己紹介して。」
「・・・あ、そうか。」
ようやく思い出したらしく、先刻見せた笑顔を浮かべる。
「・・・俺、縁があるみたいだな。この課の巡査をしている、上杉竜矢〈うえすぎ りゅうや〉です。よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしく。」
差し出された手を握る。大きな手は、暖かかった。
「ところでさ・・・。」
「ん・・・?」
上杉が何かを言い出そうとした、丁度その時、課の電話がなった。すかさず立本が受話器を取る。
「こちら、捜査課・・・・・・。」
受話器越しに聞こえてくる声。立本の表情が変わる。
「出動要請だ。早速だが、水生君、竜矢君。2人でする初仕事ということで、行って来なさい。」
簡略に言えば、行け、ということで。
ニッコリと笑う立本を前に、水生と竜矢も笑って。
1分もしないうちに、2人は車へと乗り込んで、事件の起こった場所にと向かった。
「さっき、言いかけた事は?」
覆面パトカーに乗って、始めに口を開いたのは水生だった。運転席に座った上杉が、あぁ、と声を溢して、言葉を続ける。
「いやさ、ベテランって言ってたから、何年やってるのかなって思って。それに、何て呼べば良いのかなって。」
助手席に座る水生は隣を見る。
自分のパートナーになった上杉の、黄がかった茶色の、首にかかるくらいの髪が目に入った。年齢はまだ聞いてはいないが、童顔だから実年齢より若く見られるだろう。
「呼び捨てで構わない。本当なら、私が敬語を使わなくてはならないんだからな。それと、私はこの仕事を9年している。他に質問は?」
「じゃ、俺も呼び捨てで良いよ。そうだな、水生って呼ばせてもらうよ。」
それから少し考え込んで。
「9年してるって事は、俺よりも年上だよな。」
この際だからバレても良いか。
「お前より年下だよ。本当なら私が敬語を使わなくてはならないって聞いていなかったのか?」
「でも、そうしたら・・・。」
「私はまだ、18歳だ。」
暫しの沈黙。そして急ブレーキ。
楽しいなんて思ったり。
「えぇっ・・・そっ・・・嘘だっ・・・そんな事・・・俺より5つも年下じゃないかっ・・・!」
あたふたし始めた上杉を知り目に、水生はのほほんと
「あぁ、もう現場に着いたのか。」
なんて吐かしている。
「ほら、行くぞ。上杉―――いや、違うか。竜矢、行くぞ。」
「・・・・・・っ!」
何故か顔を真っ赤にさせて、上杉―――竜矢は口を開閉する。
それを見て笑うと、水生は車を出て現場へと足を踏み入れた。
そこは沢山の野次馬と、鑑識班がいた。
警察手帳を見せて中に入ると、そこはまるでそこだけ嵐が来たような状況だった。
「待ってよ、水生。」
当然、竜矢も中に入ってきた。それから辺りを見渡して、
「酷いな・・・手辺り次第持ってかれたって感じだな。」
眉を寄せた。
「ここは、鑑識に任せて、私たちは、この家の主に話を聞きに行こう。」
「そうだな。」
2人は外に停めてあるパトカーに向かう。
事件の内容は窃盗。
確かに初めて組む相手と捜査するのなら、これが最適だと思う。だが、会ったその日に捜査に駆り出されるのはどうかと思うが。
事情聴取でとりあえず分かった事は、金目の物、とにかく目に付く物から全てという具合いに持って行かれたことと、犯人の特徴―――否、犯人その者だった。
「あの人が、家から出て来るのを見たんです。大きな鞄を抱えて・・・初めは旅行にでも行くのだろうと、それで挨拶に来たのだろうと思いました。付き合いが深かったものですから。でも、いざ家の中に入ろうとしたら、鍵が開いていて、そして・・・。」
青い顔をして、家の主の妻は話しを聞き付けて仕事から戻って来た夫の手を握る。その手を握り返し、夫は水生と竜矢を見た。
「分かりました。では、その人物の家の住所と電話番号を知っていたら教えて頂けますか?」
安心させるようしっかりと水生は頷く。
「・・・これです。」
差し出された住所録の目的の物を手帳に書き出し、竜矢は車の手配に向かった。
数分も掛らぬ内に手配を済ませた竜矢が戻って来る。それを確認し、水生は席を立った。
「協力ありがとうございます。犯人を捕まえ次第報告をさせに行かせます。」
軽く会釈をして2人はパトカーから出た。
もう時刻は夕刻時。
「第一印象は、どう思う?」
運転席にいる竜矢に水生は先刻、現場を去る時に手渡された、犯人が写った写真を見せる。
丁度良い所に赤信号。
竜矢は写真を覗き込んで一言。
「大人しい子だね、きっと。犯行に及んだ理由は家庭内事情によるストレス、被害者に対する何らかの思い、もしくは学校での虐め。大体そんなものじゃないかな?」
青信号になり、車を再度走らせる。水生は面白そうに微笑み、
「なかなかの推察力だ。」
写真を無くさないよう手帳に挟み裏ポケットへとしまった。
「因みに、ここ最近学生と思われる4人組の犯行が起きている。今回の犯人と同じ学校らしいが?」
「・・・虐めの可能性が高くなったね。その4人組、今行く家の犯人と同じ年齢だろ?嫌がる犯人に、無理矢理犯行をさせたって感じに思えるけど。」
「その推察もあながち間違いではないだろうな。しかし、逆という事も有り得る。それだけは覚えておけよ?」
諭すように、1つの考えに固執すると大切な事を見落とすという意を込めた言葉。
「その通りだね。」
釈に触ったのではないかと言い終わった後に頭によぎったが、そうでもなかったらしい。
むしろ竜矢は楽しそうに見える。一応まだパートナーとしてはやっていけるようだ。こんな事でいざこざがあるようでは先が思いやられる。
「あのさ、この際だから、気になる事此処で全部聞こうと思ってるんだけど、良いかな?」
先刻のパトカーでの続きらしい。話すよう促す。
「えっと、水生は18歳の高校生なんだよな。それで、今、警視庁の警部補の役職に就いている。」
「・・・そんな役職に就いているだなんて今初めて聞いたが?」
「・・・・・・。」
不穏な空気に竜矢は一瞬押し黙る。言わなければ良かったという後悔の念さえ感じられた。
取り敢えず立本を後で絞めることにしようと、心の内に思って、更に話を先に進めるよう目線で促した。
「あぁ、それで、聞きたいことなんだけど・・・。」
少し言いあぐね、
「水生って性別どっち?」
至って表情は真剣そのもの。
水生は一瞬固まった。ほんの一瞬。しかし、すぐに笑みをつくる。竜矢は変化に気付いていない。
相手にとって、この質問をするのに勇気と決意は果たして必要だったのか?
水生は必要なのである。
「・・・・・・お・・・。」
車内は静か。その静けさがまた怖い。
「・・・女・・・だ・・・。」
本日2度目の急ブレーキ。止まった場所は犯人の家の前。
「・・・車で2、3分。歩きで5分という所か。」
水生は平然。否、すでに何時も通りと言うべきか。竜矢は動揺。やはり本日2度目である。
「先に降りているから、私をパートナーにして良いか、良く考えて。」
竜矢を残し、車を出る。流石にもう駄目かな、と覚悟した。
しかし直後に背後でドアが開き、閉める音が聞こえた。
振り返る。
竜矢の顔。
「俺は水生とパートナーとして会ったときからこいつとならやっていけると思ったんだ。今更その考え、変える気無いよ。」
少し、顔が熱くなった。それ以上に竜矢の顔の方が赤い。熱そうだ。
「・・・良かった。」
素直な気持ち。微笑むとパートナのー顔は更に赤くなった。
思わず首を傾げる。
何故だろう。
水生はこう言うことに疎かった。
玄関に入る。
母親は意外にもすぐに中に通してくれた。
止めて欲しい、救ってやって欲しいとの事。
しかし表情は侮蔑。自分の子がするわけがない、この人たちはおかしいのだ、と言うように。
それに気付くのは至極簡単。竜矢は片眉をせつな上げたが水生だけしか気付かなかった。無論水生も、表面上は笑顔だが、内心は不愉快極まり無い。仕事という事でなんとか抑え、母親に写真を見せる。
「信二君、確に貴方の息子さんですね?。」
「えぇ、息子です。部屋は2階の1番奥の部屋ですわ。」
「ありがとうございます。」
竜矢が礼を言い、2人は2階へと上がっていく。
1番奥の部屋。人の気配はある。
先に竜矢が着き、水生を待つ。
到着したのを確認、次の行動へと移る。即ち部屋への強制的な侵入。
「警察だ!」
どちらともなく名乗る。犯人は驚いてはいたものの、動揺もせず逃げようともしなかった。むしろ安堵しているようにも見える。
「信二君だね?」
念の為確認すると、頷いた。
「君が先刻起こった事件の現場から出て来るのを目撃している人がいるんだ。一緒に来てくれるかな?」
「・・・・・・はい。」
竜矢の読み通り、大人しい子だった。むしろ素直。時間を掛ける事無く2人の下に来て、手に持った鞄を差し出す。
「これが家から盗んだ物です。」
「・・・・・・。」
鞄を無言で竜矢が受け取る。それから、
「犯行、認めるんだな?」
問う。
「・・・はい。」
少し間を空けての返答。背広の内ポケットから手錠を取り出す。
「住居不法侵入及び窃盗の罪で逮捕する。」
かしゃん、音と共に手首に手錠が掛る。竜矢は先導して、部屋を出ようとした。水生がそれを制す。
「・・・教えてくれないか?君に犯行を強要させた人間を。」
「――――――っ!!」
青年の体がこわばる。それを見逃す2人ではない。
「君が何を言っても口外はしない。だから、教えてくれないかな?」
気付いた竜矢が青年の肩に手を置く。青年は顔を上げた。それから交互に2人の顔を見る。
「・・・・・・・・・です・・・。」
聞き取りにくい消え入りそうな声。それを聞き逃さず、2人は手帳に書いた。
「ありがとう。約束は必ず守るから。君が彼等に責められる事も無いから。」
肩に手を置いたまま、安心させるよう、微笑む。青年もまた、ぎこちなく笑った。
「・・・行こうか。」
水生もまた、青年の肩に手を置き、部屋を出た。
1階へと階段を降りる。母親が出迎えた。驚愕の顔。そして次は憤怒。
「貴方って子はっ・・・親の顔に泥を塗って・・・本当に恥じ知らずな子っ・・・!!」
顔を真っ赤にさせ、手を振り上げる。青年の体が震えた。とっさに水生が2人の間に入った。
「貴方も原因の1つだって、気付いてないんですね・・・。」
「・・・どういう事・・・?」
しかし、それ以上水生が口を開く事はなかった。母親もまた、口を開かない。
「・・・・・・。」
玄関まできて、青年は最後に振り返った。
「ごめんなさい。お母さん。」
「・・・・・・。」
返事は返って来なかった。
他の警官を呼び、青年を署に送った。パトカーの姿を見届けた後、竜矢が車のロックを解除する。
「これからどうするの?」
それから警察手帳から地図を取り出す。行き先を知っているのにも関わらず、尋ねられた。
「竜矢が今から向かおうとしている場所へ。」
ぶっきらぼうに返答。近くで小さく笑う声が聞こえた。
「どうせ、すぐ向かうとは思ったけど、流石行動に移すの早いな。」
「行動は早いに超したことはないだろう?」
「まぁな。」
とか、言っているけれど、どうせ水生の本心などお見通しなのではないのだろうか?青年の為に、早く事を終らせようとしている事を。
「とりあえず、行くぞ。」
「了解。」
少々ふてくされながら車へと乗り込む。背後から軽く吹き出す音。
―――あぁ、まだ雨が降っている。やはり、朝に思った通りだったのだろうか?
軽い憂鬱を感じながら、窓の外を眺めた。
車は新たな目的地目指して走り出す。
「―――水生は・・・。」
「うん?」
何かを言おうとして竜矢が口を開いたのに反応する。言いにくそうな表情だ。
「やっぱり何でもない。」
しかし、言わずに口を閉じた。
「何だ?」
途中で終られるのは後味が悪いと、言わんばかりの再度の返事。否、問いつめ。
上目遣いに水生を見る竜矢は余計子供じみて見えた。恥ずかしそうに視線を反らしたかと思うと、口の中で呟いた。
「道・・・分からない・・・。」
ついでに泣きそうである。こんな醜態晒したくなかったのだろう。
「・・・方向音痴だと聞いている。大丈夫だ。まだ間違ってはいないから。曲がるべき所で教える。」
さして気にしていないから、安心してろ・・・と言ったつもり。
しかし、
「・・・ごめんなさい・・・。」
違う意味で取ったのであろう。今にも縮こまりそうな勢いで竜矢は萎んでいく。それに気付いて水生は自分の言葉遣いを思い出した。どうやらこの言葉遣いは人によって怒られている、という感情を持たせてしまうらしい。本人が至ってそんな気は無くとも、だ。
「・・・言い方が悪かった。私の言葉遣いは場合によってはキツイらしいから、傷付けたのなら済まない。私が言いたかった事は、唯単純に、心配するなという事なんだ。誰にでも欠点はあるだろう?・・・竜矢が方向音痴なら、私がそれを補えば良い。パートナーとは、そういうモノだからこそ、私がいるんだろ?」
とりあえず其所を右、と水生が指す。
「・・・だから、隠さなくても良いよ。どうせ、これからお互いの事をもっと知るのだからな。」
「それって・・・俺と仕事しても良いって事?」
俄かに竜矢の顔が輝く。
「お前が構わないと言うのなら。」
「俺は構わないよっ!」
「・・・そうか?」
「そうだよ!」
力説の如く、息撒く竜矢に多少なり驚きを表す水生。気にせず、否、気付かない竜矢は更に言葉を続ける。
「良かった。もしかしたら、方向音痴だって知られた時パートナーを辞めてくれって言われるかと思っていたんだ。」
「そんな事で辞めてくれ、と言うほど私は非情ではないよ。」
先程までいた場所とは反対側、団地が立ち並ぶ一角に車は止まる。まばらに植えられた木が日陰を作っていた。雨が止み、太陽が出ている。
「・・・水生って格好良いな。」
運転席から外に出ながら、竜矢は尊敬に近い輝かせた瞳を水生に向ける。
「良いな、そんな風に受け入れられるの。」
「そうか?私はお前の方が格好良いと思うけど。」
同じく車から出て、目を丸くする水生。竜矢が困った様に眼前で大きく手を振る。
「俺なんか全然!ガキっぽいしさ。」
「・・・私は自分の気持ちや意見を素直に言える方が格好良いと思う。だから、竜矢は格好良いと思うけどな。」
平然との言葉。竜矢は何度目なのか、顔を真っ赤にさせる。
「本当に素直に出るな。」
面白そうに見遣り、水生ある1つの団地の中へ入っていく。
「水生だって素直に意見を言ってるじゃないか!」
背後から照れ隠しの叫び。
「早く来いよ。竜矢。」
ポケットに手を突っ込みながら、水生はパートナーを呼んだ。
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