K/Night

K/Night

7


「そうか…」
「あぁ、もう大丈夫だろう」
少し離れた場所に白夜は立っている。
風が白い毛をなびかせる。
「これでもう、この先私がいなくなってもエリクはちゃんとやっていけるだろうよ」
見上げていた空から首を戻し、ジルは白夜を据える。
「あの子を宜しく頼んだよ」
「承知した」
軽く頭を下げた白夜は踵を返し森へ向かった。
ジルはまた、空を仰ぐ。
澄みきった青空だ。

「すまなかった!!」
突如土下座した男達にエリクはうろたえた。
魔物達の襲撃を何とか壊滅させ、それぞれが応急手当てをしていた時だった。
「頭を…上げて下さい」
「それは出来ない!俺達は謝りきれない事をしてきてしまったんだ」
「頭を上げて下さい!!」
声を張り上げたエリクは男の肩を掴んだ。
「誰だって不安は持っているんです。人間はそういう生き物です。例え不安が、最終的にどんな形になっていたとしても私はあなた達を責める権利はありません」
「しかし…」
エリクは表情を歪める男の肩を離す。
首にかかる翠の石に触れる。
「私はここに皆が来てくれた、それだけで嬉しかったんです。心配してくれて、沢山、守ってもらって…嬉しくて泣きそうになるのを我慢したくらいに」
「エリクは俺達の家族だから当たり前だ!」
「あんな事を言って今更だとは思うが、今は本当に家族だと思っているんだ」
しかしエリクの表情にはまだ暗い影が落ちている。
「……」
少し離れた場所で見守っていたノインは思わず身を乗り出したが、ダンガンが止めた。
首を振ると、渋々引き下がる。
「皆の…言葉は嬉しいけれど、もしまたあの男みたいなのが来たら…」
思い出して身震いする。
今度巻き添えをさせるのは子供達だけではないかもしれない。
もし、村全体が狙われたら…?
あの夢みたいになってしまうかもしれないのだ。
だが、聞こえてきたのは想像していたものではなかった。
「なんだ。そんな事」
「そんな…事?」
そんな事ですませてしまう事が信じられない。
目を見開くと、男達は安心させるように微笑んだ。
「今度は俺達がエリクを守る。あんな事はもう2度と起こさせないから」
大きい掌が横から眼前に出てきた。
見ると別の男が立って笑っている。
「帰ろう?俺達の村に」
「…っ」
手を出すのを躊躇うと、男はエリクを抱き上げて立たせた。
「…帰っても良いの?」
「当たり前だよ」
「…ありがとう…ございます」
抑えていた涙は溢れて溢れた。
エリクの頭を撫でる手は温かい。
「さあ、皆が心配している。帰ろう。きっと村に残っている者が美味い物を作ってくれてるだろうからな!」
誰かが言ったら何処からか笑い声が溢れた。
全員が自然と笑みになる。
「私達も帰ろう。ハンナが心配しているだろうからな」
ダンガンがキースに肩を貸し、ノインがソウルに肩を貸す。
歩いて行く男達の後を追いながら歩いていると、人の間をぬってエリクが出てきた。
「どうした?」
「…頼みたい事がある」
「姉さん、ソウルを頼む」
「分かったわ」
何時にも増して深刻な表情に、ノインはソウルをアルマに任せる。
「先に行って下さい。後から追い掛けます」
言ってノインの腕を取り、人の群れから外れる。
全員の姿が小さくなるまでエリクは口を開かなかった。
「何かあったのか?」
なかなか話しださない事に痺を切らし、ノインは尋ねた。
「そういう事じゃないんだ。ただ、これからの事でノインに頼みたい」
「…何?」
幾分低いエリクの声に不安を煽られる。
「もし、もし何時の日か私が本当に化け物になったのなら、その時はノインが殺して欲しい」
「エリクは化け物なんかじゃない」
「それは誰にも分からないだろう?」
「……」
歪む表情に、エリクが一番不安を感じているのが分かる。
「私は、誰に殺されるより、ノインに殺される方が良い。ノインに殺されたい」
「それはある意味俺に甘えてるって事か?」
顔を覗き込むと目を丸くした。
「…そう考えてくれても構わない」
否定も肯定もしない。
ノインの服の裾を握る事以外は。
「…俺のハチマキまだ持ってる?」
呆れたわけではないけれど小さく溜め息を吐いて聞いた。
「持っているけど…」
「貸して?」
促されるまま懐から赤いハチマキを取り出してノインに渡す。
受け取ったノインはそれをエリクの右手首に巻き付けて結んだ。
「お守り」
そのまま手を握り込む。
「約束はする。それでエリクの心配が除けるのなら幾らでも約束してやる。けど、エリクは絶対に化け物になんかならない。俺が守るんだからさ」
指を絡めて手の甲に唇を押し当てる。
「ずっと一緒にいるから」
「…っ…」
真っ赤になったエリクは視線を合わせようとしなかった。
笑って手を下ろす。
けれど手は握ったまま。
「帰ろうか」
「…うん」
手を握る事に特に拒否を示さない。
むしろ握り返してくれた。
顔が綻ぶ。
しかし、
「ここにいたのか」
白夜の声に慌てるようにエリクの手が離れた。
ノインが陰で聞こえないように白夜に文句を言ったけれど、聞こえないと思っていたのに白夜に聞かれたようだった。
後で冷たい視線を浴びたの言うまでもない。
「帰って来たぞ!」
村の入り口で待っていた男が白夜の姿に気付いて叫んだ。
ソウルとキースの手当てをしていたシャナとラノアがその声に立ち上がる。
「迎えに行こう」
「うん」
服を着て立ち上がるソウルの後に続いてキースが立ち上がり、シャナとラノア、テーベーがは入り口に向かった。
「エリク!」
シャナが叫ぶとエリクは気付き、周りの村人は道を開けた。
「エリク…エリク…」
「ごめん。ごめんね?もう大丈夫だから」
あの時はシャナを抱き締めてやれなかった。
だけど今は抵抗なく出来る。
細い体を壊さないように、優しく抱き締める。
「おかえりなさい」
「ただいま」
ラノアやソウル、キースが安心した表情を浮かべる。
その中、テーベーは1人難しい顔をしていた。
「テーベー?」
ソウルが不安そうに声を掛けると、テーベーはエリクの前に立った。
「これ…」
差し出したのはエリクのマント。
「ごめん。俺、沢山エリクを傷付けた。本当にごめん」
「もう良いよ。気にしていない」
顔を歪めるテーベーに微笑んでマントを受け取る。
「持っててくれてありがとう」
「…っ…」
顔をうつ向かせ表情を一変させたテーベーは逃げるようにソウルの背中に隠れた。
「…何笑ってるんだよ!」
「いやなー」
「ごめんって」
思わず吹き出してしまったソウルとキース。
真っ赤になったテーベーは2人を蹴る。
もちろん照れ隠しだという事は2人には分かっていた。
「…?」
首を傾げてエリクはノインを見ると、ノインは苦笑するだけだった。
テーベーの気持ちは分からなくもない。
「エリク」
「白夜」
何時の間にかいなくなっていた白夜が人の間をぬって現れた。
伸ばされる手に鼻を擦り付ける。
「どこに行っていたんだ?」
「迎えに行っていた」
「誰を?」
指し示すように白夜は首を向ける。
人々の群れのその先…
「…おばあちゃん」
ジルが1人、静かに立っていた。
シャナがエリクから離れた。
「行きな?」
エリクの背中をノインが押す。
「…ノイン」
「ジル、エリクの事心配してたんだから、元気な顔を見せてあげなくちゃね?」
「…シャナ」
エリクは小さく頷いて、それからノインに向いた。
「…?どうか…」
襟首にエリクの手が伸び、引き寄せられて体が前に傾く。
頬に柔らかい感触が当たった。
「ありがとう、ノイン」
エリクはすぐに離れてジルのもとへ白夜と一緒に走っていった。
「……」
ノインは頬に残る感触を手で押さえる。
「…っ!!」
止まっていた時間が動き出すように、何が起こったのか理解した瞬間、ノインの顔は今までの誰よりもに真っ赤になった。
「…っ…なぁ…!!」
声は言葉にならない。
ジルの所にいるエリクは背を向けてはいるが、髪の間から覗くその首筋は明らかに赤くなっている。
「―――!―――!!」
もう顔を隠せばいいのか、頬を押さえればいいのか、ノインには分からなくなっていた。
「……」
そんなノインの腹をシャナは殴る。
「いっ…!?」
次にはテーベーに背中を蹴られた。
しかもテーベーは去り際に、
「負けないからな」
ノインにしか聞こえないように言った。
「なっ…!?テーベー!?それってどういう事だよ!!」
明らかに焦りを見せたノインにテーベーはそ知らぬ顔をする。
子供達の戯れだと思ったのだろう。
村人からは笑い声が響いた。
それに釣られて子供達も笑い出す。
ノインは別として。
ジルと白夜と家に帰るエリクも振り返って微笑んだ。
村は今、新たな未来を刻み始めたのだった。

ランプの柔らかく部屋を照らす。
月と星が出ているから外も明るい。
ベッドに腰をかけて、ノインは今日もらったばかりの本のページを捲った。
今日はノインの誕生日だった。
そして、エリクの誕生日にもなった。
先日、ダンガンとジルが決めたのだ。
ノインとエリクを同じ誕生日にしようと。
そして先刻までその祝いをしていたのだった。
今、エリクはアルマの部屋で、ジルは客室で寝ているはずだった。
ノインはまたページを捲る。
本は今日まで伝えられている300年前の聖騎士を書いたものだ。
ノインがまともに、このどの国でも知られている聖騎士の事を覚えていなかったために、ダンガンがわざわざ王都、ファインデルから買ってきたのである。
流石に自分でも情けないと思い、ノインは本を読んでいるのである。
しかし、
「…長いなー…」
滅多な事で本を読まないノインにとって、じっと本を読む事は苦痛以外の何者でもない。
ベッドに本を放り投げて寝そべってしまった。
「エリク、もう寝たかな?」
隣の部屋にいるはずのエリクに思いをはせてみる。
そういえば白夜が一緒にいたんだ、と思い出して少し腹が立った。
この頃、必ずと言って良い程白夜にエリクの隣を奪われている気がする。
前より自分がいる時間より白夜といる時間の方が多い気がする。
一緒に暮らしてるから当たり前なのだろうけど、それでも腹が立った。
「…エリクを一番好きなのは俺だぞー」
自分の部屋内で止まる程度に叫んで、否呟いてみる。
その瞬間、部屋の戸が叩かれ飛び上がるほど驚いた。
「…入っても良い?」
「…エリク!?」
聞こえてきた声に更に驚きながらノインが戸を開けると、確かにエリクが立っていた。
隣にはちゃんと白夜のオマケが付いている。
「どうかしたのか?姉さんは?」
「アルマさん、酔って寝ちゃって…」
「ベッドを全部占領されたのか?」
気まずそうにエリクは頷いた。
呆れて思わず溜め息が出る。
「おばあちゃんももう寝ちゃったし、ノインの部屋から光が漏れてたから…」
口の中で呟いてエリクは腕の中の本を抱き締める。
ノインと同じ本だ。
「俺の部屋で寝たら良い。廊下や床で寝るよりよっぽど良いだろ?」
言って白夜を横目で見ると、渋々認めたようだった。
そんな2人のやり取りを露知らず、
「ありがとう」
エリクは安心した表情で部屋に入った。
ベッドに座るようエリクを促して、ノインもその隣に座る。
エリクはベッドの上に無造作に置かれた本に気付いて手元に引き寄せた。
「読んでいたのか?」
「途中までな。俺に読書はやっぱり向かないよ」
「そうか?」
苦笑するノインに小さく笑い、エリクは本をノインに返す。
反対側のエリクの隣で寝そべっていた白夜は呆れたように視線を寄越したが、尻尾を小さく振るだけだった。
それを見て思い出す。
「そういえばエリクはこの本全部読んだか?」
「一通り読んだが」
「途中にさ、白夜に似た神獣が描かれてなかったか?」
途中まで読んだその本の中に、白夜に似た全身白い毛に覆われた神獣が出ていたのだ。
「確かに載っていたけど」
同じ疑問を少なからず抱いていたのだろう。
頷いたエリクは白夜を見る。
白夜は少し顔を上げた。
「300年も前の話に私が出ているはずがないだろう?」
「なんだ。似てただけか」
期待外れにノインは唇を尖らせたのに対して白夜は溜め息を吐く。
「普通の獣が300年も生きられるはずないだろう?」
「そうだけどさ」
明らかに馬鹿にされている雰囲気にノインはさらに機嫌を損ねた。
隣でエリクがなだめる。
それで少しはノインの気も良くなったようだ。
白夜は我関せずでまた寝そべる。
「そういえば、ごめんな?」
「…?何が?」
突如謝ったノインにエリクは首を傾げた。
ノインは苦笑しながら頭を掻く。
「エリクの誕生日、今日になるって分かってたらプレゼント用意出来たんだけど…」
「そんなの…!私なんかノインの誕生日、今日初めて知ったんだよ?私の方が用意出来たはずなのに…ごめんなさい。聞けば良かったね」
大事な事を知らなかった、と言うように落ち込むエリク。
ノインは息を詰まらせる。
思わず抱き締めたくなる衝動に駆られるが、白夜の威圧に止めておいた。
代わりに手を握る。
「俺はエリクと一緒にいられる事が十分誕生日のプレゼントになるんだけどな?」
「…ぇ?」
目を丸くするエリクにノインはただ笑みを浮かべる。
握る手に力を込めるとエリクの表情はみるみる内に赤くなっていった。
ノインはエリクの髪を取って指先でいじる。
「……」
2人の様子を見ていた白夜はのそりと起き上がった。
そして―――
「……」
「うわっ…!」
「白夜…?」
繋がれる手を引き離すように2人の間に割り込んだ。
エリクの手はとっさに離したために大丈夫だったのだが、ノインの手は白夜の体に下敷になってしまった。
「……」
無言のままに白夜はエリクの方に顔を向け尾を振る。
「なっ…なんなんだよ、白夜!」
明らかに傷付きましたという表情のノインは必死に下敷になった手を引っ張りながら、白夜に抗議する。
「お前は俺の細やかな望みさえ許せないのかよ!これが白夜のやり方か?お前は俺に何を望むんだ…よ…?」
「…?ノイン…?」
「望む…?望み…?」
急に考え込んだノインにエリクは呼び掛けたが、ノインからの返答はない。
「ノイン?」
白夜が体を起こして手を解放してもノインは気付いていないようだった。
「これが…お前の望んだ事か…?」
「何を言って…?」
「ゼリューラ…」
「―――!?」
白夜の毛が逆立つ。
しかしそれはあまりにも一瞬で誰も気付かなかった。
「お前、その名を何処で…?」
震える声を抑え、白夜は静かに問う。
ノインはふと我に返ると頭を掻いた。
「夢で見たんだ。あの男と闘って、ここに戻ってきた日の夜だと思うけど…エリクと同じ髪色の女性が死んでしまって、それで俺と同じ髪色の男がそう言ってさ」
「その名前がどうかしたのか?」
「…いや…お前達には…今は、関係ない」
不思議そうに首を傾げながら毛に触れてくるエリクに白夜はただ首を振った。
ノインとエリクは顔を見合わせたが、敢えてそれ以上追求はしなかった。
白夜の、ただの気まぐれで聞いた事だと、そう思った。
「それじゃあ、もう寝るか。夜も大分更けたしな」
大きく伸びをしながらノインはベッドを降りる。
「エリクはベッドを使ってな?俺は床で寝るから」
「な―――っ!そんなの駄目だ!お前のベッドなんだからお前が使うべきだ!」
慌ててエリクはベッドから降りるとノインをグイグイとベッドの方へ押した。
「女の子を床で寝させるわけにはいかないだろ!?」
負けじとノインもエリクをベッドの方に押す。
「私には白夜がいる!白夜は暖かいから大丈夫だから!」
「白夜ぁ?」
今の今までベッドの上で寝そべっていた白夜は、ちゃっかりエリクの足元に座っている。
こんな時にも自分ではなく白夜に頼るエリクに腹が立った。
「あぁそう」
ノインは眉を寄せると体を押すエリクの手を引き剥がした。
「…っ…ノイン…?」
ノインの行動に少し傷付いたというよりも怒らせてしまったのかという不安に、エリクは体を小さくさせる。
白夜が足元で爪を立てたが無視した。
「エリク」
名前を呼ぶと更に体は小さくなった。
それはそれで都合が良いと思いながら肩に手を掛ける。
そして、
「―――っ!?」
緊張したエリクの体を抱え上げた。
「な…っ?ノイン!?」
「暴れるなよ?落としたくないから。白夜も手出すなよ」
「……」
エリクの身を案じて渋々白夜が引き下がったのを確認して、ノインは体を反転させた。
目の前のベッドにエリクを放る。
「…っ!?」
「ほら、白夜もベッドにとっとと乗れ」
「……」
ノインは白夜の尻を叩くと報復を食らう前に自分もベッドに乗った。
エリクの隣に陣取って白夜を頭側に横たえさせる。
「これで文句ないだろ?俺もエリクも一緒にベッドに入ってるし。いざとなったら白夜が歯止め役になるし」
「歯止め役?」
掛け布を掛けてやりながら頭を撫でると、エリクはムッとしながら口ずさんだ。
何故今ここで使う意味が分からなかった。
ノインは自分の失言に気付いてばつの悪い表情を見せたが、
「こっちの話」
頭を撫でながら答えた。
「と言うわけだから宜しく」
その後ノインは微かに聞こえる程度の声で白夜に頼んだ。
一緒のベッドで一緒に寝る、そんな状況を作った自分も自分だが、今は仕方なかった。
少し腹は立つが白夜が歯止め役として一緒にいる事は今のノインとしては正直ありがたい事だ。
「なんだよ。ノインと白夜は仲良いな」
「はぁ?俺が白夜と?」
冗談じゃないと思ったが、エリクは本気ですねているようだ。
頭を撫でていた手を止めて、代わりに頬を撫でる。
「俺は白夜よりエリクと仲が良いと思ってるけど、それは俺の独り善がりだったか?」
嬉しくて微笑むと、エリクは初めキョトンとしたがすぐに顔を赤くにさせた。
「何でもない!今の忘れて!」
掛け布で顔を覆い隠して怒鳴るように声を張り上げた。
照れ隠しだとすぐに分かる。
ノインはさっき以上に表情を綻ばせると、ベッド脇の卓上のランプに手を伸ばす。
「灯り消すぞ?」
「…うん」
小さな声が返事したのを聞いてノインはランプの火を消すと、掛け布を被った。
体を反転させてエリクと対面する形で寝る。
すると柔らかい手がノインの手を握った。
その手を握り返してエリクの顔のあるべき場所に口を寄せる。
「おやすみ、エリク」
「…おやすみ…」
ぶっきらぼうな声が返ってきたが、エリクの手は裏腹に恥じらうようにぎこちなく力が篭る。
「……」
それがあまりにも可愛くて、思わず抱き込むと白夜からの蹴りが頭に入った。
翌朝―――
「……」
「んー…?姉さん…?」
「……」
「…っ…痛―――!!」
「何一緒に寝てるのよ!」
部屋に入ってきたアルマに、昨晩白夜に蹴られた頭の同じ場所を蹴られてノインはベッドから引きずり落とされた。
その後、話を聞いたシャナやソウル、テーベーから非難を浴びたのはまた別の話である。

戻る 次ページへ TOP Dragon Knight TOP



© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: