CATのアメリカ東海岸留学

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インターンシップの落とし穴



そもそも日本は腐っても先進国。あえて海外にインターン(研修)に出ないと学べないものって何?という素朴な疑問もあるが、「生きた英語」が身につくと言われれば、なるほどと思ってしまう人もいるかもしれない。

ただ、個人的には「海外に出れば英語が身につく」というのは迷信だと思う。

日本から一歩も出たことがないのにアメリカ映画にのめりこみ、映画の中のセリフをまねしているうちにあれよあれよという間にネイティブ並にしゃべれるようになってしまった人と会ったことがある。かたやLAやNYでは語学学校にもう何年も・・・なんていう人とも会ったことがある。

でも、英語以外にも「いろいろな技術」が身につくかもしれないじゃん、と言う人がいたとすれば、それは日本とアメリカの根本的な違いに気づいていない人だと思う。

なぜ日本の会社などが大学院卒の人材を積極的に採用しないかといえば(だから時々「博士余り」が新聞ダネになったりする)そもそも日本には「企業が人材を育てる」という土壌があるからだ。かたやアメリカは学校が人材を育てるという考え方である。だからこそキャリア半ばで大学院などに戻る人も多いわけだが、ということはアメリカの会社に研修にいったとしても、 そこには「人材を育てる」という環境がない わけだ。

(というわけで実はアメリカは日本以上の学歴社会なわけだが・・・。)

「技術を身につけたいなら、何らかの学校へ行かれるか、むしろそれより日本で会社に就職した方がよほど親切に教えてもらえると思います」といったアドバイスを見たことがあるが、まさにその通りだ。

そもそもあたり前の話だけど英語もろくにしゃべれない、書けない人間にまともな仕事がまわってくるはずがない。大したスキルもなく英語も出来ない人間にインターンをさせてくれるところは、とにかく安い人手が欲しいサービス業か、こきつかえる雑用係が欲しい中小企業(例えば貿易会社の倉庫で梱包と日本語のラベル貼りをする単純作業)が多い。下手をすると、従業員は日本人の社長とアルバイト数人のみで英語を全く話さないとか、ド田舎のホテルで受付と掃除なんて可能性もある。(以前は最低時給以下で違法滞在者をアルバイトに雇っていた会社が労働局に密告されて罰金をくらったため、 最低時給以下でも堂々と雇えるJビザ (インターンシップに使われるビザ)に切り替えたとというケースも・・・。)



最近、最低賃金以下の賃金で参加者をこきつかう中国などからの日本への研修生制度が問題になっていて、悪質斡旋業者がやり玉に挙がることもあるけれど、実は日本のインターンシップ斡旋業者も似たようなことをしている。

2005年4月12日付の朝日新聞には「入国時の虚偽申告を指導していたインターン業者敗訴」という記事が載った。これはアイルランドのケースだが、業界大手の「○○○○○○○○○インターンシップ○○○○○○」が、 入国目的を聞かれた際の答え方について、「インターンシップ」や「働く」といった言葉を使わないように指導 。この指導に従った参加者が虚偽申告で入国拒否にあってしまったというもの。(この事に対してその参加者が損害賠償を訴えて、勝訴した。)まるでどこかで聞いたような話。そもそもインターンシッププログラムに参加してるはずなのに、入国の際に「インターンシップ」といった言葉を使えないというのはどういうこと?



実態はそういった状況にもかかわらず、インターンシップ斡旋業者が垂れ流す美辞麗句におどらされる人は多い。アメリカでインターンをする場合のビザはJビザというカテゴリーになり、最近申請者が増加しているらしいが、果たしてビザは発給問題なく発給されているのだろうか。

ちょっとJビザがらみの掲示板をまわってみれば最近のJビザの発給率が1割くらいであるというのは容易に想像がつく。もちろんその1割の中にはJビザを「当然」発給してもらえる立場の研究職の方々も含まれているわけだから「そうでない」人への発給率はへたをすれば5%を割るのではないだろうか。念のため書き添えておくと、一度ビザ発給を却下されるとその記録は永遠にアメリカ側に残ることになる。

Jビザは本来は交換留学生や研究者、もしくは(発展途上国からの)研修者用のビザで、日本のような先進国から研修目的でという目的にはそぐわない。

アメリカ大使館側もJビザ申請の説明会などで「Jビザ申請で重要なのはトレーニング(研修)プランの内容であり、研修の中身が渡米しなければマスターできないものであること、つまり、日本では習得できないものであることが必要である」と言っているが、この要件に合致する研修内容というのはなかなか想像がつかない。

「英語の習得」を研修目的に挙げようとしている人もいるかもしれないが、 アメリカは「英語の習得」を渡米しなければマスターできないものとは解釈していない。 (はっきりとそう言われてビザを却下されたケースはいくらでもある。)

中には日本からも(研究名目でない)研修者を受け入れているところもあるが、そういうところは研修者の帰国の飛行機代まで負担して、にわか作りの斡旋業者の甘言によく出てくるような将来的なHビザや永住権のスポンサーシップはしないと元から明らかにした上で「居座り組」を絶対に出さないように気を使っている。そういった長年の実績を積み上げた上で(いまはなき)移民局からの信頼を得てJビザ研修者受け入れ先として認められているわけだ。

そもそもアメリカの「移民法(今は名称がかわったかもしれないが)」の趣旨が「外国人にビザ発給の便宜を図る」ことではなく「アメリカ国民の利益を守る」ことだということをちゃんと理解している人は少ない。つまりアメリカが欲しい人材、例えばアートやスポーツに優れた有名人、高学歴で米国に貢献できる研究者、将来的に国を背負う途上国のエリート、アメリカには少ない特殊技術者などには問題なくビザが下りている。

もちろん日本から研修目的で来る人というのはこれにはあてはまらない。

そんな自分勝手なと思うかもしれないが、国というのはそうやって自国民を守る組織でもある。日本にいれば気付きにくいことかもしれないが、日本だって外国人に対して同じことをしているのだ。

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(2007年9月9日更新)

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