1~ももたのこと



猫っておもしろいですね。
わたしは大好きです。
17年くらい猫と一緒に生活をしました。

はじめて猫を連れ帰ったのは大学生のとき、白地に大きめの黒の水玉の、凛々しい男の子で『涼』と名付けてとりあえず保護して、一緒に暮らしていた筈だったんですけれど、気が付いたら別な部屋の後輩の猫になってて、名前も『うし』に変わってましたね。
「あれ?」と思いました。

2度目はバイト先のパン屋に迷い込んできた仔猫をとりあえず保護、という形で下宿に。
ほんとにかわいかった。
わたしはシャム猫だと思ったんです。
自分の中のシャム猫のイメージ…ちょっとグレーで耳とか鼻とかちょっと色が違っていて、スマート…通りだったからです。

ちょっと薄汚れて、ご飯もたくさん食べていなかっただけだったのですね。

それからその猫に『ももた』という名前をつけて、ももたはりっぱな白い雑種に育ちました。耳とおでこなどのベージュの模様もおしゃれな感じで。

ももたはとても人懐こく、うちへの訪問者の誰からも好かれる猫だったんですよ。
『人の良い』という言葉がありますが、まさにそれで。
一年半くらいは一緒にいられたのかな。

下宿からちょっと離れたマンションの一階に引っ越して、裏が小さな山のようになっていたこともあり、よく遊んでいたみたいです。
わたしは、ももたが病気しているなんて気付かなかったんですね。
今でも、なんだったのか、よく分からないけど、今ならすぐ病院に連れていかなきゃということは、分かります。

少し元気がないな…と感じはじめてから数日後だったのか、この頃は部屋でじっとしているももたが、夜、すっと起きて、ベランダの窓の方へ行きました。
そして振り返って「にゃあ(あけれ)」と、言いまして、わたしは「ここを開けて出てったら、もう帰ってこないんだ」と思ったのです。

何で開けたのか分からないけど、開けました。
とても嫌だったんですけれど、そうしなきゃならないと思いました。
そしてももたは、わたしを見て「にゃあ」と言って、出て行きました。
わたしは「ありがとう」というのが精一杯でした。

それっきりです。

無知故の無力さは、仕方がないのかもしれないけれど、後を引きます。


ももたがいなくなって1~2ヶ月経ってからでしょうか、マンションの前の車の下に、小さな白い物体が…
慌てて見に行くと、ももたを一回り小さくしたような、(本来は)真っ白な(筈の)仔猫でした。

猫好きさんは分かると思いますが、猫も顔がそれぞれ違いますよね、その猫はももたにソックリだったのです。
「娘発見!」の感動的な瞬間でした。

一瞬後には、ぴゅーっとものすごい速さで逃げられましたけど。

うわー、かわいくない、というのが第一印象で。
その後もしばらく噛まれたり顔を引っ掻かれたりで、ももたとは全く違う、その娘猫とのおよそ16年間の生活が始まるのですけれど、この時は、そんなにこの猫と深く関わることになるなんて思っていませんでした。

去年の震災直後までの。

16年間。


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