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「そしたら、こいつプレ中に隣でスース-眠っちゃったんですよ。先方にバレないかひやひやしましたよ」「君は本当に度胸がいいねぇ」「アフリカ向きの性格だな」勿論、どちらも呆れて貶しているのですが、美味しいものを頂いたのですから、酒のツマミにされても全く気になりません。ウフフ…そのうちに、カラオケ好きのAさんからリクエストがあるはずです。食事の前のアぺリティフの時に「食べ終わったら行くからそのつもりで」と言われていたので。まあ、歌うだけで場が盛り上がるならば、何でもやってあげますよ。今日は調子も良いし。この夜は少なくとも3曲は歌ったでしょうか。「お嫁サンバ」「君は天然色」「カナリ‐諸島にて」だったと思いますが。それ以上歌おうとしたら「君の出番は終わり」と言われてストップが掛かってしまい、すぐにお役御免になりました。「カナリ‐諸島にて」を歌った時は、あの西アフリカ最西端のレストランで見た、青空と青い海原と白い汽船が織りなす雄大な景色を思い浮かべていました。楽しみよりも苦しみの方が圧倒的に多かったこの出張ですが、思い出してみれば良い事しか思い浮かびません。人間と言うのは、本能的にポジティブなんでしょうか。もうすぐ大晦日の午前0時。ここパリはシャンゼリゼ通りから一本横に入ったジョルジュサンク通りのホテルを出たところです。その晩の夕食後、私の部屋に冷え冷えのシャンペンが届けられました。一度やってみたかったんですよね、シャンペンのBouchonを天井に向けてぶっ放すのをシュポ―ンつい先ほど、ホテルのレセプションで言われたことを思いだします。「午前0時になれば、道を歩いている女性にキスしても大丈夫ですよ。ただし、カップルの女性はやめたほうが良いですね」シャンゼリゼ通りにでると人の多さは何十倍にもなり、至る所で人々が歓声を上げたりふざけ合ったりしています。何と、信号で止まっている旧式のシトロエンを5-6人の男たちが前後に激しく揺さぶっている車の中のドライバ-は女ですが、顔は半分笑って半分恐怖で歪んでいるように見えます。大丈夫かな。そこで、所でカウントダウンが始まったようです。サンク、キャトゥル、トゥロワ、ドゥ、アン、ゼロ―あちこちで爆竹が鳴り、余りの煩さに耳を抑える。と、通りのあちこちでBisousビズが始まっていました。と同時に「Bonne année! Bonne santé!」(Happy New Year & Good Health!)の大合唱が至る所から聞こえてきますところで、Bisousとは恋人や夫婦間では口づけのことですが、招待客や友人知人とのBisousは、相手の頬に自分の頬をくっつけて「チュッ」と音を立てて、それを左右交互に2回から4回繰り返します。親しい人以外では、頬に唇は付けないのがマナ-のようです。左右を見渡すと、10mほど離れた所にいる女性が「Bisousハンタ-」に捕まったようです。彼女の前には既に3人の若者が列を作って待っているんです。勿論Bisousの順番待ちです。よく見るとその女性(学生風ですね)は、いやな顔一つせずに順番待ちの男たちにBisousをしてやっています。今なら間に合います。私はその列の最後尾に飛んでいくと、最後尾の男が振り向いてニヤっと笑いかけるではありませんか。お前もか、と言わんばかりに。その夜、私は人生で初めて、全く見知らぬ若い女性の頬に自分の頬を付け、何と4回もBisousをしてしまいましたBisousする前は少し緊張してい問思いますが、終わってしまえば別にどうという事はありませんでした。単なる挨拶と言うか。ただ、新年の挨拶は忘れずにしました。「Bonne année! Bonne santé!」彼女からも同じ言葉が帰って来ます。素敵な笑顔と一緒に今年も良い年でありますように。そう願わざるを得ませんでした。さて、出張はこの年の1月末まで続きますが、残念ながら余りに順調に行き過ぎて、このブログでお披露目できるような土産話はありませんでした。しかし、それはパリ赴任前の嵐の前のちょっとした静けさだったのですが、その話はまたいつか機会があれば、ということに致しましょう。〈終わり〉2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.05.14
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Kolweziからの陸路の移動は大きなトラブルも無く順調でしたが、ルブンバシ空港から首都キンシャサへのフライトは出発が大幅に遅れたものの、何はともあれ無事に到着した途端、大きな安堵のため息をつきました。この奥地への長い旅は、無意識のうちに肉体的にも精神的にもかなりの負担と緊張を強いられていたのでしょう。キンシャサでは、来た時と同様に某商社の所長さん宅で歓待していただき、芯から疲れた体をリラックスすることが出来たのは本当に幸いでした。Iさんは結局, 体調はアレを食べた後でもいつも通りだったようで、何とも強靭な胃袋の持ち主の様ですなあ。私の方は、一時の不安定な精神状態を脱することができ、今はご馳走に舌鼓を打っているところです。ところが好事魔多しという事でしょうか、年末のヴァカンスシーズンに突入しているので、欧州着便と欧州内便が満席でなかなかフライトが取れないのです。まあ、でも慌てることは無いや。もうすぐパリに行けるのだから。取れた便はアリタリアで、ローマでの乗り継ぎは2時間です。ぎりぎりではありますが、同一航空会社なので少々遅れても待ってくれるのではないでしょうか。ただ、この航空会社の評判は微妙ではありますが。しかしIさんからは、「アリタリアは欧州ではあまり評判が良くはないようだけど、アフリカ-欧州間のフライトはひどく遅れたというのはあまり聞かないから、きっと大丈夫だろう」との心強いお言葉を頂いたので、一安心です。早くもパリの煌びやかな夜景が目に浮かんできます。待ち遠しい!!!それから3日後、私たちはローマのフィウミチ-ノ空港にいます。キンシャサからのフライトは無事に着いたものの、恐れていた通り大幅に遅れて到着したので、予約していた乗継便には乗れませんでした。次の便は5時間後です。折角朝早くに着いたのに、パリ着は夜になってしまいます。こういう時の心境と言うのは、愚図りそうになる幼い子供に言い聞かせる母親の気持ちでしょうか。また待ちぼうけを食わされた心細そうな子供に向かって、母親は言います。「あともう少ししたら飛行機に乗れるから心配しなくていいよ。それまでにお腹すいたら何か食べようね。でも飛行機の中で美味しい食事が出てくるから待ってたほうが良いかも。そして飛行機の中で少し眠ったらすぐにパリに着いちゃうよ。そうしたら大好きなパパに会えるね」と言ったところだろうか。それと似たことを私は自分のか弱い心に言い聞かせているいるのです。大丈夫、もうすぐだから頑張ろうね。 今晩、パリ到着が夜遅くならなければ、パリ駐在で会社の大先輩のKさん宅で夕食をご馳走になることになっています。いまから楽しみです〈つづく〉2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.05.12
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別にGrounouille(グルヌイユ=カエル)を食べたからではないでしょうが、あれからあまり食欲がありません。それに欠伸が良く出ること、何か頭がぼーっとして昼食後は居眠りしてしまいそうで、ちょっとやばいですネ。眠くなるのには理由があります。Iさんは私よりフランス語の会話が上手なので、フランス語が母国語である相手に合わせて、ミーテイング中は全てフランス語ということもあるんですが、その会話の内容が良く理解できないんです。ああ今あのことを話しているんだな、と思っていると、あれ、何かおかしいぞ、もう別の話題に移っていることがあります。要は会話の流れについて行けないんです。何とか付いていこうとすると頭がパンパンになるし、かといって会話から距離を置くと眠くなってしまう。実は今晩、鉱山会社の某ザイ-ル人幹部に、ラウンジで飲もうと誘われているらしいのですが、Iさんに言われる前に部屋をトンずらしてきました。今頃は私の部屋のドアを叩いているかもしれませんが、もうどうでもいいや、という気持ちです。私は今、ホテルの裏庭にある小さな湖の周りをゆっくりと歩いているところです。一人でぼ-っとしていたいな。出来れば今夜は誰とも会いたくない。あともう1周してから部屋に戻るとするか。直ぐに寝てしまうのもいい。腹が減ったらルームサービスを頼めばいい。何か愉快になって来たな。明日の朝Iさんに会ったら、昨晩は体調が悪かったので寝てしまいました、と言い訳すればいい。自分がダラシナイ、情けないとは思わないことにしました。心も体も弱っている今、この程度の"反乱"を起こしても誰に迷惑をかけるで無し、むしろ今夜は徹底的に羽目を外して心も体もリフレッシュすれば、これからも続く出張にも耐えていけるだろう。よし、今晩は何も考えずに飲んで寝よう、以上翌朝、既にレストランで朝食をとっているIさんに、昨晩は体調が悪くて散歩から戻ってベッドに横になったらそのまま寝てしまいました。すみませんでした。と、一気に言い訳を話しました。自分でも情けないほどの大根役者ぶりでした。鉱山の昼食時間は2時頃と遅いんです。今、Canteenで行列に並んでランチの皿を取っているところです。ふと、Iさんのトレイの上に何か変なものが乗っているのに気付きました。肌色のような色をしたこぶし大の何か柔らかいものを、ナイフで真ん中から切った半分なのですが...「Iさん、それ何ですか。食べ物ですよね」席に着いてから、そう訊ねます。そういう形に敢えて作ったケーキかプリンでできたデザ-トかオードブルだと思っていたので、大した返事は期待していなかったのですが。ただ、表面にある皺がちょっと気になるんです。何かに似てる...Iさんは、スプ―ンをその塊に差し込んで一口分すくって、こう言います。「これはサルの脳みそを加熱した料理なんだ。この地域のスぺシァリティかな。前に来た時、ある人に言われて食べたら、薄味だけどまあまあ美味かったんだ。よかったら味見してみるかい? 珍味だぞ」「いや、いいです。止めておきます」と右手を左右に激しく振りながら返事した後、暫く何気なく様子を窺っていたのですが、Iさんが一口目をスプ―ンで食べるのを見ていて、胸がむかついて吐きそうになりましたが、何とか堪えられました。吐かなかったのはまだ何も食べていなかったからです。きもちわる~~半分とはいえ、ほぼ元のままの形を留めているソレを見ながら、この人は普通じゃない、ゲテモノ食いの化け物だ。まるで人食い人種が好物を食べる姿を見るように、恐怖と嫌悪の混じった引き攣った顔でIさんを見ていたと思います。そんな私の気も知らずに、Iさんはそれを食べ終わりメインディッシュの肉に移っているところです。今のところ容態に変わりはないですが、今日は、特に今晩は要注意です。明朝、鉱山会社の責任者に今回の訪問の結果についてプレをするので、今晩はその資料作成で徹夜になるかもしれません。もしIさんが体調を崩して寝込むような状態になれば、明日のプレは勿論のこと、Lubumbashiへの陸路、その後のキンシャサへの空路の移動に影響が出るのは避けられません。そうなったら、ヨーロッパへ帰るのが12月末も末、クリスマス以降になってしまう…。やだなあ、大丈夫かな。パリでの華やかなイブの夜を夢見ていたので、そんなことになったら一大事です。そう思うと何故かIさんに少し腹が立ってきました。こんな大事な時に、猿の脳みそとか変なもの食べないで欲しいよ。危機管理がなってないねぇ、本当にこの人は!!しかし、こんな妄想も浮かんできました。4年後に後任者との業務引継ぎの出張でここに来た時に、「この料理はここでは珍味として珍重されている料理だ。他では絶対に食べられないぞ。試してみるといい。いい土産話になるから」イヤイヤ、そんなことは絶対に無いでしょう。私はIさんとは違ってゲテモノ食いではないですから。〈つづく〉2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.05.09
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今は午後の3時。ザイ-ル(現コンゴ民主共和国)の首都キンシャサから空路2時間のLubumbashi(ルブンバシ)でランドクル‐ザ-に乗り、銅鉱山Kolweziに向けて悪路をすっ飛ばしているところです。あと2時間ほど掛かるらしい。私はイヤホンで大瀧詠一の曲を聞いています。聞きながらLubumbashiの街並みを思い浮かべていました。植民地時代の建物が結構残っている町並みには、今は盛りの赤紫色のブーゲンビリアが咲き誇っていました。暑くてむしむしする薄汚れた首都キンシャサとは対照的な、乾燥した気候で明るい空気に満ち満ちていたのです。今回の西アフリカの旅の中では最も好感の持てる街かなあ。しかしそこの街にいたのは僅か2時間で、我々は車で出発しました。Kolweziまでは数百キロなのですが、悪路続きなので4-5時間はかかるとのことです。ふわぁぁぁ、退屈で欠伸が出ちゃうよ。いや、退屈ばかりではない、というのは分かっているんです。昨日から体調がイマイチというか、体が怠い。日本を出てから2か月近くか。結構疲れてるんだよなぁ。Kolweziには10日間ほど滞在した後キンシャサに戻り、後はヨーロッパに帰れるので最後の力を振り絞って頑張らなくちゃ-、と思ってはいるものの力が入りません。西アフリカの旅は肉体的にも精神的にもきつい。微妙なところで保たれていたバランスが、ちょっと体調を崩すや否や、精神力までもがガラガラと音を立てて崩れそうな嫌な予感がします。今晩は美味しいものを食べて直ぐに寝よう。どんな料理が食べられるか分からんけど。その後私は車の中でウトウトと寝てしまい、現地に到着するまで車の中で米突きバッタのように、頭を前後左右に振りながら寝ていたようです。ここはKolwezi市内のあるレストラン。Iさんによれば、この店の料理は結構美味い、とのことですが、私は、そうですか、と素っ気なく答えます。ここ2か月ほど一緒に旅をして分かったことですが、Iさんと私は食べ物の好みがかなり違う事が分かりましたから、ここは美味しいよ、と言われても素直には喜べません。フランス語で書かれたメニュ-を見るのはセネガル以来でしょうか。でもあの時は、たった1枚のメニュ-でしたけど。いわゆる「本日のメニュ-/Plat de jour」ですね。しかしこのレストランのメニュ-は分厚いし結構な品数です。しかし写真が付いていないのでイメ-ジが全く湧きません。仕方ないのでIさんに一任することにしました。取り敢えずオードブルのようなものをいくつか頼んで、様子を見ることにしました。最初に来た皿を見ての第一印象は、小さい骨付きの鶏のから揚げでした。食べてみると鶏肉にしてはさっぱりしていますが、味は唐揚げそのものでした。「これ、結構いけますね」「そうか、それは良かったな。まあ、日本じゃ食べないだろうから」「小型の鶏かな」私はそう想像していました。「明日山に行ったら見せてやるよ。結構どこにでもいるからな」山とは銅鉱山のことです。メインは体を元気付けるためにぺパ-ステ-キにしました。Kolweziの銅鉱山は想像を絶する大きさ広さで、まるで富士山の山頂の火口を想わせる露天の採掘穴が、らせん状に下へ下へと掘られている景色は、単に雄大という言葉がチャチに思えるほど壮大で幻想的なものでした。直径は数百メートル、いやもっとあるかな。穴の深さも同じくらいかな。遥か下に見える車高が5m以上ある200トンダンプが、米粒のように小さく見えます。来てよかったな。体がそして頭の中が芯まで洗われるような壮大な景色でした。「それじゃあ行こうか。もう一つ忘れないうちに見せておきたいものがある」と言って、車で巨大な廃タイヤ置き場のような人気のないところに連れていかれました。周りを見渡してもそれらしい家畜場らしいとこはありません。すると、「ほら、あそこを見てみろよ、ぴょんぴょん跳ねているだろう。あれが昨日食べたものの正体だ」そう言って指さした方に見えるのは、丸々と太った大きなカエルでした。ヒキガエルかな…「食べたのはCuisse(もも)のところだ。ちゃんと骨付きだっただろう? Grenouillehはそこの部分しか食べないらしい」「今晩もあそこで食べられるぞ」こういう事ってありません? 料理自体は美味しいけれど、料理前の姿、特に生きているのを見るともう食べたくない気持ち。特に蛙となると…だめです!もう絶対に食べませんでも、こんなのは序の口だったのです。 2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.05.07
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「いやあ、あの時は本当にビビりましたね。このまま彼が来なかったらどうしようって」ここは、某日本商社のゲストハウスで、つい先ほどまで日本人駐在員のKさんと食事をしながら話していたところです。Kさんはもう帰られました。食事は日本料理で、こちらが希望するものを料理してくれるというサービス振りで(日本料理ができるナイジェリア人コックがいます)、大満足です! しかも、お酒は飲み放題です。今は水割りを飲んでいます。少しほろ酔い気分になって来たので、饒舌になってきました。私は酔うと機嫌が良くなり口数が増えるんです。そこで先程から気になっていることについて尋ねてみます。「さっきKさんがこのゲストハウスにいれば安全ですよ、って言ってましたけど、本当に大丈夫ですかね?」「俺も何度か泊まったけど、別にどうという事なかったぞ」「でも、見張り番みたいな人はいるんですか?」Iさんはニヤリとと笑って、「人間はいないが番犬がいる。ドーベルマンが何匹かいるという話だ。いいか、この国では人間より犬の方が信用できるんだ。雇人はしょせん金で雇われているだけだから、金になる事だったら豹変して強盗になりかねないが、犬は飼い主を裏切ったりしないからな」更に気になることを聞きます。本当はこちらの方がずっと知りたいし重要なんです。「ところで先ほどKさんが帰る時、この家の入り口を閉めてから鍵を持って行ってしまいましたよね。という事は、もしこの家が火事にでもなったら、どうするんでしょうか」実はここが恐ろしいところなのですが、この家の窓という窓には鉄格子が入っているんです つまり出入りは玄関のみという事で、鍵を持っていない私たちは外に出られないのです!「うーん、難しいところだな。たとえ窓に鉄格子が無くて外に脱出できたとしても、庭には犬がいるし、外は外でまた物騒だからな-。どうしたらいいのかな」Iさんはかなり酔いが回っているらしく、目は既にとろんとしており、あまり真剣には考えていないようです。でも、もしかして、心配してもしょうがないから、敢えて考えないことにしてるのかもしれないな。この国には、いろんな興味深い話がごろごろしています。「ある日本人の話だが、外出したところを男に襲われた。持っていたカバンを取られそうになったので、彼は必死になって片腕を伸ばして奪い返そうとした。何が起こったと思う? その暴漢は、腰に差していた斧を振り上げて手首から先を〇〇落としちまった」「凄いですね」思わず生唾を飲む。「いい教訓だな。盗られそうになったら、ほっぽり出して逃げろ、という事さ」「まだあるぞ。ある男が道端でホールドアップにあった。彼は言われるままに腕時計とか金目の物をすべて渡した。しかし強盗は男の指に嵌まっている金だかの指輪を取ろうとしたが、どうにも抜き取れなかったんだ」そこで話を切り私をじっと見ます。だいたい読めてきました。「そう、強盗は斧で男の指をバーンと〇〇落とした。そうならないように、ここでは金目のものは一切身に着けないことだ」自分はそのようなものを身に着けていないことを頭の中で確認する。「もっと何か明るい話ってないんですかね?」「さあ、この国では明るい話なんかあるのかな。待てよ、ふ-ん、明るいかどうかは分からないが、こんな話もある。前にこの国に来た時にイギリス人に聞いた話だが」と前置きして、「男がある店先に4x4の車を止めて置いた。10分ほどして戻って来たのだが、どうも車の様子がおかしい。車の横に回ってみて、あっ、と気付いたんだ。車からタイヤとホイ-ル全てが無くなっていたんだ」なるほど、これなら笑えそうだ。この手のジョークは日本人にはちょっと思いつかないなあ。この国だから通用しそうだ、有り得ないことじゃあないと。「明日は車で北部の方へ行くけど、途中で何か目にするかもしれないぞ」「道端で何か面白いものでも売ってるんですか」ふん、と鼻を鳴らすと、「面白いと言えば面白いな、この国では。道端をよく見ておけ。人が横たわっているかもしれないぞ。勿論死人だ。この国では殺人や交通事故なんか日常茶飯事だからな」〈つづく〉2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.05.06
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他の地域と同様に、西アフリカでも小話の類は存在します。多くの国の場合、内容がたとえ現実離れしていても、小話にニヤリとしながら、うん、そうだな、とか、なるほど上手いな、とか言うのが普通の反応ですが、ナイジェリアの小話は少しホラ-風のところがあり、突拍子の内容であればあるほど、ナイジェリアでは有り得ないことじゃあない、と暗い顔で頷くのです。今回は、ナイジェリアの首都ラゴスの空港に降り立ったところから話は始まります。今、入国審査の手前に居ます。いわゆるパスポートコントロ-ルです。実はここである人を待っているのですが、なかなか現れないので困っているんです。ある人の名前は知りません。空港の管制官らしい服装をしているとのことなんですが。この国では、空港関係者の同行が無ければ、パスポートコントロールや税関検査を無事に通り抜けることは、まず不可能です。通常は、取引関係にある日本商社の息のかかった管制官で当日オフの者が、アルバイトとして到着した日本人に同行し、入国審査と税関検査を顔パスですり抜けるというものです。当社では以前こういうことがありました。日本から出張でナイジェリアに着いたものの、商社との連絡に何らかの手違いがあったらしく、迎えに来ているはずの管制官の姿が見当たらないのに業を煮やしたその出張者は、勇敢にも、ではなく無謀にも単独で突破しようとしたのです。彼はパスポートコントロ-ルは何とか通過したものの、税関検査で持ち物に因縁を付けられ、別室での検査と相成りました。これはかなりヤバいことで怖いことです。そこでは数人の係官から小突かれながら、違法なものを持ち込もうとしたので罰金を払うか、さもなければ没収だ、と無理難題を吹っ掛けられてかなりの金額を「罰金」という名目でかすめ取られた、という事でした。それは数時間に及んだと聞いています。アフリカ等の開発途上国に出張された方は経験があると思いますが、税関検査Customesが厳しい国が多々あり、結構緊張するものです。ナイジェリアの前の3か国はそんなに厳しくはないよ、と訊いていましたが、実際の入国時出国時の検査は厳しかったです。ですから、このような話を聞くと我々単独では、まず無事では通過できないでしょう。とすればここでいつ来るか分からない管制官を待つしかほかに手はありません。唯でさえこの国は治安が悪いのに人も性格が荒いので、西アフリカでは最も行きたくない国、という話をよく聞きました。私は今そういう怖い国の入り口で、進むことも戻ることも出来ない状況に置かれているのです!如何したらいいんだろう。また弱気の虫が騒ぎ出したようです。心なしか両手が震えています。進退これに極まり、でしょうか。無性に誰かの名前を叫びたい衝動にかられました。列は徐々に進み、我々の順番になります。「きっと彼は税関検査の前で待っているかもしれんな。このまま行こう。普通は大した質問はされないから大丈夫だよ」問題はその彼らの言葉がよく分からないんですよ。変なイントネ-ションなんだから。恐る恐る係官の前に進みます。向うは怠そうな動きで、しかし鋭い目つきでこちらを睨んでいます。やな奴だねえ。こっちは居直って、にこっと微笑みます。〈つづく〉2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.05.05
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結局、その日は夜になっても誰もゲストハウスには現れませんでした。こうなっては明朝誰も来なければ事務所に行って誰かを見つけるしか手はありません。翌朝も朝食なしで事務所に向かいます。道には相変わらず誰もいません。事務所の扉には鍵がかかっていませんでした。ホッとして中に入ると、目指す購買部長がデスクに座っていたので、思わずオーっと声を上げてしまいました。購買部長への挨拶もそこそこに、私たちは丸一日全く食事に有りついていないので空腹で倒れそうである、と切々と訴えました。小太りのIさんはともかく、私はお腹と背中の皮がくっつきそうでした。購買部長はレストランが閉まっていると聞いてびっくりして、レストランのオーナ-に連絡して直ぐに開けさせる、と言ってくれました。さて、と言って購買部長は、ざっと現在の状況を説明してくれました。反乱軍はほぼ鎮圧されたらしいが、まだ残党が残っている可能性があり、戒厳令は解除されたものの、夜間外出禁止は続いているらしい。まだ電話も通じない。「確か君たちは明日出発する予定だったかな?」「そうですが、代理店の者が迎えに来れるのか、連絡が取れないのでどうなるか分かりません」彼は頷くと、「今、車で移動するのはかなり危険だ。そこら中に検問があるらしいし、残党に襲われる危険が無いとは言えない」じゃあ、どうすればいいんだ、という言葉が出かかったのを何とか抑えて、次の言葉を待ちます。「君たちも知っての通り、ここで採れた鉄鉱石は列車で港町のブキャナンに運ばれる。その列車でここに住んでいる女子供を乗せて、隣国に避難させようという話が出ている。その列車はもう少し状況がはっきりしてくる明後日以降に出る予定なのだが、君たちが希望すれば乗ることは出来るがどうするかね」思わずお互いの顔を見る。代理店にも本社にも連絡出来ないのであるから、ここに留まるよりは首都に近づいた方が得策かもしれない。何しろここは奥地も奥地なのだ。ブキャナンまで行けば首都まではどうとでもなる、かもしれない。「では、我々二人もその列車でブキャナンまでお願いします」「そこにはうちのゲストハウスがあるから、そこに泊まるといいだろう。着いた頃にはモンロビアとの電話も通じるだろうから、君たちの代理店とも連絡がつくはずだ」先方の厚意に謝意を述べて、我々はゲストハウスに戻る。何はさて置いても食べ物に有りつかなくては、何か事が起きた時に咄嗟の行動が出来ない。元々は危機意識の薄くのほほんとしている私ではありますが、この時は流石に頭のアンテナをくるくる回転させて、神経を張り詰めていたように思います。何とかここから脱出できそうだな。濃い霧が晴れてきたようです。その時は突然やってきました。7時頃歯を磨いているとIさんから、きょう午前中に列車が出るからしっかり準備しておけ、とのお達しを受け取りました。やっとです。購買部長と話してから3日が過ぎていました。乗り込んだ列車には数えるほどの人数しかいませんでした。状況が好転してきたので、慌てて無理をする必要が無くなったからでしょう。4時間ほどの列車旅でしたが、途中何事もなく無事にブキャナンに到着すると、手配されたバンでゲストハウスに運ばれました。Iさんは着くなり代理店に電話して、次の訪問国であるナイジェリアへのフライト予約を依頼するとともに、切った後すぐに日本本社の上司に連絡を入れます。上司に今回の経緯を説明するとともに、今後のスケジュールを変更したい旨伝え、了解と現地商社に必要な手配を依頼しています。話を横で聞いていて、新たなスケジュールはかなり混み入っており、隣国同士の関係が希薄な西アフリカでは横フライトの数は多くないのが普通で、綱渡りではないのか、というのが素人でも分かるものでした。Iさん、ちょっと焦っているのかも。次の訪問国のナイジェリアは、知る人ぞ知る恐怖の国なのです。もし手配が上手くいかなければ、大変なことになるかもしれないな。一難去ってまた一難です。まだ何も起こっていませんけど。〈つづく〉2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.05.04
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High house, GO-! バーン、パシ―ンうぉー!Low house, GO-! バ―ン ここはライベリア奥地にある鉄鉱山の欧米人居住地区にあるシュ-ティングクラブの射撃場。誰かが打った銃弾がhigh houseから発射された皿に命中したみたいです。ここに着いて約1週間目の今日は休日で、朝から様々なクラブに顔を出して親交を深めているところです。この鉱山には、200人ほどの欧米人が居住しており、夫人または家族同伴の人も多いようです。別荘のような住居やゲストハウス、レストラン、バー、各種クラブが丘の上に点在するこの地は、言うなれば楽園のようなところでしょうか。今日はこれから宿舎のゲストハウスに戻り、レストランのテラスでオリ―ブとピーナッツをツマミにビールを飲み、その後はこのレストラン名物であるクラブサンドウィッチを食べるのが、来てからの習慣になってしまいました。しかし、ここの人たちに愛想を振りまいているのとは対照的に、Iさんと私の気持ちはそれ程弾んではいません。ライバル社がかなりの人物金をかけて、ここに食い込もうとしていることが分かったからです。うかうかしてはいられません。明日朝一に購買担当部長に面談し、ライバル社の動きを見極めなくてはなりません。それに実は、もう一つ気になることがあります。むしろこちらの動きがより心配なんですが。数日前に反大統領派がクーデタ-を起こし、首都は戦乱の中にあり、両派の争いが我々のいる北部地方に近づいているというのです。とはいうものの、先ずは腹ごしらえです。起こる前からあれこれと心配してもしょうがないですから。私は腹が満たされれば結構楽観的なんです。パ-ン、パーン急に花火のような乾いた破裂音が聞こえました。時計を見ると午前1時前です。夕食時にドイツ人のレストランオーナ-から、今晩は部屋から出ないほうが良い、と忠告を受けていました。物騒なことになるかもしれないから、と。パンパンパン、と今度は4,5発の銃声が聞こえます。チョッとやばいかも万が一に備えて、もう一度逃げ出すときの手荷物を確認します。とにかくパスポ-トと現金です。これさえあれば何とかなります。銃を突き付けられたらどうしたらいいんだろう。とにかく手を上げて動かないことだな。今夜は寝ることは諦めてじっと情勢を見守るしかないな、と思い先程迄読んでいた文庫本を読み始めます。好きなミステリー作家の小説なのですが、何人も殺されるので今晩は余り気が進みません。読むのを諦めて、横になっていたベッドの上で体を横にひねった時、「それ」が視界に入りました。「それ」は私のすぐ横のベッドの上をこちらに向けてゆっくりと歩いてくるところでした。今までに見たこともない大蜘蛛でした。大きさは私の大きな掌サイズだから、20cmくらいでしょうか。どうしようか。その時の私は結構落ち着いていたと思います。勿論、蜘蛛、それもこんな大蜘蛛は大嫌いですが、ゴキブ〇みたいに飛ばないし襲い掛かってくることもないので、そ-っとベッドから降りて洗面所にあるコップに水を注ぎます。雑誌か何かで叩くことも考えましたが、後始末が嫌なのでとにかく追い払う事に決めました。蜘蛛はベッドの上でじっとしているので、開いている手で風を送り蜘蛛に動け、とせかします。すると蜘蛛は動き出しベッドの端から下に回り込もうとするではないですか。正直ちょっとパ二クリました。ベッドの下にへばりついたままだとこちらは今晩ベッドで眠れません。慌てて持っているコップの水を手で撒き、蜘蛛がベッドの下に降りるよう誘導します。ベッドが濡れようが構うこっちゃありません。今はこちらも必至です。やっと床に降りてくれました。こうなればしめたもので、ここからはコップの水を手で派手にまき散らし、ドアに誘導します。ドアを開けて蜘蛛に水をかけ続けると、蜘蛛は慌てふためいてドアの外に出ていきました。私は静かにドアを閉めるとホッと息を吐きました。そしてゆっくり振り返ると、ベッド周りは勿論のこと、部屋中をチェックして何も生き物がいないことを確認してからベッドに入り、兎に角眠ろう、と考えました。あれから銃声らしきものは聞こえません。Iさんはどうしているのかな、とは考えましたが、部屋をノックするのはやめました。もう寝ている可能性もありますから。明日は朝からやることがあるので。起きていてもやることが無いのなら眠るしかない。何か起こったらその時はその時だ、と腹をくくることにしました。長い夜が明けました。何度か目が覚めましたが、銃声は聞こえませんでした。今は朝7時ですが何の音も聞こえません。やっとIさんの様子を見てみようという気になりました。3つ離れた彼の部屋をノックすると、入っていいぞ、という声が聞こえます。入ると既に着替え終わっており、さあ朝飯食べに行こう、と言います。食堂は別棟にありテラスからは眼下の村が見渡せますが、食堂内はもとよりそこから見える通りや村には人影や走っている車の姿は見つかりません。「まさか、皆何処かに逃げたってことないですよね?」「それは無いだろう。あと30分待って誰も来なければ事務所に行ってみよう」結局誰も来なかったので、車で事務所に向かいますが、道には人っ子一人いません。事務所にはかぎが掛かっており中には入れません。どう仕様もないので、またゲストハウスに戻りますが、そこにも誰もいません。Iさんの考えはこうです。ク-デターの勃発で非常事態宣言か戒厳令が敷かれて外出禁止になっている可能性があるから、このゲストハウスでじっとしていたほうが良いのではないか。下手に動いて拘束されでもしたら身の危険が危ない。確かにその通りかもしれません。そうだとすると朝食だけでなくランチも怪しくなります。もしかしたら夕食まで…。そこまで考えたら一気に体の力が抜けてしまいました。ここにきて初めて、事態が容易ならないところまで来ていることを悟りました。これは動かないでじっとしているしかないな。動けば腹が減るばかりだし。手持ちの食料で今日一杯何とか生き延びられそうだという事を、頭の中でざっと計算してまずホッとします。私はとにかく兵糧攻めに弱いんです!いくら何でも明日には何かまともなものが食べられるだろう、そう信じるほかありません。〈つづく〉2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.05.03
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ライベリア(リベリア)編 その1 首都のモンロビアの空港は妙に騒がしかったのです。Iさんは今回の引継ぎ出張にライベリアは入れたくなかった、と言っていました。その訳は、つい2週間ほど前に行われた大統領選挙の結果で、大統領派と反大統領派が揉めており治安が不安定であるとの情報を、現地の代理店から入手していたためです。普通の時でさえも余り良くない治安が、今はかなり危ないレベルだ、というのです。空港についてからというもの、Iさんは、気を付けろ、を連発しています。恐る恐る周りを見てみると、この国の人の眼つきが鋭いというか、怖いんです。気を付けろ、と言われてもどうすりゃいいんだよ。それでも入れざるを得なかったのは、次の入札が来年春までにあるためです。明日朝一番で代理店のオフィスに行き、簡単な事務を済ませた後に、奥地にある鉄鉱石の鉱山に向かいます。ランクルで5-6時間、ジャングルの中も走るんだとか。一番の懸念は、雨季は過ぎたものの過ぎて間もないので、道路がぬかるんで通れないこともあるとか。凄いところに行くみたいだな。帰ってこれるのかな。また弱気の虫が騒ぎ出します。翌朝、Iさんとホテルのレストランで朝食を食べていると、「日本人の方ですか?」と、日本語で声をかけられたのでびっくりして振り向くと、高齢の日本人カップルがこちらに近づいてきます。こんな場所で日本人の方と出会うのは非常に珍しいことなので、ちょっと立ち話をしたところ、この男性は大学教授で、ライベリアは105か国目の訪問国だ、と豪快に笑いながら教えてくれました。折角なので、と記念撮影です。それが下の写真です。 実は、今までの私の人生で出会った人で、100か国以上の国を旅した人はこの方以外知りません。だからこの人は正真正銘凄い人なんです! 後日、帰国して会社の大先輩に訊いて回りましたが、一番多い人でも70か国以下でした。いやあ凄い人にあったなあ、そうですね-、何か良い事あるかもしれないな、などと少しウキウキしながら代理店に向かいました。でも、結果から言えば、良いことなんてなかったんです。正直言って、ジョンの運転は怖い。オフィスから10分も走るともう未舗装の道が一本あるだけです。ドライバ-のジョンは、凹凸の多いその道をランクルでぶっ飛ばすんです。ジェットコースターに乗ってるみたいな気分で、結構スリルありますね。心の中で悲鳴を上げること3時間、車は小さな村の売店らしき横に止まりました。どうやらトイレ休憩のようです。素早く用を済ませて車に戻ると、売店の男が、コ-ラ、コーラと言って近づいてきます。Iさんが素早く瓶の栓辺りを確かめてから、3本分の代金を支払います。さっきから気になっていたんですが、彼は栓抜きを持っていないんです。実はライベリアに来る前にIさんから聞いた話では、栓抜きが無い時に瓶に入ったジュースを飲む方法を聞いたのですが、それは硬貨でこじ開けられるというものでした。そうか、彼はそうやって開けるのかなと、興味深く彼を見つめていたのですが、予期せぬ行動に出ました。何と、栓を歯でガッチリ咥えるや否や、顔を歪めること一瞬、シュポッと小気味よい音を立てて栓を抜いたのです残りの2本もあっという間に抜いてしまいました。思わず手を叩いてしまうほど見事な抜きっぷりです。彼はこうやって毎日毎日歯と顎を酷使して家族を養っていると思うと、何となく彼に親しみのような気持が出てきました。心なしか彼ははにかんだ様です。実は、アフリカに来て分かったことの一つに、西アフリカの人は一般に黒人ですから、日頃黒人を見慣れない私にとっては、顔の表情を見分けるのが結構難しいんです。顔の陰影が分かりずらいからでしょうか。「飲む前に、瓶の口の部分はしっかり拭いておけよ」Iさんからしっかり念を押されます。ハッとして言われた通りにします。この出張中にIさんから口を酸っぱくして言わたことがあります。「どんな高級ホテルでも、ここ西アフリカでは絶対に生野菜は食べないこと」「食べる前にできれば食器類はナプキンで拭いた方がいい」その心は、コレラや食中毒に罹ることが最も危ないというのです。ここライベリアや次の訪問国であるナイジェリアは、西アフリカの中で最も治安の悪い国と言われていますが、同時に衛生状態が極めて悪い地域でもあります。もしここでコレラなどの病気にかかっって病院に担ぎ込まれたらどうなるか、正直全く想像できません。Iさんの語録は既にいくつか紹介しましたが、この旅の中で最も私の心に強烈に響いたのは、次の言葉です。「安全と命は、ここ西アフリカでは金で買えるから、絶対に金を惜しむな。命より大切なものは無いぞ」今回の出張中は勿論のこと、この後の西アフリカでの5年間、この言葉を忘れたことは一時もありません。何度もその意味するところを反芻したものでした。〈つづく〉2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.05.02
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セネガル編 アフリカ最西端のレストランで超豪華なロブスタ―料理を食すモ-リタニアの首都ヌア―クショットからのフライトは遅れに遅れ、セネガルのダカ-ル空港に着いたのは午前2時。早くホテルの部屋で寝たい、とクタクタの体で荷物を待つこと1時間半。やっとベルトコンベア-が動き出しました!!!迎えに来ていただいた某商社の現地従業員が運転する車の車窓から、深夜の街中を見ていて不意に、「Iさん、さっきからメチャクチャ喉が渇いてるんですけど、何処かに自動販売機ってないですか? モーリタニアの首都よりはかなり都会風だし、もしかして有ったりして」「アホ、そんなのアフリカに有る訳ないだろ。ヨ―ロッパでさえ無いんだから」大きなため息をつくと、Iさんは、「安心しろ。ホテルでルームサービスを取ろう」ホテルの部屋に入ったのが4時半。もう喉がカラッカラです。部屋に入る前にIさんから、「部屋の水は絶対に飲まないこと!」と言われていたので、ルームサービスで頼んだミネラルウォーターが来るのをひたすら待ちます。は-やく来い!待ちに待ったミネラルウォーターが来たのは、午前5時を回っていました。明日の朝、いや今日の朝は9時にホテルの近くにある某商社のオフィスに挨拶に行き、その後車で3時間ほどの鉱山に向かうそうです。何か、寝る時間はもとより、頭を切り替える時間も、心を休める時間さえも無いのね。ア-やだやだやだやだ。また心配性で臆病な自分がムクムクと頭をもたげてきたので、気合を入れます。頑張らなくっちゃ!さて、ここはダカ-ルより車で30分ほどのアフリカ最西端の岬にポツンとたたずむレストラン。広いテラスのテーブルに我々5人が腰掛けています。目の前は広大な太西洋が広がっているだけです。遥か彼方の水平線に米粒のような汽船の姿が見えます。青い空と青い海。何と言う雄大な景色でしょう。出来ることなら、切り取って大きな額縁に入れたいくらい。突然、あのメロディが頭に浮かびます。そうです、大瀧詠一のあの曲です。薄-く切った~、オレンジをアイスティーに浮かべて~♪あの曲が聴きたい!!! 聴きながらここで昼寝がしたい!!!不意に、会社の隣の席のあの子の顔が浮かびます。僕の良き話し相手です。俺がいなくて寂しがってたりして、なんて独り言ちます。少し心に余裕が出てきたみたいだ。もうすぐメインディッシュの巨大なロブスタ―がやってくるはずです。是非あれをお願いします、とお世話になっている某商社の方にお願いして、連れてこられたのがこのレストランです。昨晩は9時過ぎにダカ-ルに戻ってきました。疲労困憊でした。だから一生懸命働いたご褒美だと思っています。「今までに食べたことがないほど巨大なロブスタ―ですよ」と現地社長のWさんが自慢げに言います。言い終わらないうちに来たようです。期せずしてテーブルのあちこちから歓声が上がりました。ヨ-シ、今日はメチャクチャ食って飲むぞ―っ!!〈(3)に続く〉2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.05.01
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今回から3-4回程度、私の人生の中でもあらゆる意味において、特に忘れることが出来ない旅についてお話ししたいと思います。1986年10月中旬から翌年1月末までの3か月半、私と前任者Iさんが西アフリカ諸国を業務引継ぎのため回った旅についてです。まあ、かなり昔の話なのでピンとこないかもしれませんが、沢木耕太郎さんの「深夜特急」のつもりで読んで頂ければ。第一回目は、私がアフリカ大陸に第一歩を印した砂漠の国モ-リタニアです。そのアフリカ出張は、予想外の出来事が起こり年末年始をパリで過ごさざるを得なかったこと(幸運でした)から3か月以上の長期に渡ったこと、、他の地では得難い数多くの体験をしたこと、見るもの聞くこと全てが未知のものでカルチャ-ショックの連続であったことなど、あらゆる意味で記憶に残り忘れられない旅であったと言えます。後からその旅を振り返った時、よく無事に戻ってこられたものだと感心し安堵したものでした。モ-リタニア 恐ろしく殺風景な世界に啞然フランスのパリで落ち合った我々は、一路モーリタニアのヌアディブ経由で砂漠の真ん中に位置する鉄鉱山に向かいます。このヌアディブ空港に降り立た時のことは、今でも鮮明に思い出せます。我々は砂漠のど真ん中に降り立ったのです。そこには一本の短い滑走路とコンクリ-トでできた廃墟と間違うばかりの建物(体育館の半分くらいの広さ)があるだけの、恐ろしく殺風景で荒涼な場所でした。因みにこの建物の中にはトイレしかないと言われました。勿論水洗ではありません。ましてや売店なんかはあるわけありません。周りを見るとアラブ人らしき人ばかり。いや、砂漠の民、と言った方がぴったりするでしょう。砂漠しかないこの地で、この人たちは一体何をしているんだろう。勿論、写真撮影は厳禁です。この時の心情は、一言でいうと、えらいとこに来てしまった!不安、というより怖かったと思います。突然自分の人生で初めて今迄の常識が通用しない未知の世界、と言うよりも未知の惑星に降り立った気持ちと言ったら言い過ぎでしょうか。もしかしたら、元来た世界に戻れないのでは、という思いが頭をかすめたと思います。これってカルチャ-ショックっていうやつか。ここで簡単な入国手続きと税関検査が行われます。提出する書類を見て、ウっと唸りました。う-ん、フランス語でしか書かれていない。思わず隣のIさんを見ると、もう半分以上記入していた。どうやら所持する全通貨の金額も申告しなければいけないらしい。「そこの金額は正直に書けよ。出国時にも検査があるから、違いがあると一晩ここで寝ることになるかもしれないぞ」「そんな恐ろしいこと, 冗談でも言わないでくださいよ」必死で書類を書き終わると直ぐに検査が行われます。次のフライトで行くところは、赤茶けた土と岩しかない鉱山なのです。木は勿論のこと、草さえも生えていない砂と岩で覆われた土地だそうです。そしてこの地に戻ってくるのは1週間後。まあ、ここの空港だって何もないけど。もう何も考えないことにしました。精神が崩落するのを防ぐには、それしかないみたい。「大丈夫だよ。そこにはレストランもあるしね。ただし、メニュ-は一品のみだけど」」と言ってニヤニヤします。少なくともヒモジイ思いはしなくて済みそう。モーリタニアは元フランス領だから、食べ物に関してはある程度安心できるという嬉しいことも聞きました。少々肉は硬いかも知れないが、味はまあまあだそうな。私はいわゆる瘦せの大食いなので、食べられるものが無くなれば真っ先に力尽きる可能性が高く、そのことを聞いて少し安堵しました。何とか生きて帰ってこられそうだ。現地でどのようなことが起こったのかについては、ここでは割愛させていただきます。ただ、不安におびえながら一生懸命業務に勤しんだお陰で、全て順調にいったことだけお伝えいたします。下の写真は、その鉄鉱山で撮った写真です。若かったですね。 〈(2)につづく〉2つのブログランキングに参加しています。↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございますにほんブログ村にほんブログ村
2023.04.30
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