クラブGAIA~楽天出張所~

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Jul 31, 2004
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先週日曜日、富士山に登ってきた。
30~40代女子5人、しかも全員初心者という無謀な登山。
午前中に新宿を出て、直行バスで五合目に着いたのが午後1時過ぎ。
バスから降りると、そこにはなにやら人があふれていた。

駐車場や土産物屋を囲む広場には、
焼きそば、もろこし、イカ焼き、フランクフルトなどの出店が並ぶ。
周囲は、これから富士山登る人、下山してきて休む人。
はたまた五合目までバスで観光に来た人…
さまざまな年代、国籍の人間でごったがえしていた。

その光景は、さながらお祭り会場のよう。
そう、富士山登山は一種のお祭りなのかもしれない。

休憩所で持ってきたおにぎりをほおばりながら一休みし、
2時頃、いよいよ富士山に登り始める。
まず目指すのは8合目付近のとある山小屋。

登山道までにたどりつくまでに少し距離があるのか、
はたまた気圧の違う環境にカラダを慣らすためなのか、
最初はしばらくゆるやかな下り道が続く。
「おいおい。なんで登山で下ってるの?」
そんな疑問が巡るのもつかの間、
100mも歩かないうちに息切れがしてきた。

呼吸が苦しい。空気が薄いのだ。
カラダが酸素を欲して肺が必要以上に膨らもうとする。
胸を圧迫し、呼吸困難になる。
『五合目以降はどんどん空気が薄くなるから、十分に体を慣らしてから登るように』
ガイドブックに書いてあったそんな言葉を、今さらながら思い出す。

この気圧の違いに慣れるのに時間がかかった。
本当にちょっと歩くだけで呼吸がつらい。
7合目付近まではそれこそ何十メートルか毎に立ち止まり
水をなめたり深呼吸をしたりと、息を整えてまた歩き出す。
何度も何度もあくびが出る。
あくびが出るということは、カラダが酸素を求めていること。
私はカラダが要求するたびに、立ち止まることを余儀なくされた。

敵は日頃の運動不足でだらけた筋肉でも、
お腹にたまった厚い脂肪でもなかった。
ただ、酸素が薄い。
「人間は酸素を燃やしながら動いているんだ」
そんな当たり前のことを、この年でカラダで実感した。

7合目付近になるとようやくカラダも慣れてきて、
山小屋に向かう岩場はさほど苦もなくこなせた。
先に着いた友達から約1時間遅れの到着。

気圧の慣れには個人差があるらしい。
その友達は最初からシャカシャカ登っていたが、
全然息苦しくはなかったよう。
同じく普段から運動しているわけではないのに。
「まったく、あんたは宇宙人か」
憎まれ口をたたきながら、
そんな友達のカラダがなんだか羨ましかった。

何はともあれ、とりあえず目的地には到着。
曇っていたので残念ながら下界の景色は見られなかったが、
目線の下に雲が広がるのを見て
自分が今、雲の上にいることを実感。
疲労したカラダにじわじわと感動が湧きあがってきた。

さあ、明日の朝はいよいよご来光参拝だ。

夕食のカレーライスをお代わりしたあと、
無理矢理仮眠室に連れて行かれ、
一人あたり50cmにも満たないスペースに棒状に寝かされた。
まだ8時にもならない。眠れない。
でも山小屋には居間も個室もないので、
まして山小屋の前には次から次へと登山者が立ち寄り
休憩していくので、居場所がどこにもない。
ただ、だまって横になるだけ。

時間が経つに連れて
後から登ってきた団体やらがどんどん仮眠室に詰め込まれ、
畳10枚位横に並べたスペースの仮眠室に、
15人位押し込まれているので、違った意味で息苦しい。
ここでは登山者は人扱いされないよう。
ちゃんとお金も払ってるのに、まるでモノのように扱われる。
しかし後続の人々は慣れているのか、横になるとすぐに寝息をたてた。

途中息苦しく、何度かトイレに行くふりをして
外の空気にあたり、空を眺めた。
頭上は曇りなく、星がキレイにまたたいていた。
いつもより約3000m近くから星を眺める。
それだけで、なんとなく感動。
後ろの方からおぼろ月がやさしく見守ってる。

あと数時間したらご来光だ。
もししばらくの我慢、我慢と寝床に戻る。

夜11時を過ぎると奥の部屋から続々と人が起き出し、
ご来光を求めて次々と山頂に向かう。
私たちの仮眠室でも半数以上が山頂に出かけたので
さっきまでの息苦しさが消え、やっと眠りにつけそうな気配。
ご来光を楽しみにうとうとする。

夜中、3時を過ぎた頃だろうか。
ものすごい雨音に、目覚めた。
まさかの雨だ。しかもかなりの大雨。
やきもきしながら何度も起きて外の様子をうかがう。
30分経っても1時間経っても、一向にやむ気配はない。

そして4時半を回った頃宿の人が各仮眠室をまわった。
「そろそろご来光の時間ですが、大雨です。ですのでご来光は見られません」
えっ、えっ?なんだって?ご来光が見られない?
雨は時折弱まったが、一向にやまなかった。
ご来光どころか下の景色も全く見えない。
「山頂に行ってもまわりが見えないので、達成感はないですよ。
 大雨だし、あまり行く意味はありません」

ご来光どころか、朝から山頂に登ろうとする人の気持ちにも水をさす。
せめてほんの一瞬でも太陽の姿を、との願いもむなしく雨は降り続けた。
8時位まで待って、居場所もないので我々は宿の人と一緒に下山をすることに。
下(五合目)は少しは晴れているらしいという情報を元に出発したけど、
下りても下りても雨のやむ気配はなし。
それどころか、雨風がどんどん強まり視界もほとんどふさがれた。
本当に山の天気って、わからない。

雨具はつけたもののびしょ濡れになりながら、ようよう下山。
五合目に着いた頃はほとんどボロボロだ。
ただ、雨の中を黙々と坂を下りた。
なので景色も何も楽しめちゃいない。

ああっ、下りちゃった。
ご来光も景色もなにも楽しめなかった。
行きも帰りも、最後まで山頂は見えず。
これが富士登山なんだろうか?

宿の人から聞いた話によると、
シーズン中大雨が振ってご来光が見られないのはたった7日くらいとか。
でもって翌日は、ものすごく幻想的なご来光が訪れたそうな。
なんじゃそりゃ。
つまりある意味我々は大当たり。
数少ない貴重な雨で浄化されたのだから。

景色も見えない富士登山が教えてくれたのは、
『周囲にとらわれないで1歩1歩進むこと。
 1歩1歩進めばかならず目的地にたどり着く 』
そんなことだろうか。

しかし、なにも見えない富士山ってものなんだから、
も少しカラダを作って来年あたりまたリベンジしようかなと。
ご来光が見られなかったということは
富士山が「またおいで」と言っているということ。
そんな無理矢理な解釈をしながら、次の機会に希望を託して。

感謝。





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Last updated  Jul 31, 2004 02:13:44 PM
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