あんしーず的房間

あんしーず的房間

中国における食



 中国では実に様々なものを食べた。浙江省龍遊県の名物料理「三頭料理」はその名のとおり「兎、アヒル、魚」の頭だけを辛く煮込んだ料理で、ビールがすすむ。頭はアヒルが一番うまい。

 蛇は高級だ。一皿いくらではなく、蛇の重さ(大きさ)で値段が決まる。
身の部分をカラッと揚げたのは美味しいが、白酒で割った生血はやっぱりいまだに飲みたくないし、白酒に浮かぶ物体を見て、蛇の肝は深緑色なのだと初めて知った。
皮を湯引きして酢であえ、香菜を散らしたのもやっぱりどこから見ても蛇皮である。
コラーゲンたっぷりでお肌に良いと言われても舌触りがツライ。蛇皮の財布や靴を見る度に、涙を呑んで食べたあの日々が新鮮によみがえる。
北陸で冬に越前蟹づくしでもてなされるのとはちょっと趣が違う。

しかし、中国人は外国人の客に蛇を出すのが好きである。
もちろん一般家庭ではなくレストランでの宴席に限るが、「蛇だぞ~、日本では食べないだろう。中国人は何でも食べる。さぁ食べてみて。」とやたら勧める。
これは日本人が外国人に刺身や納豆をやたら勧めるのと同じ感覚であろう。
となればこちらが期待されている反応は2種類。「怖~い。食べられませんよ~。」か「あら、美味しいわ」のどちらかである。
前者であれば「そうだろう、そうだろう」と皆ちょっぴり満足して笑ってそれなりに盛り上がる。
後者であれば「おお~、このお嬢さんは勇敢だ」と大喜びである。
この辺はだいたい日本人と同じだが、その後がはまる
「おいしいならどんどん食べなさい」とまるで「わんこそば」状態に料理をつがれる。

  結局「食」では中国人には勝てない。気力と体力との両方が要求される。食べるのって疲れる。

 駱駝のこぶも食べたし、犬も食べた。
 アヒルの頭の煮込みは今では大好物だし、兎はビールで煮込むと美味しい。
 カエルはスープよりはから揚げの方が好みである。
 鳩は平和の象徴の白くて美しい鳥だったという記憶も遠く彼方に消え去り、今はローストされて茶色い物体となったものを骨ごとボリボリかじる。
 虫はだめだが猫以外の動物ならなんでもいける。

 日本人を圧倒する臭いを放つ「臭豆腐(チョウドーフ)」も道端でおばちゃんが油でこんがり揚げているのを見ると素通りできなくなった。
 あの臭いがなんとも香ばしい。
 たっぷりと辛子味噌をつけていただく。

 とにかく出されたものは何でも食べるようにしている。
 食は文化である。
 国をまるごと受け入れるにはひたすら食べるしかない。



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