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K/Night
―2―
闇が世界を覆う。人々は眠りに付き辺りは不気味なほどに静かだ。
竜矢と水生、竜也と水城は篠慶学園の校門前に立っていた。蒼麻の姿は無い。どうやら一足先に中に入っているようだ。
「さて、中に入るか。蒼麻を待たせたらうるさいからな。」
普段着である黒い服を身に着けた水生が呼びかけると、
「そうだな。」
と竜也が、
「夜の学校だ。楽しそうだなぁ。」
まるで遊びに来たような雰囲気の水城が言い、
「怖いぃ~・・・もう帰るぅ~・・・。」
半べそを掻きながら竜矢が言った。
『・・・・・・・・。』
水生と竜也は顔を見合わせる。そして、
「ほら行くぞ。」
「水城もだ。」
2人は思い思いに竜矢と水城を掴むと、ずるずると引きずって学園内に入っていった。
「遅かったな、みんな。俺のほうはもう、準備OKだぞ。」
「悪いな。この2人がなかなか言うことを聞かなくてな。」
旧校舎の入り口前に4人は向かうと、蒼麻が微笑みながら手を振っていた。
竜也と水生は竜矢と水城を離す。竜矢の場合は離れ様とはしなかったが。
「じゃあ、この追跡機を1人ずつ持って。」
蒼麻はそれぞれに追跡機を手渡す。
サワサワと風が起きるとすぐ近くにあるフェンス張りの木が大きな枝を揺らした。七不思議の1つ、『人食いの木』だ。
蒼麻と水生、竜也はさして気にしていない様だが、そこにあるだけで不気味な雰囲気をかもし出すそれに、正直竜矢と水城は怖気付いていた。
「それで、蒼麻。ちょっと提案なんだが。」
そんな2人をよそに水生は蒼麻に竜也と一緒に考えていたことを話す。
「調査をするときはペアを作って行動した方が良いと思うのだが。」
「ん?そうだね、特に竜矢なんて1人じゃ歩けないだろうし・・・わかった。それじゃあ、そっちの四人でペアを2組作って。俺は1人で良いから。」
「でもそれでは・・・。」
「大丈夫だって、竜也。その代わり、俺は1階だけしか調べないから。」
抗議しようとした竜也に片手をひらひら振ると、蒼麻はもちろん承諾するよな?とそれぞれの顔を見回す。他の人はもう頷くしかないのだった。
竜矢と水生、竜也、水城は今向かい合っていた。この一瞬で運命が決まるのだ。「グーパーで決めるからな。1回勝負、文句無しだぞ。」
水城が確認すると、3人は頷いた。
「よし・・・それじゃあ・・・。」
竜矢がごくりと唾を飲み下す。
『グーとパーで別れましょっ。』
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「決まったな。」
「一発でな。」
水生は開いた手を下ろす。同じように竜也が開いた手を下ろした。竜矢と水城は結んだ手を見下ろしながらわなわなと振るえている。
「よろしく。竜也。」
「こちらこそ。」
互いに挨拶を交わす竜也と水生。そんな2人のやり取りを見ていた水城と竜矢はとうとう悲鳴に近い叫びを上げた。
「嫌だよ俺っ!何でこんな役に立ちそうにもない竜矢と組まなくちゃいけないんだっ。」
「嫌だよぉっ、怖いよぅっ、水城なんかと組みたくないよぉっ!俺を見捨てないで、水生ぃ。」
二人は水生と竜也の裾を掴んで哀願するのだが・・・。
「文句無し。」
「一発勝負って。」
『言ったよな?』
極上とも言える2人の笑顔に、反射的に首を縦に振る。このときの2人には逆らってはいけないと言うのが頭の中にインプットされているのだ。以前そうしたら後の記憶が無くなっていた・・・・何てことも・・・。諦めるしか手段はないのだ。
「4人とも、用意は出来たかい?」
蒼麻の声がすぐ近くで聞こえた。
「今すぐにでも入れるぞ、蒼麻。」
竜也が答えると、
「なら、もうそろそろ中に入ろうか。」
追跡機の電源をオンにして蒼麻は4人に促した。
1階 蒼麻担当
2階 竜矢・水城ペア担当
4階 水生・竜也ペア担当
3階 二ペアが合流して担当
―――旧校舎の中は―――
階は2階。竜矢と水城がいるエリアである。辺りはもちろんの様に暗い。そんな場所の廊下を懐中電灯2つで照らしながら歩いていく。ぎしぎしと床は鳴り、いつか抜けてしまうのではないかと思うほど脆い個所もあった。
蒼麻に2階から3階へと移動しながら調査を、と言い付けられている2人は、2階へと上がり七不思議の真実を調べながら恐る恐る足を先に進めていた。
「うえぇぇぇええぇぇ・・・・・怖いよう怖いよう怖いよう・・・。」
「あ”あ”~っうるせえっ!少しは黙って歩け!ったく高校生にもなってビービー泣きやがって。」
腕にしがみ付いて泣きながら歩いている竜矢を心底嫌になってきた水城が苛々とした口調で言い放つと竜矢は更に顔を歪めた。
「水生いぃぃいいぃいいぃ・・・・・・・。」
「~~~~~~~~っっ!」
いい加減怒りが頂点に達し、剥ぎ取る様にして竜矢の手を腕から離す。驚いた竜矢が一瞬泣くのを止めてしまったくらいだ。怒りのオーラを全身に纏わせた水城は竜矢をひと睨みすると無言で背中を向け、先に進む。
「ふぇっ・・・・・すいじょお・・・。」
涙声で呼ぶが返事もなく、待ってくれる様子も無かった。1人にされたような気がして、いっそ思いきり泣きたい気分だったがそれで現状が変わる筈も無い。水城が怒っている理由は自分が泣いていることにあるのだ。竜矢は手の甲で目を擦り、涙を拭うと後を追う。だが、
―――― ギシッ ギシッ
―――― ガタガタッ
―――― パサパサパサッ
泣いていた分気付かなかったのだが静かになった今、様々な音が耳に入ってくる。それが更に竜矢の恐怖心を煽るのだ。背中にはどっと冷たい汗が流れていく。それにさえも体が竦む。黙って数分も経たないうちに、竜矢は精神的に追い込まれていた。
「・・・・・・・・・・。」
青かった顔をさらに青くさせ、今すぐにでも泣きたいだろうとい感じなのにそれでも声1つあげない竜矢に、水城は少しやりすぎたか?と内心凄く後悔していた。自分なりに、竜矢のお化け嫌いはわかっていたつもりだ。
はあぁ・・・・。
無意識の内にため息が出る。自分はとんだ厄介者を背負い込んでしまった。今なら何時も一緒にいる水生と竜也の気持ちもわかるというものだ。だがあの2人は別段嫌がっている態度はしていないが。いや、むしろ嬉しがっているのでは?
そんな事を考えていた水城だが、思考はそこまでに、後ろにいるはずの竜矢をちらりと盗み見る。竜矢はびくびくとした態度だが、しかしまだしっかりとした足取りで、そして足元を見ながら歩いていた。前は全く見ていないようだ。水城は立ち止まって振りかえる。もちろんの様に竜矢は気付かず、そのまま頭を水城の顎にぶつけた。否、顎と言うより顔を、と言った方が合っているかもしれない。竜矢は背が高いのだが、それ以上に水城は背が高いのだ。その結果がこうなった。
『・・・・・・・・・っ・・・。』
しばらくの間、2人はお互いがぶつけたところを押さえ、何も言わなかった。先に口を開いたのは水城だ。顎をさすりさすり、少し涙目になりながら話す。
「ったく俺がどこかの教室に入ったりしたらどうすんだよ、お前は。ほんっっとうに仕様がねえな。ほら。」
竜矢の目の前に水城は手を差し出す。差し出された手の意味がわからずに竜矢は少し赤い目で水城をみると、水城の頬が少し紅くなったのに気付いた。照れているみたいだ。
「手、繋いでやるって。腕掴まれると歩きずらいからな。こっちの方が良い。」
もう1度手を突き出して、どうするんだ?とぶっきらぼうに言った。竜矢は返事も言わずにその手を握ると水城は二ッと笑った。水生の笑い方とは異なる笑い方だ。子供のようなものであってそうでないような、そして少し意地悪な感じの、だ。竜矢は嬉しくてその手を痛いくらいに握り締める。
「水城って優しいなっ。」
今まで泣いていた人物かと思うほど、その顔に満面の笑顔を浮かべる。歳相応に見えない子供っぽい笑顔だ。
「今日だけの出血大サービスだからな?」
水城は気分の浮上した竜矢に釘をさすと、繋いだ手を引っ張り歩き始めた。
そんな時だ。
――― クイッ
何かが竜矢の服の裾を掴んだのだ。
「ひっ―――――――っ!」
危うく悲鳴を上げそうになった竜矢は咄嗟に繋いでいないもう片方の手で自分の口を覆う。そして、裾を掴む手の為に立ち止まらなくてはならなかった。
「?いきなり立ち止まって・・・どうした?」
水城は竜矢が繋いだ手を引っ張るので振りかえり、異変に気付いて訊ねると、竜矢は口を覆っていた手を外し、『ここ』と自分の裾を指した。水城はその指された場所を見る。次の瞬間、水城は絶句した。掴んでいるのだ。小さな、子供の手が、竜矢の服の裾を掴んでいたのだ。水城はその先に視線を滑らす。そして安堵した。手だけじゃ無かったのだ。ちゃんと体もそこにあった。
「竜矢、子供だ子供。変なもんじゃないよ。」
震えている竜矢を窘めると、裾を掴んでいる子供の目線に合わせてしゃがみ込む。子供の外見は男の子で、大きな瞳に涙をいっぱい溜めていた。
「どうした?こんな所で。もしかしてかくれんぼしてて迷ったのか?」
優しい口調で問いかけると子供は小さく頷いた。竜矢も水城の隣にしゃがみ込むと、子供の頭を撫でながら言った。
「そうかぁ。だからここを通った俺の裾を掴んだんだ。」
今まで1人で怖かっただろうねぇ、決して他人事の様に思えない竜矢は1人で言って納得し、持ってきていた飴玉を渡す。子供は素直にそれを受け取り、嬉しそうに笑った。和やかな気持ちになった2人はしばし気の抜けた笑みを浮かべる。すると子供は2人の手を掴んで初めて口を開いた。
「お兄ちゃんたち。」
可愛らしい顔を笑顔にし、子供らしい可愛い声で子供は言葉を続ける。
「鬼ごっこしよう?」
『鬼ごっこ?』
竜矢と水城が口を揃えて言うと、子供はこくんと頷く。瞬時に水城は理解する。この子供はあの『七不思議の1つの男の子』だということを。だがそんな事を竜矢が知るはずが無い。
「うん。別にいい ――――― むぐぐっ。」
あと一歩で承諾してしまう所だった竜矢の口を咄嗟に水城は塞ぐ。しかし遅かった。
「じゃあ、お兄ちゃんたちが逃げる人ねぇ。僕が鬼だよ?それじゃあ、始めぇ。」
子供は手に包丁を持って、怖いくらいに唇を吊り上げて笑い、楽しそうに言った。
「うぇっ?!何でどうしてっ?包丁持ってるよっ?!」
「そんなことはいいからまず逃げるぞっ!」
いきなりの展開に戸惑う竜矢の手を引っ掴み水城は全速力で走り出した。後ろからは数を数えている子供の姿がある。だからと言って時間が沢山あるわけではないのだ。先程までいた場所で呑気に竜矢に説明などしている暇は無い。
「ねえっ、水城ぅ。」
「あ”~うるせえなっ。」
「19・・・・20っ。・・・お兄ちゃんたちはどこに行ったかなぁ?」
数え終わったのか手を額にあて、遠くを眺め子供は2人の姿を探す。
「あれは七不思議の1つなのっ。『篠慶学園 旧校舎に纏わる七不思議その1 鬼ごっこ 旧校舎には『鬼ごっこ』をしようと言う子供が現れる。誘いに乗ったら子供が鬼になるのだが、捕まったら殺されてしまう。』その子供なのっ。わかったかっ?」
「ええええっ?!」
「うわっばか。大きな声を出すなっ。」
慌てて咄嗟に平手で竜矢の顔を叩くが声は廊下に響き渡ってしまった。それに気付かないはずは無く、子供は声のした方にぐるんと首を180度回転させる。
「見ぃつけた。」
『うわああぁぁあぁっ!』
その光景を見てしまった2人は恐怖のあまり声をあげ、全速力の更に上のスピードで、2階の廊下を飛ぶ様に走っていった。
4階の廊下。水生と竜也はその階にある図書室へと足を踏み入れていた。中に入ると同じに埃とかび臭さが鼻に付き、2人は同時に顔をしかめる。
「窓を開けようか?竜也。」
水生がいかにも錆び付いている窓を指して訊ねると、
「俺は別に構わないから、水生が嫌だったら開けな。」
すでに本棚に向いている竜也は素っ気無く答え、水生もそれなら別に良いやと竜也の跡を追う。
「本の数は ―――― それほど多くは無いな。しっかし、埃だらけのくもの巣だらけだ。随分長い間ここに誰も足を踏み入れてない証拠だな。」
水生は本棚から1冊取り出すと、表紙に付いた埃を手で払う。しかし題名は古ぼけて既に消えかかっていて読み取ることは困難だった。今度は背表紙に目を向ける。どうやらこれは問題の本ではないらしい。
「ここは違うみたいだな。別なところに移ろう。閲覧・貸し出し禁止といわれるくらいだから部屋の奥にありそうだな。」
同じように本を手に取っていた竜也は戻しながら相手に促す。もちろん水生も調べるのだから、当然承諾する。しかし奥の部屋はここよりも更に暗い。2人は呟く。
「本・・・見えるのか?」
幽霊を怖いと思っていない2人にとってそれは切実な思いなのだった。
奥の部屋は更にひどい状態だった。床には本が散らかっており、埃は大きな毛玉を作ってあちこちに落ちていた。床に落ちた本を1つ手に取ってみると、腐っていたのか中身がバサバサと音を立てて落ちていく。
本を踏まない様に細心の注意を払いながら水生と竜也は中に入る。本棚に倒れて入っていたある1冊を慎重に手に取った。背表紙には貸し出し禁止の印が微かながら見えた。竜也が独り言の様に呟く。
「噂が本当だったら、俺達呪われるんだよな。一体どうなるんだか。」
「さあ?まだ見てもいないし呪われてもいないから解らないよ。」
隣に立って本を覗きこんでいた水生は答える。竜矢、竜也、水城、蒼麻の中で1番背の低い水生には肩越しに見るというのは出来ないのだ。だからと言って水生の身長は普通の女子よりも高いのだが。
「でも、心配しなくても良いんじゃないの?私もいるし。呪われるときは一緒、ってか?ま、今すぐ死にはしないさ。多分。」
「それもそうだ。じゃ、開けるか。」
何のためらいも無く竜也は本を開ける。パッと埃がその拍子に部屋に舞った。
「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ。」
・・・・・・パタン。
「今のは?」
「さあ?」
2人は顔を見合わせ首を傾げると、手に持った本を食い入る様に見つめる。そしてもう1度本を開けた。
「いや~ん・・・。」
・・・・・・・パタン。
「なあ、水生。」
「ん?」
「これ持って帰ってもいいかな?」
少し興奮した面持ちで竜也は水生に振りかえる。
「いいんじゃない?」
さして気にしていない水生はあっさり承諾する。
それから2人は本棚の本をくまなく調べ尽くしたのだが、本自体が呪われていることが解らないので図書室の七不思議のことは保留することに決めた。
埃を被った体を叩きながら、そして竜也はあの本を大事そうに抱えながら図書室を後にする。
備考 しかし図書室の本の中には変なものが混ざっている。
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