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ご多分にもれず中国でもBuz Marketing(バズ・マーケティング)が人気を集めています。もともと、中国では口コミの影響力が大きかったようで、インターネットが広く普及する前でも、認知経路などの調査をするとテレビなどのメディアと同じくらい「友人・知人から」という回答があったものです。最近は、「友人・知人」だけではなく「ネットの掲示板(BBS)」や「ブログ」が影響力を大きくしています。中国語では「口碑営銷」と言いますが、評判による売り込み(マーケティング活動)という意味になります。日本やアメリカでは、ブログが多く利用されました。影響力のあるブロガーに企業側が新製品のサンプルなどを提供して実際に試用してもらい、感想をブログに書いて貰うようなことから始まったのですが、企業側がブロガーに"謝礼"を支払うようになったり、企業側が成りすましブログを用意したりして、それが読者にバレたりしたために、炎上して逆効果になったケースもありました。掲示板(BBS)、商品案内サイト(ナビゲーション・サイト)、口コミサイトなどに、企業側が"よいしょ"コメントを書き込むタイプもありましたが、「やらせ」に警戒心を抱く日本では、逆効果になるケースが多いようです。中国では掲示板(BBS)がBuz Marketingの主要な舞台になっています。ブログのコメント欄よりは、大手ポータルサイトなどが運営しているBBSのほうが、少しだけ信頼性が高いと思っている人が多いからなのでしょう。口コミサイトやブログより、大手ポータルサイトのBBSのほうが、圧倒的に集客力が大きいという理由もあります。人海戦術の得意な中国だけあって、モニタリングから書き込みまですべて人力で代行してくれるBuz Marketingの会社がいくつかあって、大きいところでは全中国に1万人以上のネットワークを有して、クライアントに都合の良いストーリーになるようにBBSをコントロールしてくれます。中国の大きなBBSは書き込み側のIPアドレスも表示されたり、書き込む前に実名やIDを登録したりしなければならないので、様々な地方からより多くの人が参加しないと、すぐに「自作自演」だとバレてしまうので、巧妙にオペレーションする必要があります。良心的なBuz Marketing会社は、ネットワークされたコメンテイターに対象商品のサンプルや商品を理解するためのマニュアルなどを配布して、比較的オーガニックなコメントを書き込んでもらえるように努力していますが、ひどいところだと「本部」からメールで送られてきた文章をBBSに「コピペ」させる(貼り付けさせる)だけだったりします。受け取る側も、半分はこうした「やらせ」が行われている、という前提の中で、商品情報の参考にしているという感じでしょう。対象商品に好意を抱かせることができるかどうかは別として、知名度の低いブランドや商品の場合は、良くも悪くも話題になって多くの人たちの関心を引き付けられる、という点でそれなりの効果は得られると思います。むしろ中国では、ネット上のネガティブな評判を好転させるために、Buzを利用するケースが多いようです。放っておくとネガティブな情報が際限なく広がるのが、中国でも日本でもネットの特徴ではありますから。先日、中国最大のポータルサイトのニュース欄に、とある日本メーカーのネガティブな記事が掲載されてしました。日中関係が少し友好ムードになったとは言え、中国の皆さんはこうした話題が大好きで、併設されているBBSには瞬く間に"反日系"コメントがどんどん書き込まれていきました。このまま放置していたのでは、対象となった日本メーカーの評判が悪化するばかりか、日中関係にも影響しかねない....でも大丈夫!!この記事を掲載しているポータルサイトの"協力"を得て、この記事が"注目されないように"することができたのです。詳細はご説明できませんが、危機管理Buz Marketingの観点から"細工"を施した結果、対象記事そのものの削除はできませんでしたが、ニュース欄のトップページの目立つ位置にあった記事へのリンクをはずし、さらに"バックナンバーページ"から対象記事のタイトルやテーマ写真まで削除できました。つまり、なかなか対象記事にたどり着けないような状態を作り出すことができたことになります。すばやく対応できたので、他サイトへの転載も防げましたし、ニュース検索しても表示されない状況になりました。日本メーカーや日本という国そのものへの批判的論調となっていたBBSも、対象記事は"日本メーカーを非難しているのではなく中国のユーザー側にも問題がある"みたいな理性的な論調に変化していきました。ネガティブな情報は、"火"が大きくならないうちに、できるだけこっそり消してしまうのが一番です。日本では巨大広告代理店とお付き合いがなければ、なかなかこういう"技"を使えないものですが、中国では政府とか権力とかに頼らなくとも、意外とできちゃうものなのです。"バックナンバー"一覧で、第111号(赤い点線部分)だけ空欄に(リンクは残りましたが)
2007.12.08
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久々の北京で中国中央電視台(CCTV)の5チャンネル(スポーツ専門チャンネル)のスポーツニュースをぼーっと視ていたのですが、驚いたことに、本編からCMに入る前のフィラー(次のコーナーの紹介を兼ねた画面)の右下に、「この後のCMは1分09秒です」と言うテロップが入っていました。中国のテレビ放送のCMブレイクは日本と比べると一般にかなり長めです。3分のときもありますし、15分のときもあります。CCTVの主要チャンネルや主要都市テレビ局のメイン・チャンネルのゴールデンタイムであれば、著名ブランドの見栄えのするCMもたくさん流れますが、そうでないチャンネルや時間帯では、ローカルの健康食品やダイエット器具、下半身系の薬品の下品っぽいCMがこれでもかこれでもかと続き、時には10分や15分のテレビショッピング番組が突然始まったりするので、多くの視聴者には評判がよろしくありません。ゴールデンタイムであったも、15分間のCMブレイクの間に、視聴率はCM開始直前の10分の1まで下がってしまうことがあるのです。CMブレイクはまさにトイレタイムかザッピングの時間になっているわけです。こうした状況の中で、視聴者にCMブレイクの時間をお知らせすることは、「トイレに行ったり他のチャンネルをつまみ視するのはいまのうちだよ、その代わりCMが明けたら、このチャンネルに戻ってきてね」と言っているようなものです(と広告に従事している人々は思ってしまうのではないでしょうか)。広告主や広告会社は怒ったりしないのでしょうか??(番組と番組の間のCMブレイクの大体の長さについては事前に表示するテレビ局は以前からありました)日本のテレビのCMブレイクは中国ほど長くありませんし、視聴者側でもある程度、時間が読めるようになっています。番組の中だったら60秒か90秒、番組と番組の間であっても3分間CMが続くことはほとんど無いということを、日本の視聴者は体験的に知っているように思えます。それでも、クライマックス直前でCMが入ってしまうドラマやバラエティー番組などで、次のCMブレイクが60秒なのか90秒なのかCM前にお知らせしてくれたら、視聴者にとってはかなり便利ではないでしょうか。60秒だったらお風呂のお湯を張りに行くとか、90秒だったらちょっとした洗い物を済ませてしまうとかできるわけです。久米宏さんが『ニュースステーション』をやっていた頃、「この後60秒CM行きます」などと頻繁に言っていました。視聴者にはちょっと便利かもしれませんが、広告主や広告会社にとってはありがたくない話です。CMブレイクが一定の長さではなく、しかも長めの中国のテレビ視聴者にとって、「この後のCMは○分○○秒です」と言う情報はたいへん便利だと思います。CCTV5チャンネルが、視聴者の利便のために行っているとすれば、たいしたものだと思います。テレビの広告メディアとしての価値は、こうしてどんどん小さくなっていくのでしょうか....?後日談。CCTV関係者にこの件を尋ねてみると、視聴者にCMを楽しく視てもらう為にこうしたらしい。「次のコーナーは60秒後です」って言い方なら、その間のCMブレイクは視なくてもいいように受け取られるかもしれないけど、「この後は60秒CMです」って言い方なら、CMを売り込んでいることになる、という"言い訳"。ついでに、も一つ驚いたこと。中国中央電視台(CCTV)にゴルフ・テニスの専門チャンネルができるようです。CCTVでバンバン予告CMを流してました。いちおう共産主義国家の国営テレビ局が、ブルジョア・スポーツの代表格とも言われたゴルフとテニスの専門チャンネルを始めるなんて、さずがは中国と、改めて感動してしまいました....。
2007.01.13
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中国の輸入検疫検査で重金属が含まれと発表されたSK-IIの問題を、多くの日本メディアがそうであるように、中国による日本バッシングの一環だと片付けてしまうのは、容易いことです。でも、SK-IIはアメリカのP&G社のサブ・ブランドですし、中国での発売元はP&G社の中国法人(宝潔公司)ですし、返品の手続きのことで上海市民が抗議に押し寄せ、破壊行為に及んだのも、P&G社のオフィスです。しかも9月25日になって、香港でのテレビ報道を紹介する形で「SK-IIに続き、4大ブランドの化粧品にも検出されてはならない物質が」という記事が新華網に掲載されました。Clinique、Lancome、Christian Dior、EsteeLauderです。このうち、EsteeLauderは日本で製造されているようですが、一般の中国人にとっては欧米ブランドと言う認識でしょう。9月26日にはSK-II騒動の火付け役でもあった人民日報が弁明じみた記事を掲載しました((新華網への転載記事)。輸入製品の品質管理における品質検査部門の成果を自画自賛する内容で、「外国ブランドの"国民を越える待遇"時代は終結した。」と。文字通り解釈するなら、ということになります。これまでは中国国産品の品質は怪しかったのでチェックを厳しくしてきたけど....ということなのか、これまでは外国ブランドの品質管理はしっかりしていたけど....ということなのか、そこまでは読み取れませんが、いずれにしても中国における品質検査の"ダブル・スタンダード"を認めるような内容であることは確かです。ただ、最近の中国における品質問題は、日本を狙い撃ちしているとか、外国ブランドを狙い撃ちしている、と言う被害者意識だけでは片付かないのではないでしょうか。中国国産ブランドだって批難に曝されることがあるのです。9月26日には、天津市工商行政管理局の検査で、国民的ブランドである"[女圭]哈哈(Wa Ha Ha = 実際はフランスのダノンの資本が入っています)"や"農夫山泉"を含む5種類の機能性飲料が成分表示などに問題があるとして"ブラックリスト"入りしたことが報道されています(SOHU:解放網からの転載記事 / 深セン新聞網からの転載記事)。この"ブラックリスト"の中には、日本の"ポカリスエット"も掲げられてしまっているのですが、これをまた「日本バッシング」とか「外国ブランド排斥の動き」などと言って済ませることはできないでしょう....。原因や背景はともあれ、こうした問題に曝された場合、日本的な考え方では対応が難しいと思います。日本のような"防波堤"が存在しないからです。まず第1にメディア。日本の場合、大型広告主であればあるほどメディアは企業にやさしく対応します。たくさん広告費を払ってくれる企業の不祥事はあまり大きく取り上げられません。ところが中国では、大型広告主であっても油断できないのです。広告費の力で記事を抑えることは難しいと考えたほうが良いでしょう。日本とはメディアの構造が違います。全国紙(中央紙)がスルーしても、どこかの地方紙が取り上げるでしょう。テレビ局も同じです。企業の不祥事は一般人にとっては興味深いネタですから、どこかの地方テレビ局や新聞などで話題になると、瞬く間にニュースサイトや新聞などに転載されてしまいます。ニュースサイトはたくさんありますから、広告で抑えようなどと考えるのは無理でしょう。視聴率や発行部数やアクセス数を稼ぐことが、いまの中国の多くのメディアが目指していることです。第2に流通・販売網。日本であれば、メーカー側が非を認め自主的に販売を中止するか、消費者側の不満が相当高まら無い限り、販売店が勝手に問題商品を撤去するようなことは少ないと思います。問題が発覚するとメーカーの営業担当が販売店を回って、「困難な状況ですがよろしくお願いします」などと頭を下げて挨拶すれば、長い付き合いとか温情とやらで、なんとか繋がったりするものです。ところが中国では、問題が報道されると、事の真偽を確認する前に、販売店の独自の判断で販売を中止するケースが多いのです。そして第3は消費者です。メディアも販売網も防波堤にならないのは、消費者意識が日本とは異なるからです。元来品質の悪い商品に囲まれて成長してきた消費者ですから、多くの人たちは品質には敏感です。そして少しでも問題があると徹底的に抗議します。少しくらいいいやとか今回だけだろうから大目にみよう、みたいな日本人的思考にはならない人たちが大半だと思ったほうが良いでしょう。品質に問題がある商品を売っていたとなると販売店も攻撃されますから、敏感です。真っ先に崩壊するのは販売網だと考えたほうが良いかもしれません。また著名ブランドであればあるほど、成功しているとか儲かっているようなイメージを持たれています。でも(日本もそうですが)、自分が成功したり儲かっている(と思っている)消費者などごく少数ですから、著名ブランドの問題が発覚すると、ヤッカミも手伝って、そうした話題に興味が集まりますから、メディアはこの手のネタを取り上げたがるのです。そもそも品質管理を徹底して問題を起こさなければ良いのでしょうが、品質問題"発祥の地"は、中央・地方の国家商工行政管理局やその傘下の品質監督検査機関の"お役所"です。ここをコントロールすることは、メディアや流通・販売網や消費者をコントロールすること以上に困難なわけです。こうしたリスクを念頭に入れながら、メディア、流通・販売網、消費者とのリレーションシップを考慮しながら、コツコツと防波堤を築いていき、二次的被害を最小限に食い止める準備をしておくことが大切なのではないでしょうか。
2006.09.26
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デジカメ問題のときは、いよいよソニーにも"苛められる番"が回ってきたんだなぁ、くらいの感想でした。一部日本のメディアは「日本ブランド狙い」などと反日運動の一環のように報道していたようですが、日本以外の外国ブランドも国内ブランドも大きくなると業界を代表するようになりますから、消費者意識が高まり、こうした政治と直接関わらないネタでくらいしか差別化を量り難い商業メディアが乱立するいまの中国においては、ちょっとした品質問題などが露呈すれば、ブランドの国籍に関わらず寄って鷹って苛められる状況だと思ったほうがよろしいでしょう。今回は、ソニーのほうから、自主的に申し出たようです。2月9日に自社サイトにて、液晶リアプロTV5機種のソフトウェアの”無料アップグレード”に関するリリースを出しました。それによると、とのこと。ソニーフリークだった私にしてみれば、何とも親切な"ソニー・タイマー"の事前発動予告だと言う印象です。1,200時間ということは、1日4時間使用したとして300日ですから、保証期間(1年)を少し過ぎてから発動すると言うソニー・タイマーの定義からすると、発動が早過ぎてしまうのですが、そのあたりも考慮して自ら申し出たのでしょうか?ソニーは中国の場合、ITブランドとしてのイメージが強いので、VAIOなんかはまだ良く売れていますし、最近はソニーエリクソンのケータイがじわりじわりとシェアを拡大しています。その反面、大型テレビに関して言えば、韓国や中国国内ブランドとの価格差が大き過ぎてパッとしていませんでした。他の日本ブランドとほぼ足並みを揃えて、販売価格の値下げに踏み切った矢先の出来事ですから、出鼻をくじかれた感じでしょう。テレビで起死回生を狙おうとする企業としては、残念なタイミングと言わざるを得ないですね。デジカメ問題から3ヶ月もしないうちの"品質問題発生"ですから、中国国内のメディアが寄って鷹って大騒ぎするのではないかと、心配でもあります。(参考:Serichina News)それにしても、購入者の自宅にまで伺ってソフトウェアのアップデートをしなければならないことは、サービス・ネットワークにおいて中国国内ブランドより見劣りする日本ブランドにとっては、かなりシンドイお話ではないでしょうか。対象機種は小さくて26インチ、大きいのは50インチの液晶リアプロTVですから、購入者に「サービス・センターに持って来てください」と言うのは、さすがに酷な話ではありますが。人民日報ウェブ版を転載したTOM.COMによれば、既に1万5,000台が販売されており、修理には30分程度要するとのことです。移動時間も含めれば技術者一人当たり8軒くらい回るのが限度でしょうから、のべ1,875人/日のスタッフが必要になります。50人のスタッフを揃えたとしても、全部回るのに1ヶ月以上かかる計算になってしまいます。技術者とは言え、相対的に人件費は安価ですから、太っ腹に考えたとしても、広い中国に散らばった15,000軒のユーザーの自宅を隈なく回るのは大変な作業でしょう。大都市だけならともかく、40インチ以上の大型テレビは案外ど田舎の大金持ちが好んで買ったりしていますから。もちろん、サービス部門は複数の提携会社にアウトソーシングしているとは言え、考えただけでゾっとしてしまいます。そして、こういうときにこそ、日本ブランドと中国国内ブランドとのサービスの差が出てしまうような感じがします。中国の大手家電メーカーの場合、自社でサービス・ネットワークを構築し、全中国に隈なくサポート拠点があり、24時間”電話一本”でご自宅まで飛んでくるような体制を敷いている場合がほとんどです。いっぽう、日本など外国ブランドは販売店や技術会社にアウトソーシングしながら、サービス・ネットワークを構築する場合が多いのです。上述のTOM.COMの記事(人民日報ウェブ版から転載)では、記者がその弱いところを突く様に、「ご都合の良い時間に自宅に伺う、と言っておきながら、実際電話してみると、テレホン・サポート・センターでは、24時間以内にお返事します、ということで、いつ修理に来てくれるかその場で明確な答えを返すことができなかった。」と書かれてしまっています。私としては、ソニー・タイマーの発動は致し方ないにせよ、その対応が機敏で無いと、ここ中国のユーザーの満足度は大きく下がるでしょうし、メディアもそのあたりをどんどん突いて来るのではないか、と心配ではあります。
2006.02.13
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19日、自社HPのリリースで表現を微妙に変えてることによって、ソニーチャイナは当該製品の"返品"について初めて言及しました。15日時点のリリースでは、「中国の規定に基づき消費者の利益を守る」と言う表現だったのです。"リコール"(自主的な回収)にまでは踏み込んでいませんが、購入者の"返品"希望を受け入れる(人民網日本語版)、と表明せざるを得なくなったのは、前日CCTVニュースチャンネルで放送された番組の影響力が大きかったのではないでしょうか。直前のエントリーと矛盾しそうですが、CCTVの権威性は依然として大きいのです。逆の見方をすると、地方の新興大衆紙やニュース・サイトが中心となって騒ぎ立てた消費者問題も、CCTVや中国青年報などの"真打が登場”すると、ほぼ"お開き"となる公算が高いということです。つまりその先、こうした"真打"の報道内容と相反する内容はセンセーショナル・メディア側が"自主規制"するので、ネタとしての面白みが薄れてしまうのです。『毎週質量報告』。カタカナ日本語でタイトルをつけるなら『ウィークリー・クオリティー・レポート』とでも申しましょうか。毎週日曜日の12:30から16あるCCTVのチャンネルの一つ"ニュース・チャンネル"で放送されている、まさに消費者の品質問題に対する意識に訴える番組です。CCTVの主要番組は、放送後に内容をHPで確認できるので便利です(18日の『毎週質量報告』テキスト版はこちら・映像版はこちらから"視頻"の文字を見つけてクリックしてください)。CCTVでは問題が地方メディアで報道され始めた12日から独自に取材を続けていたようです。ソニーを含めた当事者のナマの声も多用していますし、一応東京の特派員からのレポートもありました。番組の内容をごく簡単に紹介します。ソニー最初の公式声明は「検査結果への疑義」であった。伝統的なカメラとデジカメが混在する成長市場で基準でもバラツキがあるはずだ、と言うものでした。しかし、2002年に定められたデジカメの基準であるJB10362―2002に基づいた検査結果なのです。当局はソニーの社内基準の提出を求めましたが、6製品のうち、上海工場産の2製品で一つの基準、無錫工場産の4製品で一つの基準しかありませんでした。しかも後者はホワイトバランスや再現性など重要な項目についての基準が見当たりませんでした。上海工場産の2製品については相当する社内基準があったので、その社内基準に基づき再検査を行いましたが、やはり不合格でした。ソニーの担当者はその検査結果に承諾のサインもしていました。2004年に公布された「流通領域商品質量監測辯法」によると、国家基準が最優先で、国家基準に規定が無ければ企業が自ら定めた基準、それも無ければその業界が定めた基準を参考に、工商局は抽出品質検査を行うことになっています。15日の声明でソニーは、検査結果を受け入れ、当該製品の販売中止を決定しました。けれども、リコールについては触れていません。16日、本件発覚後初めてメディアと接しました。CCTV番組チームの単独インタビューに応じたソニー・チャイナの李PR部長は中国の消費者に正式に謝意を表しました。李部長は業務上の過ちと内部管理上の落ち度を強調しました。しかし当該製品の回収については、ユーザーの生命や健康に関わる問題であればそうする、と言うことで明言を避けました。ユーザーの生命や健康に関わるかどうか、ここがソニーの"最後の砦"だったのかもしれませんが、敢え無く崩壊してしまいました。中国でも品質問題は、食品やトイレタリーなどヒトが直接口にしたり接したりするカテゴリーや自動車などヒトの生命に関わるカテゴリーに関心が集中するものです。この点で今回の"デジカメ"攻撃に違和感が残ります。でも不合格と言う検査結果を受け入れたからには、回収に対しても前向きで無いと、中国で無くとも消費者は納得しないでしょう。実は中国ではこの種のテレビ番組がとても多くて人気です。先日ローカルテレビ局のこの種の番組でアイスクリームの品質問題を取り上げていたのを観ていました。ローカル・メーカー工場を直撃取材して、使用禁止の着色料を使っている現場を映像で捉えていました。工場の衛生状態も酷いもので、あの番組を見てからアイスクリームを自粛するようになってしまいました。『毎週質量報告』でも毎週、品質問題を取り上げていますが、前20週のうち日本ブランドがメインで取り上げられたのは今回が初めてのことです。ところで日本だったら、記者会見を開いて、役員揃って頭を下げる"のが"ブームのようですが、中国では止めておいたほうが良いと思います。あの方式は、謝る側も謝ってもらう側も日本人だからこそ成り立つのだと思います。少なくとも中国では、あの手の謝罪会見でコトが解決するとは思わないほうがよろしいでしょう。自社のHPとCCTVへの単独インタビューと言う情報をコントロールした今回のソニーの対応は、中国ではリスク発生時の正攻法のメディア対応と言えると思います。
2005.12.19
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ソフトバンクが投資しているエレベータ広告に引き続き、広告業界ネタです。バスの車体全体に広告を描いたラッピング・バスが、東京で見られるようになったのは5年ほど前からです。それまで日本では、都市景観を損なうなどの理由で許可されませんでした。でも私が北京に勤め始めた8年前には、バスの車体広告は中国のいたるところで見られました。その頃北京では車体全体を広告メディアにできるバスが少なく側面に大きなステッカー広告を貼ったものが主流でしたが、この4~5年で車体全体を広告メディアにするラッピング・バスの比率が大きくなりました。数年前まで日系広告主の大多数は、ラッピング・バスの広告にネガティブでした。テレビや新聞などトラディッショナル・メディアへの過信が大きな理由ではあります。ほかにもブランドにマイナスの印象を与えると言う懸念もあったようです。北京あたりだと埃っぽくて車体がスグに汚くなります。物損事故で車体自体が凹んでいたり、塗装が剥がれているのに、そのまま運行する場合も多く、キレイで完璧な広告表現が再現できないのでブランド・イメージにマイナスと思われたりしたのです。さらに路線バスでも故障や事故が多いので、修理などのため予定されていた走行期間が短くなってしまうなど、管理面での懸念も指摘されました。この2~3年で、そうでもなくなりましたが、中国で広告メディアと言うとテレビや新聞に固執する日系企業はまだ多いようです。中国の消費者は多様かつ多層的ですから、特定の消費者層に絞ってコミュニケーションをする場合、テレビや新聞などのメディアが非効率になります。むしろ、エレベータ広告やラッピング・バス、バスストップ広告などが、特定の消費者層に対して広告効果が高くなる場合が多いのです。インターネット上の広告などはその際たるものです。そのネット広告とともに、バスなどの交通広告を含む屋外広告の収入の成長率は、テレビや新聞などを上回っています。北京でラッピング・バスの広告を扱う「流動伝媒(Magic Media)("Viacom Outdoor Beijing"に社名変更)」を、アメリカの大手メディア・グループ「バイアコム」が買収しました(Net Ease、実際はバイアコム傘下のアウトドア広告会社が買収)。12月11日に中国における広告業の1外資規制が完全撤廃されましたから、中国ではシンボリックなニュースとして報道されています(北京発新華網、新浪網、など)。「バイアコム」と言えばMTVの制作・放送で有名ですが、アメリカ3大テレビネットワークのCBSやパラマウント映画などを傘下におさめる、世界3大メディア・グループの一つです。そんな会社が北京のラッピング・バスなんて、ちょっと意外かもしれませんが、そこにはアメリカ企業の"実利優先"型中国ビジネス戦略が見えてきます。メディアを切り売りするのは"権利ビジネス"と言えます。テレビ局から広告時間帯、新聞社から広告紙面の権利を譲り受け、広告主に販売するビジネスを一般的に「メディア・レップ」と言います。日本の広告業界の場合、実質的には一部の大手広告会社がこうした権利を独占的に利用しているわけです。「流動伝媒(Magic Media)」も北京のバス会社から車体に広告を掲載する権利を譲り受け、広告主に販売する会社でした。では、テレビや新聞のメディア・レップを外資広告会社が堂々とできるかというと、これらトラディッショナル・メディアの場合、政府や党の影響力が強いため、権利を外資広告会社に渡したがらず、現実的にはまだ難しいのです。ところがバス広告などの屋外広告は、メディアそのものを私企業が所有している場合が多く、政治的影響力も相対的には小さいので、外資が比較的ビジネスをしやすいテリトリーと言えます。また、屋外広告の"メディア・レップ"はローカル資本の中小企業がほとんどですから、M&Aなども比較的容易と言えます。しかも需要に応じて新たにメディア(広告枠)を"創出"することさえ、テレビや新聞よりは可能性が高いのです。そして何より、都市型屋外広告は"成長領域"の中にあるのです。もちろん以前から外資メディア・グループは、中国での展開に積極的に挑んできました。「AOLタイムワーナー」がCETV(華娯電視)に出資したり、「ニューズ」が青海衛星テレビの広告枠を買い占めようとしたりしましたが、表向き"ビッグ・ビジネス"だと中国的な障壁も多くなり、その成果のほうは"スモール"になる傾向があるようです。「バイアコム」もテレビ番組などコンテンツの中国への売り込みは積極的にやっているようですが、まだまだ"地ならし"の段階でしょう。私にはラッピング・バスのほうが、短期間でリターンが望め、しかも将来展開の障壁も少ないビジネスのように思えます。例えばメディア業界なら、CCTVや人民日報や新華社といった中国では最も著名な相手と共同でビジネスを始めたりすると、日本では話題になりニュースでも大きく取り上げられたりするのでしょうが、ビジネス的には疑問符がついてしまいます。これは他の業種でも言えるのではないか、と。あなたの投資先や合弁相手は、著名な国有企業系である必要は無いのです。
2005.12.19
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「浙江省工商行政管理局(工商局)が品質検査で不合格となった、ソニーのデジカメ6製品の販売を停止させる決定」と報道されたのは13日。結果から申しあげますと、その二日後15日の午後にソニーは、検査結果を受け入れ、謝罪し、消費者の利益を守る対応をする、と公式に発表しました(ソニーチャイナHP)。13日の報道を受けて、販売停止となった浙江省以外の地域でも、家電量販チェーン店を中心に当該機種の販売を自粛する動きが広がりつつありました。ソニーの対応を非難する論調もニュースサイトを中心に広がろうとしていました。そして、報道されて2~3日というなかなかのスピードで、全面的な敗北宣言といえる"検査結果の受け入れ"を表明するに至ったのですが、私個人としては"大人の判断"として拍手を送りたい気分です。浙江省発新華網の報道や「国家カメラ品質監督検査センター」周剛主任のインタビュー記事(南京日報)など、比較的客観的と思われる報道から読み取ることができる、本件の経緯を整理してみますと:(1)浙江省工商局の販売停止決定は唐突なものではなかったようです不合格の通知が届いた11月15日から15日以内にソニーチャイナは、異議を申し立てることができました。この間、ソニー内部の基準で再検査を試みたが、結果は不合格だったようです。一方検査を浙江省工商局に検査を委託されている国家カメラ品質監督検査センター」も12月初旬から別のサンプルで検査したが、結果は不合格だったようです。こうした経緯を経て、"発売停止決定"が発表されたようです。(2)検査サンプルの中に、自社基準を満たさない製品があったようです(1)で述べましたようにソニー内部でもチェックしたらしいのですが、当局が無作為に抽出して不合格となった製品は、自社基準を満たしていなかったようです。この間、ソニーと当局との間で様々なやり取りがあったようで、その一部が中国でソニーにネガティブに報道されたりして、このままでは影響が広がるのではないか、と心配していた矢先、ソニは「検査結果を受け入れる」と正式発表をしたのです。素朴な疑問として残るのは、この検査では13製品に問題があることが判明したのに、ソニーだけが販売停止となってしまったと言う事実でしょう。Fuji Sankei Business iによると、検査対象となったのは、ソニーのほか、パナソニック、キヤノン、ペンタックス、SAMSUNGだそうです。うち、PENTAXには連絡があった様で再検査を申請しているようですが(Y! Japan News)、現段階で販売停止になったのはソニーだけです。Sankei Webが伝えているように、「今回の事件は、製品性能ではなく、デジカメ市場でトップシェアを占めるソニーを問題視したためではないか、との見方も業界に出ている。」「一社が狙い撃ちされたことに困惑」というのは、もっともかもしれませんが、敢えて申しあげれば、私には"有名税"みたいなものだ思えるのです。中国における"日本企業(ブランド)バッシング"の好例として、この事件を捉えるのは無理があると私は思います。日本同様この種の品質問題は中国でも日常茶飯事です。大広告主への気遣いから報道が控え気味の日本のメディアとは違って、読者を増やそうと必死の"都市報"と呼ばれる中国の新興大衆紙やニュース・サイトでは格好のネタになり大きく報道されます。こうした品質問題の"犠牲"となっているのは、何も日本ブランドだけではありません。むしろ日本ブランドとしては、今回のソニー"が堂々の初登場"と言えるくらいです。この1年で有名ブランドが品質問題でバッシングされ、販売停止などに追い込まれた例を挙げてみましょう。中国国内の中小食品メーカーもきっと使っていそうな"スーダン・レッド"と呼ばれる非許可着色料の使用でバッシングを受けたのは、"HEINZ"のケチャップと"KFC(ケンタッキーフライドチキン)"でした。マーケットで圧倒的なシェアを誇る"Johnson & Johnson"のベビーローションも、有害成分を含むということで中国ではNGを喰らいました。”Nestle"の粉ミルクも国家基準を超えるヨウ素が含まれているということで販売停止となりました。もちろん外国ブランドだけではなく、中国産ビールのホルムアルデヒド問題では、2大国内ブランドが矢面に立たされました。消費者意識が強まっている中国では、当局もチェック機能をしっかりやらないとメディアに叩かれますので、頻繁に"抜き打ち検査"をやっているようです。もちろんメディアのほうも独自に"品質検査"をします。きっと、いろんな問題が発覚するのでしょうが、ニュースバリューが大きいのは"外国ブランド"だったり"著名ブランド"だったりするわけです。マーケット・シェアが大きいブランドの品質問題ほどインパクトがありますし、強いてはその業界(製品カテゴリー)全体に警鐘を鳴らす効果もあるわけですから。ソニーは中国のデジカメ市場でトップシェアを誇っています。しかも他のブランドのデジカメにもモジュールを供給しています。デジカメ業界(カテゴリー)ならばソニー、となるのは、私にとっては"想定の範囲内"です。政治的背景が絡む「アサヒビール事件」とは話が違うのです。私は報道を根拠にしているだけで、実際にソニーのデジカメに品質問題があるのか確認していません。ただ今回の出来事を、中国における反日の動きの一環としてのみ捉えてしまっては、問題の普遍性を見失うことになりかねないと思います。中国では消費者意識が高まっており、当局(工商局や品質検査センターなど)やセンセーショナル・メディアはそうした消費者の興味に応えてこうという姿勢になっています。トップブランド、売れ筋製品、話題性のあるブランドほど、その標的になり易いのです。残念ながら中国マーケットにおいて、そうした要件を満たす日本ブランドは非常に少ないのですが....もし不幸にも標的になった場合は、当局への対応と同時に消費者への対応がたいへん重要なのです。報道されて3日で検査結果を受け入れて"謝罪"したソニーの対応は、"ブランド"への影響を最小限に食い止める、と言う意味では、"大人の対応"と言えるのではないかと思っています。
2005.12.18
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12日までに、浙江省工商行政管理局(工商局)がソニーのデジカメ6製品の販売を停止させる決定をしたようです(Sankei Web)。Web検索だと"第一報"になる「光明日報」のサイトをそのまま引用します。浙江省工商局は最近全省の主な小売店で、販売中の6大ブランドのデジタルカメラ34製品について、抜き打ちの品質検査を行った。その結果、13製品が不合格と判定された。さらに、ソニーの6製品のうち30台のデジカメに画像のムラや自動露出などに問題があり、この6製品は国家カメラ品質監督検査センターの総合判定で不合格となった。これを受けて浙江省工商局は既にこれら製品の販売停止命令を決定し、更に調査追及する見込み。品質に疑いがあるその他のデジカメについては、更に調査を継続中だ。検査は浙江省工商局がに委託し、国家経済貿易委員会が公布した国家業界標準JB/T10362-2003に基づき、テスト指標GB14437-93の数値化計測により厳密に行われた、とのこと。不合格となったのは、「オートホワイトバランスが有効に機能しない」「画像にムラがある」「液晶モニタの明るさ不足」「自動露出が不正確」の4つの問題が見つかったからだそうです(浙江省発新華網)。世界的にはいろいろと取り沙汰されていて、その"タイマー"の発動には私自身幾度か悩まされたソニーではありますが、中国においては"良い意味で"最も浸透している日本ブランドだと思っている私としては、4月に反日運動が盛り上がった際にソニーのサイトが攻撃を受けたことよりも、はるかに衝撃的なニュースです。しかもデジカメ市場は、以前より活気を失っているとは言え、日本ブランドの独壇場。この"事件"が4月に続く日本ブランド排斥へと広がらないように願うばかりです。実は10月3日にソニー(本社)はCCDの不具合を発表しています(ソニーHP)。ソニー製のCCDはキヤノンやオリンパスなどの他のブランドのデジカメにも供給されており、そうした製品にも影響をあたえました(インプレスのCCD不具合問題関連リンク集)。「品質にばらつきがあるものが生産されたこと及び使用環境などの要因が重なり、一部の製品で」「ファインダーや液晶表示部に画像が出ない、撮影できない、画面が乱れる」という症状が発生するそうですが、浙江省で不合格とされた原因がこのCCDによるとは、ほとんど考えられません。"第一報"に立ち戻ると、検査の結果34製品中13製品が不合格だったことが読み取れます。つまり検査対象の3分の1以上が"不合格"と言うことです。どのブランドが検査対象となったか情報を得ていませんが、日本ブランド以外のデジカメで"6大ブランド"に入りそうなのは、KODAK、SAMSUNG、LENOVOくらいですので、検査対象のほとんどが日本ブランドだったのではないかと勘繰ってしまいます。現に14日の浙江省発新華網は、不合格になった他のブランドも「国際的に知名度の高い」ものだ、と報道しています。さらに、13製品が不合格だったはずなのに、現時点ではソニーの6製品のみが販売停止決定を受けている、と言う点も不可解ではあります。浙江省工商局が打ち出した措置ですから、「販売停止」はいまの段階では浙江省のみで、北京や上海などの大きなマーケットでは販売しても良いことになっています。ただ委託とは言えが行った検査結果ですから、中国全土に波及する危険性は否めません。例えば、反日ムードの強い東北地区の吉林省の新聞社系ニュースサイトでは「"問題のカメラ"は長春でも売られている」(中国吉林網)と言うタイトルで、「吉林省工商局では浙江省工商局や国家工商総局と綿密に連絡を取り、指示があれば吉林省のマーケットで販売中の不合格デジカメに適切な処理を行う」と報道しています。メディアの責任を問う声さえ上がっています。つまり、中国でもIT雑誌などのメディアでも独自に"品質検査"みたいなものを行っているわけですが、今回の問題を発見できなかったのは、広告収入などでメーカーと癒着しているメディアの商業主義によるものだ、と言うわけです(新浪網)。ソニーでは本件に関する正式なコメントをまだ出していないようです。14日時点でソニーチャイナのHPではこの件に関する情報はありません。しかし、この記事の中では、ソニーが「多くのメディアやサイトで対象製品を評価しているのに問題は見つからなかったはずだ。」と表明したことになっていて、ソニーが暗にの検査に疑いと不信を臭わせているような書かれ方までされています。デジカメ・ユーザー=ネット・ユーザーという構図の中で、このニュースは中国のニュースサイトやポータルサイトやBBSに格好の話題を提供しつつあります。できるだけ早く事実関係と状況を早くして、ソニーとしての正式コメントをHPなどで発表したほうが良いのでは、と老婆心ながら思ったりしています。
2005.12.14
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中国において9月3日は抗日戦勝記念日です。特に60周年にあたる今年は、盛大なイベントが予定されています。天安門広場は一般の入場が禁止されるようですが、記念式典のためなのか、反日デモの暴動化を防ぐためなのか、まださだかではありません。まぁ中国のテレビを見ていると、この時期は抗日戦争モノのドラマや映画がたくさん放送されていて、ウンザリしてしまいます。前日の9月2日は「前夜祭」が行われ、9月3日は人民大会堂で「記念大会」が行われるそうです。当然この模様は、国家ご用達の中国中央電視台(CCTV)で生中継される予定です。CCTVは現在15チャンネルを持っていますが、そのうちの最低3つのチャンネルで同時放送されるようです。国家の重大行事ですから、地方のテレビ局もこのCCTVの中継番組を再送信して放送することになります。さて、今日になって突然CCTVから以下のような通知がありました。9月2日12:00~9月3日18:00までの間、日本企業、日中合弁企業、日本製品の販売代理店など日本関係の広告は一切放送しません。中国製品の広告であっても、例えば「日本技術」などの表現がある広告は放送しません。この期間、CCTVは日本企業のCMを放送しないと言うわけです。まあ、抗日戦争を取り上げている時間帯にCMを流すような日本企業は少ないわけで、ウチの場合は日本のクライアントさんに新聞広告の掲載スケジュールもずらすようアドバイスしています。この期間、CCTVなどにテレビCMを放送する予定になっている日系企業の皆さんは、ご留意ください。
2005.09.01
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昨年末のNIKEに続き、今度はマクドナルドの登場です。中国人を"侮辱"する内容のテレビCMと"認定"され、オンエア中止になってしまいました(asahi.com)。この「取り立て篇(30秒)」の冒頭の5秒に、割引期間を延長して欲しい顧客が、マクドナルドの店長に"跪いて"懇願するシーンがあり、これが問題になったとのことです((大公網=人民日報より転載記事)。どうも北京でオンエアされる前に中止になったので、私自身このCMは見ていません。中国人が”跪いて"いるシーンが、中国人を侮辱している、ということになったようです。実は北京でオンエアされていた、中国のインスタントラーメンのCMで、中国人が"跪く"シーンを強調していたものがありました。低価格の袋麺のCMで「(値段が)高くない」という意味の中国語と「跪かない」と言う中国語の発音が同じなので、皇帝の前で「跪く、跪かない」と言うやり取りを「(値段が)高い、高くない」と言う意味に転化させていく、いわばダジャレCMなのですが、しっかり中国人が"跪く"シーンが描かれていたのです。もちろん、こちらのCMは何ら違和感無く受け入れられていました。この二つの事例の大きな違いは、広告主が中国企業であるか無いかです。どちらのCMも、"跪いた"ほうも、"跪かれた"ほうも中国人なのですが、マクドナルドの店長さんは、星条旗を背負っていた、というわけです。ちなみに、マクドナルドのCMは所定機関への"広告審査"を受けていなかった、と言う点でも批難を浴びました。以前も書きましたが、中国では広告表現は当局の許可を受けるのが"原則"です。しかし、どの機関の許可かと言うとハッキリしていません。"原則"としては監督官庁である広告を実施する地域の「工商行政管理局」なのですが、地域によって対応がバラバラです。ですから通常商品のテレビCMなどは、オンエアするテレビ局の"審査"で代用する場合が多いのです。テレビ局も"国家機関"ですし"検閲"機能を有していますから、いろいろチェックしますし、そこのチェックが通れば"広告審査"をクリアした、と一般には思い込んでしまいます。こうした問題に発展しなければ、テレビ局のチェックでOKだったはずです。今回の"不祥事"では欧米系の大手広告エージェンシーが晒し者になってしまいましたが、医薬品や健康食品など当局の管理が厳しい商品を別にすれば、テレビ局のチェックで"広告審査"を代用することは多くの広告主が黙認しています。"記者発表会"やプロモーション・イベントなどの場合も"原則的には"当局の"許可"が必要だ、と言うことは覚えておいてほうが賢明です。たいていの場合は許可無しで大丈夫であっても、何かあった際に、"晒し者"にされるリスクを覚悟すべきでしょう。ことろで、P&Gのヘアケア・ブランドである"PANTENE"も、その成分表示に疑惑が持ち上がりテレビCMのオンエアを取りやめたそうです。最近では、ケンタッキーのチキンに認可されていない着色剤が使用されていたとか、ネスレの粉ミルク、ハーゲンダッツのアイス、ジョンソンのベビーローションなど、日本ブランドでは無い外国ブランドがバッシングを受けています。ただ私は、これら外国ブランドは中国で十分浸透しているからこそバッシングの対象になり得たのだと思います。ファストフード、食品、トイレタリー商品など、日常生活に欠かせないカテゴリーで欧米ブランドが浸透している証拠と言えるでしょう。アサヒビールや吉野家やトヨタや東芝やJALなどの日本ブランドがバッシングを受けた状況とは、別な視点で捉えるべきでしょう。日本企業の皆さんは、バッシングが欧米企業に向かっているから、一安心、などと考えないほうがよろしいかと思います。"反日運動"は一休みの状況ではありますが、7月~8月、さらに9月にかけて、中国の反日スケジュールは目白押しです。日本の企業はその活動に細心の注意を払うべきですし、中国在住の日本人の皆さんも中国国内の報道は常にチェックしておいたほうが賢明だと思います。
2005.06.24
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日本の一部歴史教科書に大企業が"加担している"という報道から、中国では日本製品の不買運動が起こりました。国連安保理常任理事国入りに動きと"相乗効果"をもたらし、またしも反日の雰囲気が盛り上がりました。"右翼的"歴史教科書と日本の大企業との関係を報じ、今回の不買運動の火付け役となった「国際先駆導報」(新華社系の新聞)は4月8日付け紙面(7日発売)では続報をトップで取り上げています。3週連続のキャンペーンです。ただ内容はかなりトーンダウンしています。「国際先駆導報」の報道によって、日本の大企業のOBなどが「つくる会」から脱退したり、個人としての賛同であることを明確にしている、という自社の"お手柄"を述べつつも、名指しされたいくつかの日本企業の"言い分"(反論)についても、かなり正確に書いています。「ビジネス上のメリットを考え、日中関係を重視して"政冷経冷"の局面をつくらないように、日本企業に望みます」と日本企業側の努力をしっかり求めているあたり、とても"中国的"ですが、反日運動の盛り上がりと中国経済への影響を恐れた中国政府当局が、問題の収束に向けてコントロールしているのは間違いありません(毎日Web)。三菱重工が名指して、まだ叩かれ続けていますが、中国で発表した声明文の中で「国際先駆導報の報道を"捏造"と表現したのが影響していると思います。"捏造"とされた「国際先駆導報」としては、黙っているわけにはいかなかったでしょう。「三菱重工が歴史教科書に賛助しているのは確実」と大見出しをつけて、批難しています。三菱重工は中国で、一般消費者向けの製品をほとんど販売していませんから、こうした"強気"の対応ができたのかもしれませんが、ことの真実とは別に、当分中国で"三菱"系企業がバッシングを受ける危険性を秘めていると思います。日本国内では、ビジネスを優先するあまり中国に対して"弱腰"の対応をして良いのか、と言う意見も出ているようです。ただ「国際先駆導報」の取材に対応したアサヒビールや日野自動車の態度は決して"弱腰"だとは思いません。「国際先駆導報」の3月25日付け記事の問題点は、日本企業の"名誉顧問""特別顧問"などの肩書きに対する中国側の理解不足から生じています。中国では会社を辞めた人は、たとえ社長であっても、その会社の肩書きなどもらわないのが一般的だからです。「"顧問"といえば重要な役割を持つ企業幹部」というのが中国人の認識で、そうした肩書きを持った人が行っていることを"企業行為"と捉えたのです。これは習慣の違いから生じる誤解であって、まず日本企業の"顧問制度"についてしっかり理解してもらう、そして尚且つ誤解を招く危険性があるとすればその誤解の元を善処する、こうした対応は決して"弱腰"とは言えないと思います。実際、4月8日付けの「国際先駆導報」は日本の"顧問制度"をかなり客観的に伝えています。兎に角、感情的にならず冷静に対応する。謂れの無い言いがかりをつけられた時、熱くならずに冷静に対応しないと、ケンカになります。たとえ正しい主張をしたとしてもケンカになったら、良いことはありません。日本、日本企業、日本のメディアも、冷静に対応して中国の正確な理解を促していくのが良いと思うのです。「国際先駆導報」のウェブサイトには4月8日付けの紙面が既に掲載されていますが、不思議なことに(?)4月7日北京時間正午時点で、紙面ではトップ扱いの「歪曲歴史教科書への日本企業賛助に関する再調査」という記事を含め、教科書問題の記事が一切アップされていません。ウェブ版は転載や引用ですぐに他メディアに広がりますから、中国政府当局がこれ以上の問題の広がりを恐れてのことだと思います。
2005.04.07
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ことの始まりは、新華社傘下の新聞「国際先駆導報」が3月24日付けで掲載した記事(中文)でした。新華社の日本特派員署名入りのこの記事は、「アサヒビールは日本の歪曲した教科書に賛助している」というショッキングなタイトル。ここで"歪曲した教科書"とされているのはご存知「新しい歴史教科書をつくる会」により扶桑社が出版している教科書のことです。「つくる会」の"賛同者"はホームページで堂々と公開されており、その中に中国で活動を行っている日本企業の関係者も多数いますが、アサヒビールが大きく取り上げられてしまいました。なぜでしょうか。まず、このビール会社の名誉顧問である中條さんは、「つくる会」の会報『史』(平成16年7月号)に投稿した随筆の中で、"国事行為たる戦争の犠牲者を祀る靖国神社に詣でる事をしない政治家に、国政に参加する資格はない。"と書いていたのです。また、"賛同者"名簿に関係者の個人名が掲載されている他の企業の多くは、一般消費者が購入するような製品を中国で販売しておらず、中国の消費者にとってはなじみの薄い企業でした。さらに、それとこのビール会社は、中国の著名な企業と合弁会社をつくって中国市場参加しています。そうしたことから、この会社の名前だけが大きく見出しに踊ってしまったのだと思います。中国の新聞、特に地方紙は転載記事を多く掲載します。特に新華社傘下のいわゆる"全国紙"は権威性が高いので、「国際先駆導報」の記事は中国の各地方都市の新聞にどんどん引用されていきます。そして反日感情が強いと言われる東北エリア吉林省長春市のとある一商店主がその記事を目にして、日本ブランド商品を販売棚から引き上げてしまったようです。このことを、地元の地方紙がネタとして取り上げました。そしてその記事が転載されたり引用されたりして"不買運動"が各地に広がったようです。長春の地方紙の記事はまずネットに掲載され、それを見た地方紙の記者が後追い取材に動いて記事にして、そのエリアの一部の商店が日本ブランド商品を棚から引き上げ、その様子をまた記事に取り上げていく...ほぼ1週間で"不買の動き"は中国各地に広がり、新聞やネットでどんどん報道されるようになりました。このビール会社では、3月31日に主要メディア、"誤った認識の"記事を掲載したメディアに「声明文」を配信し、自社のHP(中国語)にも掲載しました。この「声明文」のポイントは3点。(1)企業として資金援助はしていない(2)中條さんの記述は個人的なもので、企業としては支持しない(3)企業の歴史認識は1995年のいわゆる村山談話に沿うもの「国際先駆導報」の報道が"正しくない"ことを直接は言及せず、"正しくない"論拠となる"事実"のみを簡潔に伝える内容でした。この日の中国外交部(外務省)の定例会見の質疑応答で日本メディアの記者が、一部の地域で発生している日本ブランド不買の動きについての中国政府の見解を、このビール会社の声明文を引用する形で質問しました。これに対し、外交部の劉建超報道官は、「(日本側の間違った歴史認識から発生した問題とは言え)政治問題が経済に波及するのを望んではいない」と明言(SINA=中国語)。この政府見解は、ビール会社の"声明"とともにこの日の夕刊紙からさっそく掲載されるようになりました。ところが、週刊の「国際先駆導報」は既に3月31日付けの続報のために取材活動を済ませていて、このビール会社に的を絞った第2弾を掲載(中国語)。4月1日以降は、「国際先駆導報」のこのビール会社に対する"批判的な内容"の記事と、外交部コメントとこのビール会社の"声明"から成る"抑制された内容"の記事が、中国各メディアに転載・引用されているという状況で、報道総量としては随分減ってきている感じがします。日本ブランド不買の動きは、日本における中国製製品不買の動きに結びつく、そうなると中国経済が被るダメージのほうが大きい、そうした考えから、中国政府は政治的問題をこれ以上経済問題に波及させたくない、と言うのが本音でしょう。外交部劉報道官の応答もそうした方針から来ていると思います。政府がこうした方針を示している以上、政府に近いメディアほど徹底してその方針に沿った報道を行うのが中国です。中央政府のコントロールが行き届きにくい広東省などの一部のメディアを別にして、教科書問題と特定の日本企業とを結びつける記事は少なくなる傾向にあります。とは言え、火の付いてしまった"末端"の人民はなかなかおさまりません。先週末には各地で反日デモが繰り広げられました。日本の国連安保理常任理事国入りに反対するのがデモの目的なのですが、一部では日本企業が標的にされたりしたようです(Asahi Com・ただこうした反日デモや集会について、中国国内報道はかなり抑制されているようです)。また4月1日付けの産経新聞朝刊に掲載された「日系企業いじめ・報道『歪曲』不買を扇動」と言う記事が、中国メディアを強く刺激してしまったようです。「日系企業いじめをしかけたのが中国当局の宣伝機関とされる新華社系新聞社」と名指しで攻撃された「国際先駆導報」は、産経新聞の取材に対して「来週の続報に注目してほしい。より事実に即した報道をする」と答えたそうです。(なぜかこの記事、Webに掲載されていないようです....)ご存知の通り、は「新しい歴史教科書」の出版元も産経新聞もフジサンケイ(+ライブドア?)グループに属していますから、産経新聞の気持ちも分らなくは無いのですが、ここはひとつ丸くおさめていただきたいと、中国で働く日本人は思っているのではないでしょうか。
2005.04.04
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